展示会での営業は通常の営業とは異なります。ただ「何がどのように異なるか」をしっかり把握しなければ、展示会で成果を上げられないでしょう。
本記事ではまず展示会を開催する目的を確認して、展示会で営業活動をするメリットを整理します。そのうえで展示会ならではの営業活動を成功に導くためのコツを5つ紹介します。
展示会の前から当日だけではなく、業績を向上させるには事後のアプローチが欠かせません。記事のおわりにアフターフォローのポイントについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
展示会を開催する目的とは?
展示会を開催するのは自社商品やサービスの優位性を確保するとともに、顧客へ購買行動を促し成約へつなげるためです。企業の業績を向上させるには欠かせない活動のひとつといえるでしょう。
ここでは展示会を開催する目的として2つの点に絞って解説します。
顧客とコンタクトをとる
展示会は見込み顧客だけでなく潜在顧客から既存顧客、優良顧客など、顧客ランクに応じた営業活動をおこないやすいのが特徴です。このため、通常の営業活動よりも広く効率的に顧客とコンタクトがとれます。
予想される来場者を、どの顧客ランクに設定するかによって展示会のコンセプトが変わります。コンセプトが決まれば、展示会で”何を準備してどのような内容で顧客にアプローチするのか”が明確になるでしょう。
また、見込み顧客を商談へ導くのが目的であっても、新規顧客の心を捉えるアプローチができるケースが多いため、広く顧客に周知するのも可能になります。
自社商品やサービスの認知を高める
展示会を開催する目的の2つめは、自社商品やサービスの認知を高めるためです。加えて自社商品やサービスの良さを顧客に知ってもらうのは、同時に企業アピールにつながります。
展示会では通常の営業と異なり、自社の製品を直接目にしてもらったりデモストレーションをおこなったりして製品の良さをリアルに伝えられます。
先方に訪問するのではなく、大勢の顧客に来てもらってアプローチできるのは企業にとって効率的な営業方法といえるでしょう。
また、展示会で自社商品やサービスの詳細や強みを直接訴えることができれば、その場で契約に結びつかなくても顧客の心にとどめておきやすくなります。
展示会で営業活動をおこなうメリット
展示会で直接顧客とコンタクトをとったり自社商品やサービスの認知を高めたりできれば、事後につながる成果を得られます。ここでは、展示会で営業活動をおこなうメリットを3つ紹介します。
顧客のニーズを把握できる
展示会をおこない直接顧客とやり取りするのは、顧客ニーズを具体的に把握できるのがメリットです。実際に製品を見せながら顧客に伝えられるため、顧客自身が製品の良さを実感しやすいといえます。
ほかに、顧客が製品を使ってみて「もう少し〇〇だといいわ」といった要望も入手できるなど、製品の改良や新商品の考案などにつながる場合もあります。
経営者や顧客と直接話せる
展示会では直接決裁者や経営者と話せます。商品に関する具体的な情報を決裁者と話ができるのは、比較的商談へつながりやすいといえます。また、展示会の営業活動はどちらかといえば改まった感じでなく本音を引き出しやすい雰囲気であるため、信頼関係を築きやすいでしょう。
さらに多くの企業が集まって開催される大きな展示会では、ほかの企業や商品目当ての顧客もおり、さまざまなニーズを把握できるチャンスでもあります。
想定とは異なる業種の人と直接話せるのもメリットです。新たな視点を得られやすく、自社商品やサービスに関する意外な気づきや改善点を見つけられます。
商品の強みをリアルに伝えられる
ここでま何度かお伝えしたように、展示会で営業活動をおこなうのは、自社商品やサービスの良さをしっかりアピールできるメリットがあります。
たとえば大きな製品を通常の営業活動で見せるのは難しくても、展示会であれば実際に見せて動かしたり触れてもらったりできます。
口頭で説明するよりも体験してもらった方が商品の良さが伝わりやすい場合、迷わず展示会を開催する方が企業にとってメリットが大きいのです。
展示会ならではの営業のコツ
展示会ならではの営業活動のコツを解説します。目的を達成し効果を実感するには、今回紹介する5つのコツを参考にメリットを最大限生かしていきましょう。
目標設定を明確に
顧客を着実に獲得して売上向上につなげるためには、目標を明確に設定する必要があります。目標の設定をおこなうことで、下記の効果が考えられます。
- 営業活動のイメージを描きやすい
- 営業活動の質を上げられる
- 営業活動における反省点を洗い出せる
- 顧客を分析して事後の活動に活かせる
上記の効果を実感するには、目標に「数値」を入れると良いでしょう。たとえば展示会に参加する営業担当者ごとに「名刺交換する枚数」や「展示会後に行う商談数」を設定します。あるいは「名刺交換後の商談率を2割にする」など具体的な数値を立てるのです。
目標に数値を入れた方が、展示会開催後に結果を分析する際に活用できます。改善点を具体的に洗い出せるため、次におこなう展示会をよりよくできるのです。
事前に集客をかける
展示会の開催準備として集客は重要な役割を果たします。来場予定の顧客に展示会の案内をどうおこなうかで、当日の来場者数が変わります。また来場する見込み顧客の心理にも大きく影響するでしょう。
たとえば来場者の心理としては次のようなものが考えられます。
- 今はほしいものがないけれど、何があるか一応見にいこう
- 面白そうな商品があれば、自社の商品開発の参考にしよう
- 自分にメリットのある商品だったら購入してみてもいいかな
- 以前購入してよかったから今度もいい商品を案内してくれるだろう
- 展示会の〇〇は欲しかったもの!買いに行こう
来場者によって「購入する気はない」「よかったら購入しようかな」「必ず買うつもり」のように興味・関心や購買意欲のレベルが異なります。
このため、顧客によって集客方法を変えてみましょう。新規顧客を呼び込むにはWebサイトや各種広告、プレスリリースなどで伝えます。見込み顧客にはメルマガやSNS発信が効果的です。
既存顧客にもメルマガやSNS発信が有効ですが、電話やDMも視野に入れつつ、購買履歴や好みなどからおすすめの商品を限定的に案内してもよいでしょう。
いずれにしても顧客に展示会まで足を運んでもらうには、より魅力的な情報を届ける必要があります。「クーポン券発行」や「ノベルティ&試供品提供」をおこなう旨を伝えると自社ブースに立ち寄ってもらえる率が高くなります。
このように顧客層を見極めて集客をおこなうようにしましょう。
当日は積極的にアプローチ
展示会は自社オンリーでおこなう場合もあれば、数百規模のブースがそろう場合があります。慌ただしいなか、来場者に自社ブースに訪れてもらうには”積極的にアプローチ”しなければなりません。
「積極的にアプローチする」とは、”いかに具体的に物事をおこなうか”が重要なポイントになります。
たとえば、展示会の営業担当者、つまり人材による集客方法として下記の方法が挙げられます。
- 来場者やその流れを観察する
- 取材メディアがいる場合は声をかける
- 目や耳、心に届くキャッチフレーズを伝える
- 来場者とのコミュニケーションは自然体で
- 名刺交換を積極的におこなう
- 他業種のブースもチェックする
事前に準備すべき「キャッチフレーズ」以外は、その場で営業担当者が何をどう見て行動するかが重要になります。新任の営業担当者にとっては、何がどうなっているのか分からない状況かもしれません。この場合は、上記の1つか2つ選んで徹底的におこなうようにします。
たとえば名刺交換を積極的におこなうとすれば、午前中に〇枚、午後に〇枚といった具合に具体的な数値を立てます。あるいは各業種のブースをチェックする場合は、チェックシートなどを用いながら客層やブースデザイン、自社との違いなどを分析しましょう。
目的をもって取り組めば、事後に良い点や改善点を具体的に抽出できます。展示会を開催後に自分自身が「誰に何をどのようにどのくらいアプローチできたか」しっかり答えられるようにするのです。
ブースやパネルを工夫する
展示会のブース内外で、来場者の興味を引くものを用意する必要があります。まずはブースやパネルをどのようにデザイン設定するかを吟味したいところです。たとえば次の視点を確認しましょう。
- 顧客の目にとめやすい場所に目玉商品置いているか
- 顧客の動線を意識しているか
- 顧客が入りやすいブースデザインであるか
- パネルの文字の大きさやフォントは読みやすいか
- 画像や動画など視聴覚情報に魅力があるか
- コーポレートカラーを用いるなど統一感があるか
展示会では、自社商品の実物を展示したり実際に使う場面を案内したりする必要もあるでしょう。時間を決めてセミナーやプレゼンテーションをおこなうことも考えられます。
この場合も徹底した顧客目線で、顧客の抱く疑問点や質問などに丁寧に答えるようにします。見込み顧客を対象にセミナーをおこなっている場合も、自由参観を可能にして新規顧客の呼び込みに活用します。
展示会前の集客でクーポン券発行や試供品等の提供を伝えている場合は忘れずに対応します。ただ見込み顧客が「もらうだけ」にならないよう、顧客が本当に満足できる時間を提供することを第一に考えて行動しましょう。
ニーズを把握し事後に活かす
展示会では自社商品やサービスのメインとなるものを目につきやすい場所におきます。そのほか既存商品のおすすめを用意し、商品の優先順位をつけておくのも効果的です。
その理由は、複数の商品を設定することで顧客のニーズを把握しやすいためです。たしかに1本勝負!というケースもあるでしょうが、比較商品があることで顧客の価値観や予算感などを知りやすくなります。
「〇〇は品質も最高級だけれど、値段がねえ…。品質は少し劣っても十分だから、▢▢の方が気兼ねなく使えそう」といった言葉は、”品質と価格のバランスをとりたい”といった顧客のニーズです。
またニーズの把握は商品を通してだけでなく、顧客との名刺交換やコミュニケーションから見てとれます。
名刺交換の際は、その場で話した内容やプライベートな情報、展示会に来た目的などをメモしておきましょう。
その際、「導入の予定はあるのか?」「〇〇が改善されたら買いたいと思うのか?」などをさりげなく聞いてみます。展示会で押し売りはせず、事後の顧客分析に活かせる視点をたくさん得ておくのです。
立ち話、あるいは「ちょっとしたジョーク」の裏側にも顧客の本音がポロッとこぼれる場合があるでしょう。ただ、そのままにしておくと忘れてしまうため、あらかじめヒアリングシートを用意しておきます。
その瞬間を逃さない姿勢が大切です。営業担当者は、自社商品やサービスを勧める役割をもっていますが、それ以前に顧客ニーズの聞き役に回る記者のようなポジションでいた方が展示会を通じて大きな成果を得られます。
ここまで、展示会ならではの営業について紹介しました。おわりに展示会が終わったあとのフォローについて解説します。
展示会終了後のフォローが重要
展示会が終わったからといって「終わり」ではありません。もっといえば展示会が終わった以降が本番だと考えましょう。
展示会終了後のフォローアップ次第で商談、あるいは成約につなげられます。機会を逃したり伸ばしたりすることなく、下記のポイントを参考に効率的な営業活動を続けていきましょう。
- 交換した名刺をすべて整理・分析する
- 来場者にお礼のメールを送ったり電話をしたりする
- アポ取りをする
ブースに来てくれた方から名刺や連絡先などを得られた場合は、まずは来場者の情報を整理しましょう。メモやヒアリングシートなどから、顧客のニーズや個人情報、興味などあらゆる情報をデータ入力して分析します。
分析とは、顧客を新規・見込み・既存などのレベルにわけると同時に、ニーズや要望などを鑑み今後考えられるアプローチ法を抽出することを指します。
分析を通して来場者に時機を逃さずコンタクトをとるようにしましょう。日が経ち過ぎれば印象が薄くなってしまうため、できるだけ早い段階でお礼のメールを送ったり電話を入れたりします。この際も手ごたえ等をメモしておき、商談へ進む確率を把握しておきます。
商談への確率とは、顧客になり得る見込みがどのくらいあるかを指します。”見込みランク”をつければ、効率的に営業をかけられるため必ず把握したいところです。たとえば次のようにランクを設定しましょう。
- Aランク:今すぐ購入したい顧客
- Bランク:只今検討中。購入する確率は高い顧客
- Cランク:興味は高いが購入は迷っている顧客
- Dランク:興味は低いがコミュニケーションは取れた顧客
- Eランク:見込みはほぼない
このように分類し部署内で共有すれば「誰がどこでいつ誰にどのように」アプローチしてよいか一目でわかります。
Dランクの顧客であっても、商品価値が世の中に周知され始めたとたんに購買意欲が高まる場合があり、早い段階で「見込みが薄い」と判断しない方がいいでしょう。
場合によっては、部署内で顧客層に合わせたチームを立ち上げて連携する方法も考えられます。たとえばDランク担当チームは、顧客ニーズをさらに掘り下げて”育てる”営業アプローチをおこなうのです。その方が営業活動の生産性を上げ、実際に多くの見込み顧客を獲得できるでしょう。
まとめ
展示会を成功に導くには、目的を明確に設定し想定する顧客に対して最適なアプローチをおこなう必要があります。来場者の情報は、ささいなつぶやきであっても逃さずメモに取って事後の分析に活用しましょう。
また、具体的に見える成果へとつなげるには、展示会の開催が一人の力でできないのと同様に、営業活動においてもチームワークが必要になります。個人のとりこぼしや偏った見方で「この顧客は良い、この顧客は見込みがない」と判断してはなりません。
社内で互いの見方や考え方を参考にしながら、よりよいアプローチ法はないかと探す姿勢が大切です。個々の顧客の新たな生活や幸せな暮らしを支えるために、顧客の今を育てる視点も必要でしょう。
今回の記事を参考に、ぜひ自社の展示会を成功へ導き業績を向上させていきましょう。