販売戦略の立て方|欠かせない7つのステップを一挙解説

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販売戦略とは、自社商品やサービスを販売する際の指針となるものです。戦略を立てるには、顧客のニーズや商品価値、競合他社とのポジションなどを見極めなければなりません。

ただ、戦略を立てる重要性が高いとはいえ、次のような疑問や悩みをもつ人はいるでしょう。

「具体的に何をどうすればいいのか分からない」
「実のある戦略の立て方や作成する際のポイントを知りたい」
「参考にできるフレームワークがあれば教えてほしい」

そこで今回は、販売戦略の概要を説明し、戦略の立て方や留意点、策定する際に便利なフレームワークについて解説します。

販売戦略は、自社商品やサービスが最適な顧客に届くために必要な戦略です。この記事で全体像やポイントが分かりますので、ぜひ最後までお読みください。

販売戦略とは?営業やマーケティング戦略との違い

販売戦略とは、自社商品やサービスをどの顧客にどのようなアプローチ方法で販売するのかまとめたものを指します。現代において販売戦略の重要性はますます高まっています

その背景としてインターネットの普及や加速化が挙げられます。誰もがあらゆる情報を収集することができ、しかもECサイトで簡単に商品を購入できます。顧客の志向は多様化し販路もより複雑になっています。

この状況下では見込み顧客に対する効率的なアプローチが必要で、市場の状況や顧客志向などを分析しスピーディに販促をかけなければなりません。販売戦略は、他社との差別化や競争を勝ち抜くために、自社にとって重要な戦略なのです

ところで販売戦略のほかに、営業戦略やマーケティング戦略があります。営業戦略とは、新たな顧客を開拓して商談へ持ち込むための取り組みです。ただ、販売戦略とはあまりつながらず、営業を円滑に進めるための戦略といえるでしょう。

またマーケティング戦略は、経営目標をもとに誰にどのような価値をどう提供するのかを決める戦略です。たとえば、顧客のニーズ、市場調査、自社の立ち位置などを分析し、最適な顧客に絶妙なタイミングで販促をかけ購買につなげます。

加えてマーケティング戦略は、市場に新たな潮流を生み出すことを視野に入れており、中長期的な視野で企業の発展を目論む戦略と定義できるでしょう。

どちらかといえば販売戦略は、営業戦略よりマーケティング戦略に近い存在で、マーケティング戦略のなかの販売に関する分野に集中して行う戦略といえます。

販売戦略がもたらす効果

市場や顧客にメリットのある販売戦略を立てることは、経営目標の達成や業績アップにつながります。ここで販売戦略がもたらす効果について整理し、企業の発展や販売促進に対するイメージを明確にしましょう。

リソースを最適化できる

販売戦略で自社商品やサービスの強みが明らかになり、強みを活かせるターゲット層や販売方法が見えてきます。弱みが明確になれば弱みを強みに変える視点を探し、自社や商品力を底上げしたりできます。

戦略を立てる過程でリソースの価値を明確に可視化できるため、効果を上げるための具体策を立てやすくなり、最終的に企業の業績を上げることにつながります。

適切に効果を測定できる

販売戦略を立てて実行に移した場合、効果を客観的に分析できます。その理由は、戦略の背景に「〇〇すれば◇◇になるだろう」という仮説が存在しており、結果を見れば仮説の成否が具体的に見えるためです。

効果があれば戦略で設定した「いつ誰にどのようなアプローチ法で」の部分が正しかったことが分かります。また成果がでなければ「いつ」「誰」「どのようなアプローチ法で」の各部分を丁寧に分析し改善点を探し出せます。

つまり、販売戦略を立てて実行した方がPDCAサイクルを回せるため、よりよい戦略立案や販売促進活動へとつなげやすくなるのです。

販売戦略の立て方|効果を出す7つのステップ

では早速、販売戦略の立て方について説明します。戦略を策定したのち実行に移して効果を出すためには、販売戦略の7ステップを確実に踏む必要があります。

まずは、目標設定で目標を数値化するところからスタートしましょう。数値化以下、下記のステップを確かめてください。

  • 目標の数値化
  • 市場分析
  • 競合分析
  • 顧客分析
  • 自社分析
  • 現状の課題把握と改善
  • 販売戦略・行動計画の策定

それぞれのステップについて説明します。

目標の数値化

どのような戦略であれ目標設定は重要です。たとえば単価×顧客数で売上目標を決めたのち、予想される販売ルートからどのくらいの顧客数が見込めるのか計算してみます。

その結果、もし売上目標を達成できないのであれば、販売方法やルートを変えたり、客単価を上げたりして目標値に到達するようにします。

市場分析

市場の状況やビジネスの流れ、社会的な動向などに関して、客観的にデータを分析する必要があります。その理由は、いくら自社商品が優れていても市場が求めるものでなければ売れないためです。

たとえば、自社が既に参入あるいはこれから参入を考えている市場の規模を正確に把握します。1%以下のシェアしか獲得できないとすれば、需要と供給のバランスがよいとはいえず競合に勝てる見込みが低くなります。

勝算を高めるには、市場規模や事後に紹介する顧客分析も含めて、丁寧なデータ分析をおこない、勝てる分野を見つける必要があります。

顧客分析

市場分析と同様に、市場の動向を左右する顧客のニーズを把握したうえで販売するのは重要です。ニーズのほか、顧客の個人情報、ライフスタイル、購買行動、心理的な側面などあらゆる情報を分析します。

また自社の成長をさらに促すためには、顧客の潜在ニーズを掘り起こす視点も大切です。

競合分析

市場や顧客分析したのち自社が勝てる分野を把握できたところで、予想される競合他社をピックアップします。競合他社に関する情報、たとえば売上や販売数などのシェア、商品価値、営業や販促に関する情報などあらゆるデータを収集します

収集した情報をもとに、各社の強みや弱みなどを分析しましょう。そして、自社の強みが最大限発揮される分野を見つける際に役立てます。

自社分析

市場や顧客、競合情報を丁寧に分析することに加えて、自社が成功するポイントはどこにあるか把握しなければなりません。

業界で優位に立てるポジションを確保するには、競合分析で整理した内容を参考に、自社の強みがもっとも発揮される位置を見つける必要があります。また、ポジションを確保するだけでなく、競合他社との差がどのくらいになるか数値化することも大切です。

現状の課題把握と改善

情報収集や分析を通して、自社や商品(サービス)に新たな課題を見つける可能性があります。市場や顧客の動向、競合他社の分析から、自社の強みだけでなく弱みが見えてくる場合もあるでしょう。

たとえば自社の商品力が強みであると判断されても、営業力や販売促進に関する分野で弱みとされるケースもあります。強みを生かすためには、営業の効率化や部署間との連携を図ったり、SNSで販促を推進したりするなどの改善が考えられます。

つまり、情報分析をおこなうことで、現状の課題を明確にし何をどう改善したらよいのか見えてくるため、自社の強みをより強固なものにできるのです。

販売戦略・行動計画の策定

調査や分析、課題把握、改善などの視点を含めながら販売戦略を策定します。これまでの分析や課題検討した成果を踏まえ、商品やサービス、価格設定、販促のかけ方など、どの分野をどう強化していくのかを可視化します。

社員一人一人が「自分はどの立場で何をどう変えていくのか」明確に分かるアクションプランを作成します。上司から言われなくても実際に動けるプラニングができてこそ販売効果を感じやすく、新たな課題に直面しても主体的に対処できるでしょう。

販売戦略を立てる際に意識したいポイント

販売戦略を立てるには、前章のように市場・顧客、競合他社、自社に関する情報を洗い出し、整理・分析しなければなりません

すべてのステップで、本章で紹介するポイントを念頭にいれておく必要があります。どの情報をどのように収集し、分析するかで、戦略の形や内容が変わってくるためです。

ここでは、4つのポイントを確認しましょう。

  • 5W1Hの考え方を使う
  • 顧客ニーズを把握する
  • 自社のポジションを把握する
  • 販売方法や経路を詳しく調査する

下記より順に解説します。

5W1Hの考え方を使う

情報を収集して分析する際は、5W1Hの考え方を徹底的に意識して取り組みましょう。神経が磨り減る作業かもしれませんが、分析の視点を養えると、ビジネスのあらゆる分野に応用できます。

たとえば次のように5W1Hの考え方を取り入れます。

  • What(何を):自社商品やサービスの強みは?
  • Who(誰に):ペルソナを明確に
  • Why(なぜ):どうしてそのペルソナは自社商品に関心をもつのか?
  • When(いつ):商品を売り出す(販促をかける)ベストなタイミングは?
  • Where(どこで):店舗で直接販売?ECやアプリを活用しての販売?
  • How(どのように):集客や販促など具体的にどのようにおこなうのか?

このような考え方や見方を常にもちながら、次から紹介する「顧客ニーズの把握」「市場における自社のポジションの把握」「販売方法や経路の調査」をしていく必要があります。

顧客ニーズを把握する

まずは市場にどのようなニーズがあるのか、自社商品やサービスを求める顧客層はどこにどのくらい存在しているのかなどを把握します。また、顧客が実際に自社商品やサービスを購入・利用するのかなど予想される数値を出しておくのも必要です。

自社のポジションを把握する

自社が参入している(これから参入しようする)市場において、競合他社に勝てるポジションを確保できるか客観的に判断します。ポジションを確保できない場合は、市場選定のやり直しや商品の改良、新規商品の開発なども含めて、課題を解決する姿勢も重要です。

販売方法や経路を詳しく調査する

自社商品をどのように販売していくと最も利益を上げられるか調査します。

見込み顧客や競合他社の客観的データを分析し、勝算のある販売方法や販売経路を洗い出します。獲得できるであろう顧客数や利益率など具体的な数値を出していきましょう。

販売戦略立案に使えるフレームワーク

ここまで読んでいただいた方は「販売戦略を立てるにも、分析に使える手法があればしやすいのでは」と思うかもしれません。ここでは、戦略を立てる際に有効なフレームワークを紹介します。

確実に実行に移せるフレームワークですが、分析する対象や内容に応じて、適宜使い分けていきましょう。

ペルソナ分析

自社商品やサービスを購入・利用するであろうペルソナを想定するのは、販売戦略を立案する際に有効です。ペルソナとは顧客の詳細な人物像を指し、ペルソナに確実にアピールできるような販売方法を考える必要があります。

カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップとは、ペルソナが自社商品やサービスを購入・利用するまでの過程(感情や行動)を時系列でマップに表したものを指します。顧客の思いに添った行動を把握できるため、ペルソナの動的な部分に合わせた販売方法を知ることに役立ちます。

SWOT分析

SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字をとった分析方法です。これらをクロスさせながら客観的に分析すれば、弱みを克服しつつ強みを活かした戦略を策定することが可能になります。

STP分析

STP分析とは、自社商品やサービスを提供するターゲットを絞り込んで、競合他社に優位なポジションを確保するうえで重要な分析方法です。Segmentation(セグメンテーション:市場の細分化)、Targeting(ターゲティング:自社が参入する市場の決定)、Positioning(ポジショニング:自社の立ち位置を確保)の3つの要素から成り立っています。

4P分析

4P分析とは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つのPの環境を分析することで、投入する商品や価格設定、販売・販促方法などを決めるフレームワークを指します。

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このほかにも各種フレームワークがあります。市場・顧客・競合他社・自社の分析に特化的なものもあれば、全体図を把握したり対象間の動きを調べたりする分析方法があるため、何を調査したいかによって使い分けることをおすすめします。

ただ、「どの場面でどのフレームワークを使うと効果的なのか」「時間が限られているため、できることなら基本的な手法を用いて迅速に戦略策定したい」と思う場合もあるでしょう。

そこで次章ではテンプレート化している販売戦略の代表例を紹介します。

販売戦略でよく使われる手法

代表的な販売戦略手法として、今回は6つ紹介します。

ランチェスター戦略

ランチェスター戦略は、中小企業が大企業に勝つための戦略といわれます。もとは戦争に勝つために提唱されたモデルで、企業の強みを活かせる分野に特化して自社に有利な状況を作り出す戦略を指します。

ニッチ化戦略

ニッチ化戦略とは、競合他社が参入しきれていない分野に事業展開する戦略をさします。ニッチな分野では競合他社が少ないため、競争に巻き込まれずに効率的にシェアを獲得できるのがメリットです。

コストリーダーシップ戦略

コストリーダーシップ戦略とは、競合他社よりもコストを抑えて商品やサービスを提供することで、市場において自社の優位性を確保する戦略を指します。

サンドイッチ戦略

サンドイッチ戦略とは、自社商品を3つ以上のグレードに分けて顧客に提示し、とくに力を入れたい商品を中央に位置付ける戦略を指します。たとえば、ベーシックタイプ・スタンダードタイプ・プレミアムタイプに分けて、スタンダードタイプを「一番おすすめ!」にする手法です。

バンドル戦略

バンドル戦略とは、複数の商品やサービスをセット販売する戦略を指します。飲食業界でよくもちいられる方法で、フードとドリンクのセットで顧客に提供するスタイルがバンドル戦略の一例です。

リピーター戦略

リピーター戦略は、同じ商品やサービスを繰り返し購入してくれるようなリピーターを増やすための戦略です。現代はトレンドや市場状況が変わりやすいため、新規顧客を獲得してもサービス提供の質や量によって客離れが進んでしまう傾向にあります。

これを回避するために、メルマガや公式LINEなどを使って顧客をつなぎ止め、メリットの提供を継続しておこないます。リピーター戦略は、企業の存続のために必要な戦略といえます。

販売戦略を立てる際の注意点

実のある販売戦略を立てるために、今回紹介した手法を用いるのは有効です。ただ、フレームワークや先例を参考にしても、成功するとは限りません。

その理由は同じフレームワークを競合他社が活用すれば、自社商品やサービスの差別化につながらないためです。同じタイミングで同じようなものを市場に投入してしまう可能性もあります。

このため、フレームワークを採用する場合は、そのまま活用するのではなく、自社の強みや市場における自社の立ち位置を明確にしたうえで、特化できる要素を入れるようにしましょう。

また、目標を設定し素晴らしい戦略を策定したとしても、社内で共通認識に立って協働的にアクションできなければ戦略は無駄に終わります。たとえば営業部とマーケティング部で戦略に対する意識に違いがあれば、ちぐはぐな運びとなり成果につながらないでしょう。

戦略を実行に移していくなかで、問題が生じれば迅速に対応できる力も重要になります。つまり、戦略を立てて安心することなく、戦略を共有することと連携を取りながら実践を進めることを常に念頭におく必要があるのです。

まとめ

今回は販売戦略について解説しました。戦略を立てるときは、自社のさらなる発展のために具体的な数値目標を立て、全体を見る視点と詳細に分析する視点の両方を意識して策定しなければなりません。

また、課題が見つかれば即対応、自社のポジションや強みの可視化に努め、戦略の策定後は社内で共有して協働的に実行に移すことが重要です。

ただ、忘れてはならないのは、市場や顧客のニーズは何かということ。ニーズが変化すれば戦略の立て直しを随時図るなど、顧客目線をキープするよう心がけます。

顧客が幸福と充実感に満ちた未来を描けるよう、広い視野と細かな観察眼で販売戦略を立て、アクションを起こしていきましょう。

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