テレアポは、営業活動に欠かせない仕事です。しかし、新規取引の法人や個人宅へのテレアポは、最初から断られる場合が多く、精神的なストレスが溜まりやすい仕事といえます。
トークスクリプトを見直したり、営業手法をあれこれ考えたりしても、業績を上げられず、上司から叱咤される場合もあります。どんどん窮地に追い込まれて、なかには心を病む人もいるでしょう。
たとえば、次のような悩みが挙げられます。
「メンタルが強くない人は、テレアポに向いていない?」
「テレアポを楽しめる人なんているのだろうか?」
「もしも楽しめるとしたら、何かコツはあるのか?」
そこで今回は、テレアポに対するマイナス感情をできるだけ減らし、前に進むためのポイントを解説します。今一度テレアポで得られるメリットを確認し、自分に合う対処法を見つけましょう。
テレアポで病む理由
テレアポで病む人は、テレアポを楽しめなくなっています。「テレアポを楽しむって?仕事なのに…」と違和感を抱く人はいるでしょう。
しかし、メンタルを病みやすい、マイナス思考の人ほど「楽しもう」とする姿勢が必要です。ここではまず、なぜテレアポで病んでしまうのかを探ってみます。
断られ続けるのが辛くなる
程度の差はあれ、誰でも断られ続ければ辛くなります。なかなか目的を達成できなければ「自分のやり方が悪いのか」「やっぱりダメだ…」など、気持ちが落ち込んでしまうでしょう。
「テレアポで断られるのは当たり前」と思うようにしても、周囲がアポ取りの数を伸ばしていたり、上司からの指摘を打受けたりすれば、自分の現状を受け止めざるを得ません。
どうしてよいか分からない状態であるため、余計に辛くなってしまうのです。
クレームや暴言などを受けやすい
テレアポでは、理不尽なクレームや暴言を受ける場合があります。「結構です!(ガチャッ)」と電話を切られるだけでなく、厳しい言葉を投げかけられるケースもあるでしょう。
「面識のない相手に突然電話をすること自体迷惑だから、ひどいことを言われて当然かも…」と思う人ほど「自分が悪い」と判断する傾向にあります。クレームや暴言などを自分で抱え込むため、メンタルを病んでしまうのです。
上司からノルマのプレッシャーがかかる
テレアポは、自社商品やサービスを最初に紹介する営業活動です。実際の成約につなげるためには、テレアポで第一関門を通過する必要があります。
そのため、上司からテレアポによるアポ取り率の向上を求められます。成果が上がらなければ、ほかの営業マンと比較されながら、叱咤されるかもしれません。
以前と比べて理不尽な叱り方をする上司が少なくなったとはいえ、上司からのプレッシャーを気にし過ぎる人は、テレアポでメンタルを病む可能性が高いといえます。
単純作業のくり返しで虚しくなる
テレアポは非常に地道な仕事です。トークスクリプトをもとに電話をかけますが、若干内容を変えることはあっても、全体として似たようなトークを続ける場合が多いでしょう。
何十件、何百件も電話をかけ続ける日々を繰り返し、ときに相手から暴言を吐かれるときがあれば、虚しさを感じるかもしれません。
「毎日、こんな感じで働いて何になるのだろう」と感じる営業マンは、次第に心を病んでしまうでしょう。
意外に努力が報われない
少しでもアポ取りを成功させようと努力しても、なかなか報われないため、メンタルを病んでしまう人もいます。
テレアポのトークスクリプトを見直したり、上司や同僚に話し方を確認してもらったり…あらゆる努力をしても、実際の成功率を上げられなければ、モチベーションが下がる一方です。
「自分はがんばっているのに」「一体全体どうしたらいいのか」と、どんどん自分を追い込んでしまう人は、テレアポを続けられなくなるでしょう。
テレアポに不向きな人とは?
前章のように、テレアポによる焦燥感や疲労感を募らせることで、メンタルを病んでしまう人はいます。
病んでしまう人は、テレアポに不向きなのかもしれません。ここでは、テレアポに不向きな人とは、どういう人なのか、解説します。
共感力が高すぎる
共感力が高すぎる人は、テレアポに向いていないかもしれません。共感力は、人とのコミュニケーションをとる際に、必要な要素ではあります。
しかし、他者の状況を汲み取りやすい性格は、ときに負の作用をもたらします。電話の相手先から理不尽な言い方をされれば「嫌な気持ちをさせてしまった…」と罪悪感を抱く場合もあります。
共感力の高すぎる人は、本人が悪くない場合でも「相手が怒るのは、すべて自分の責任だ」と思う傾向にあるため、テレアポにはあまり向いていないといえます。
深く考え込み自己否定に走る
うまくいかなかったり、怒られたりした場合に「私のどこが悪いのか」「なぜ自分はうまくいかないのか」など、まじめに考え過ぎる人は、テレアポに向いていません。
まじめさは良いことなのですが、相手の方が悪い場合でも「自分自身を改善しなければ」と思う傾向にあり、知らぬ間にストレスを溜め込みます。
「テレアポは断られるのが当たり前」と思うようにしても「断られたのはなぜか」と考えてしまうので、一向に気持ちが前に進めなくなるのです。
リフレッシュが上手くない
何事も自分で抱え込み思考を硬直化させてしまうのは、危険です。硬直化を防ぐにはリフレッシュが必要ですが、リフレッシュの苦手な人はテレアポに向いていません。
気持ちが晴れないままテレアポを続けていけば、何かのきっかけでまったく話せなくなる可能性があります。回避するには、せめて休日はしっかり休むのが重要です。
休んでも気持ちが晴れない場合は、リフレッシュの仕方が悪いか、あるいは本当に心を病んでいる可能性があるため、注意が必要です。
テレアポが楽しめる人とは?
テレアポを楽しめる人とは、クレームや暴言を受けても「世の中には酷い人がいるものだ」と思い、開き直って違う視点で働ける人といえるでしょう。
自分の身に起きたことを客観視でき、次に引きずらない人といえます。ここでは、テレアポを楽しめる人の特徴を解説します。
話し上手で聞き上手
テレアポは、個人のトークスキルによるところが大きい仕事といえます。もともと人と関わるのが好きで、コミュニケーション力に長けている人は、テレアポに向いています。
相手に応じて自分の話し方を変えたり、顧客の話を聞いて要求に合う提案をしたりできます。話し上手・聞き上手であるため、電話の相手も思わず本音をもらすでしょう。
顧客から「話しやすい営業マンね」「よく聞いてくれてありがとう」と褒めてもらい、やりがいを感じる場面のある人は、テレアポに向いているといえます。
テレアポにやりがいを感じている
顧客とのやりとりでやりがいを感じる人は、テレアポに向いています。
ときに理不尽なクレームや暴言を受けるテレアポですが、テレアポに向いている人は、コミュニケーション力を駆使しながら、顧客との距離感を縮めるスキルを身につけています。
そのため、相手の態度が和らぎ、顧客とプラスの関係性を築けるのです。成功体験は、営業マンの自信につながり、テレアポを続ける要素となります。
マイペースでプラス思考
顧客からクレームや暴言を受けたとしてもマイペースで対処できる人は、テレアポに向いています。マイペースとは、相手にのみ込まれず、自分を保つ姿勢です。
たとえば、マイペースな人がクレームを受けると「なるほど。話の内容はごもっとも!これも勉強、次のトークに活かそう」と顧客の話を客観的に捉えます。
しかし、テレアポで病みやすい人は、クレームを自分事として受け止め、相手のペースにのまれてしまうのです。
マイペースでプラス的に対処する人は、クレームや暴言を受けやすいテレアポの仕事に向いているといえます。
ゲーム感覚で楽しめる
ゲーム感覚で楽しめる人は、テレアポを続けていけるでしょう。自分にとって良からぬことも「攻略すべき一つのタスク」と捉えるためです。
たとえば、相手の年齢や性別などに応じて、声質やトーン、話し方のすべてを変えます。”対象を落とすために、何が必要でどうプレイするのか…もてるアイテムで勝負する感覚”といえます。
攻略法を細かに考えて実践するゲーム感覚は、単調になりがちなテレアポに必要な要素なのです。
テレアポの不向きな人と楽しむ人との大きな違い
テレアポに不向きな人と楽しめる人の特徴について解説しました。ここでは、両者の間にある大きな違いを説明します。
大きな違いは「自分自身をしっかりもっているか」です。テレアポに不向きな人は、人からの影響を受けやすく、楽しめる人は人から言われたことに流されません。
たとえば、テレアポでクレームを受けたとしましょう。不向きな人は「酷いことを言われた、ショックだ」など、その場の雰囲気や状況から感情的になりやすいといえます。
しかし、テレアポを楽しむ人は「酷いことを言われた」と捉えず、”酷いこと”→「対応すべき内容」と考えます。この方が、他者からの影響を受けにくく、具体的な策を講じられます。
仕事に対するまじめな姿勢は評価すべき点ですが、どちらかといえば主体性が重要です。他者の感情的な言葉に流されず「自分は○○だと考える」と心に残している人が、仕事を楽しめます。
また、テレアポそのものに対する見方が否定的な人は、仕事を楽しめないでしょう。見方をプラスに転じるだけでも、モチベーションをキープできます。
物事の捉え方一つで状況は変わります。捉え方は、自分自身。自分が主体的であるかが重要なのです。
テレアポで病まないための対処法
テレアポで病まないための対処法とは、前章で挙げた「主体性」がポイントになります。人から言われたことや自分の経験を客観視し、何が必要か分かったら行動する姿勢が大切です。
「今はテンションが下がりっぱなし‥‥危険だ」と感じる人は、本章を読んで自分ができることを探してみてください。
断られて当たり前と捉える
「言われなくても分かってる」と思われるかもしれません。しかし「断られて当たり前」と捉えるのは、やはり大切です。
トラブルを回避するために、個人宅も防御線を張っています。受付で断ることを前提にしている法人もいるでしょう。テレアポでアポ取りは、相当難関だと思っていいのです。
アポ取りできるかできないかも時の運…と捉えます。「いつかチャンスは巡ってくる」と気楽に構えられなくても、とにかく「断られて当たり前」と捉えましょう。
1件1件気持ちを切り替える
調子がよかったのに、たった1件のテレアポでひどい言葉を投げつけられたら、一気にテンションが下がります。しかし、ここで気持ちを切り替える姿勢が大切です。
1件でも嫌な印象の残るテレアポがあると、一日台無しになった気分ですね。ただ、そうであっても「1件は勉強案件、ほかはすべて上々!本日は合格」のように、プラス言葉を並べて自己評価をしてみましょう。
客観的な視点で記録をとると、不思議と気持ちが落ち着くかもしれません。自分のやり方でよいので、記録をとったら仕事は完了!と考え、次の日に負の材料は残さないようにします。
自社商品やサービスに関する知識を磨く
自社商品やサービスに関する知識を磨くのは、重要です。どの顧客にどのような商品が合うのか、顧客の話から即提案できるようになるまで、知識を磨き続けます。
顧客が利用している他社商品の情報を集める必要もあります。競合他社との比較を通して、自社を選ぶメリットを顧客に伝えられるように準備しておくのです。
事前準備があれば安心ですし、営業トークに自然と盛り込まれる場合もあります。他社商品や業界情報をよく知っていると相手に伝われば「この営業マンは勉強しているなあ」と顧客に信頼されるでしょう。
トークスクリプトを見直しトレーニングする
トークスクリプトを見直しトレーニングをするのは、テレアポの質を高めるために必要です。また、実践的なトレーニングのため、営業力の向上に役立ちます。
トークスクリプトとは、顧客に何をどの順番で話すのか示した台本といえます。「あいさつや自己紹介」ー「導入トーク」ー「本題」ー「クロージング」の流れになっているのが普通です。
1回作成すれば終わりではありません。随時改善の手を加え、自分なりによりよいものを創り上げるイメージで行きましょう。
自分の声を録音したり同僚とロールプレイングをしたりして、話し方を磨く場をつくるのも有効です。
休日は思い切りリフレッシュする
平日、休日と分けてリフレッシュ法を身につけましょう。テレアポで気持ちが落ち込みすぎる前に、平日にもリフレッシュの時間をとるのをおすすめします。
たとえば「会社でコーヒーを飲むときはじっくり味わう」「朝や夕方に散歩する」「夜の1時間は海外ドラマを見る」など、自分の”お気に入り”タイムを大切にします。
平日が難しい場合は、休日に思い切りリフレッシュできる時間を作りましょう。家でゆったり過ごしたり、ジョギングやテニス、ランチ(飲み会)など外に出かけたりします。
ここで、一つおすすめしたいのが、日光浴です。日光を浴びるのは、心と体を元気にさせるといわれます。
テレアポは普段屋内でする仕事です。フィールドセールスより日光を浴びる時間が少ないため、メンタルに負の作用をもたらすかもしれません。平日に難しい場合は、日向ぼっこでもよいので、休日に日を浴びるように意識しましょう。
テレアポは立派な仕事だと考える
テレアポが虚しい…と思う人ほど、テレアポの仕事に対してマイナスイメージを払拭しましょう。仕事に対する捉え方を変えるのです。
テレアポは、ビジネスマナーをはじめ、営業スキルが身につく仕事です。クレームや暴言に対応すべきシーンもあり、顧客対応力も磨かれます。
会社によっては、比較的自由にテレアポ業務をさせてくれるところもあり、自己裁量の大きい部類に入るかもしれません。
主体的に仕事を行う姿勢をキープすれば、多くの気づきと経験を得られるでしょう。ゆくゆくは自分のキャリアアップに生かせる仕事です。
このようにテレアポの仕事に対する見方をポジティブに変え「さらにスキルを磨くにはどうすればよいのか」考えて仕事をするようにしましょう。
もしもテレアポに病みそうになったら
対処法を行っても、テレアポを続けるなかで自分が病みそうになる場合もあります。
本章では、メンタルがひどくなる前にどうすればよいのか、いくつか紹介します。
自分のよさを分析する
自分のいいところを、自ら洗い出しましょう。「何もない」と最初からあきらめず、場合によっては、家族や友人、信頼できる上司や同僚などに聞いてみます。
自分で捉えたよさと人から聞いたよさをすべて書き出します。自分では気づかないよさを他者から言われると、気持ちが明るくなるでしょう。
書き出したものを一つ一つ見直し、テレアポに生かせる強みは何かを見つけます。複数あれば、優先順位を決め「自分の強みをテレアポにどう生かせるか」を考え、行動に移すのが重要です。
上司や同僚に相談する
自分で考えてもどうにもならない、強みの活かしどころが分からない場合は、上司や同僚などに相談しましょう。
ひとりで悩んでいても、何も解決しないかもしれません。他者に話すだけで自分の悩みを客観視でき、しかも安心して前に進めるケースもあります。また、自分だけでは解決できなかった内容が、他者の一言で簡単に解決できることもあるでしょう。
場合によっては、上司の計らいで、よりよい部署や仕事を提案されるかもしれません。自分で突破口が見つからない場合は、周囲に相談するのもあり!なのです。
転職エージェントに相談する
転職エージェントに相談するのも一つの方法です。上司や同僚に信頼のおける人がいない、家族では仕事の内容を理解してもらえない場合は、転職のプロであるエージェントを頼りましょう。
転職を考える場合、転職サイトに登録する人もいます。ただ、自分のキャリアや特性がどの職にあっているのか不安に思う場合は、転職エージェントの方がおすすめです。
個人的なアドバイザーが付き、登録内容や経歴、実際のやり取りから、適切な助言をしてくれます。あなたの話を聞いて、転職が本当に必要なのかを判断してくれる場合もあります。
もちろん最終判断は自分です。しかし、転職エージェントとのやり取りのなかで、自分の新たな特性を発見できる可能性があるため、機会をみて相談してみましょう。
心療内科やカウンセリングルームに行く
転職する・しない以前に、自分で対応しきれない、あるいは動きがとれない場合は、早めに心療内科やカウンセリングルームに行きましょう。
上司との相談で、産業医や企業内にあるカウンセリングルームを案内される場合もあります。
心療内科に向かう気持ちになれない場合、かかりつけの内科医に相談してみるのも一つの方法です。かかりつけ医から紹介状を書いてもらい、心療内科を案内されるケースもあります。
いずれにしても、本当に泣けるほどつらい場合は(できればそうなる前がいいのですが)専門家に相談しましょう。自分の心や体の声にきちんと耳を傾けるのも、主体的な姿なのです。
まとめ
テレアポは、コミュニケーション能力や営業力を鍛えられる一方でストレスを感じやすい職業といえます。
まずは今回紹介した内容をもとに、できるだけ客観的に物事を捉える姿勢を大切に、上手にリフレッシュしながらテレアポを続けていきましょう。
日々の業務で病みそう…と思ったら、無理をして続けるのではなく、相談や通院など対処法を考えて行動に移すのが必要です。「場合によっては、コールセンターへ異動したり転職したりしてもいいんだ」と考えておくのも気持ちをラクにする方法です。
自分を責めすぎず、自分らしさを大切にして、やれることを少しずつ進めていきましょう。