顧客との円滑なコミュニケーションは、成功に導くために不可欠な要素です。とくに会話の中で瞬時に適切な言葉を発する「瞬発力」は顧客に良い印象を与え、ビジネスの成果に大きな影響を与えます。
しかし、営業パーソンの中には自身の会話力に自信を持てず「どうしたら顧客とスムーズに会話ができるだろうか」と悩む方もいるでしょう。
今回は、会話における瞬発力の重要性を探りながら、そのメリットや具体的なトレーニング法を紹介します。限られた時間でも効果的な伝え方を身につけたい方や、業績をさらに向上させたい方にとって有益な情報です。ぜひ通してお読みください。
会話の瞬発力とは?
会話の瞬発力とは、即応即答のコミュニケーションスキルを指します。リアルタイムのコミュニケーションにおいて、状況や相手のニーズをすばやく把握し、適切な言葉やアイデアを即座に提示する能力です。
本章では、瞬発力のある会話が重要である理由とメリットを解説します。
なぜ瞬発力のある会話が重要なのか
ビジネスシーンでは自社と取引先双方の時間が限られており、スムーズで迅速なコミュニケーションが求められます。このため営業パーソンにとって、瞬発力のある会話をすることは非常に重要な要素となります。
テンポがよく瞬時にやり取りできる会話は、相手の印象を高める効果を発揮するでしょう。また、短時間で的確な意思疎通を可能にするため、顧客に信頼感をもってもらうのに役立ちます。
会話に瞬発力があることのメリット
瞬発力のある会話には、多くのメリットがあります。ここでは以下の5つを紹介します。
- 相手にインパクトを与えて興味を引き付ける
- 迅速かつ効果的な情報伝達ができる
- 他人からの信頼やリーダーシップを発揮しやすい
- スムーズでよりよいコミュニケーションにつながる
- 問題解決により近づける
会話にスピード感をもたせるのは、自身の存在感を高めたりコミュニケーション能力を向上させるだけではありません。他人との関係をより良いものにするための要素となります。
スピード感のある会話に慣れると、日常生活やプレッシャーのかかる場面でも冷静に対応できるようになるでしょう。さらに、ビジネスの変化に柔軟に対応して新たなアイデアを創出するなど、ビジネスパフォーマンスを向上させます。
瞬発力のある会話を生み出すトレーニング10選
ここでは、会話力を鍛えるためのトレーニング方法について「個人でできる方法」と「実践的におこなえる方法」の2つに分けて紹介します。
個人でできるトレーニング
まずは、個人でできるトレーニングとして以下の5つについて解説します。
- とにかく声に出す
- オープンマインドの姿勢をもつ
- ジャスチャーをつける
- 表情を変えてみる
- 五感を意識して表現する
この順番で解説します。日常的に意識することで、少しずつスキルアップできます。ぜひ参考にしてみてください。
1.とにかく声に出す
「とにかく声に出す」とは、会話力に自信のない人が考えすぎてしまい、言葉にするまで時間がかかる傾向を改善するトレーニングです。声に出して話す練習をおこなえば、会話のチャンスを逃さずに「広げるスキル」を磨けます。
家庭にいるとき、ひとり言でも良いので声に出す練習をしましょう。ご飯を作るときや食べるとき、うれしいときやイライラしているとき、テレビや動画を見ながら反応するなど、あらゆるシチュエーションで声を出してみるのです。この練習によって会話に対する抵抗感を減らせます。
2.オープンマインドの姿勢をもつ
オープンマインド(自己開示)の姿勢とは、自分の感情や考えを素直に表現し、相手とのコミュニケーションをより深めることを指します。自己開示を通じて信頼関係を築く姿勢は、ビジネスシーンでも役立ちます。
まずは「オープンマインドでいること」を意識しましょう。家族や同僚とのコミュニケーションのなかで自分の思いを表現するのが難しい場合は、一人でいるときに自分の固定観念や先入観を解く努力をします。
家族や友人に対しても、ありのままを認めて良いところに目を向けるようにする姿勢も大切です。瞬時に異なる見方に切り替える習慣が、会話力向上にも効果を発揮します。
3.ジェスチャーをつける
手や身体の動きを使って話すのは、相手に活気のある印象を与えます。また、言葉だけでは伝えきれない思いを補完し、相手とのつながりを深めるために重要です。
ただ、瞬発力のある会話を苦手としている人は控えめで、相手のテンポにうまく合わせられない傾向があるかもしれません。
まずは家族や親しい友人との会話で手の動きを加えてみましょう。大げさにする必要はありません。家族や友人からのアドバイスを受けながら自分の話し方を改善してみます。
改善の過程で、自分が安心感と自信を持って話せるジェスチャーを見つけられるでしょう。
4.表情を変えてみる
瞬発力のある会話において表情を意識するのは重要なポイントです。相手に好感をもってもらえるような笑顔や話し方はどのような表情か、まずは鏡の前で自分の笑顔や話し方をチェックして、一番魅力的な表情を決めましょう。
また、家族や友人、同僚などと会話をする際も、目やまゆげ、口元など、自分の表情を調整しながら話すように努めます。適宜アドバイスを受けることで、会話の質を向上させられます。
「表情を変える意識」をもって努力していると、周囲から「最近、表情が素敵だね」といった言葉をもらえるかもしれません。そうした言葉をもらえると自信も深まります。
5.五感を意識して表現する
五感を意識して表現するトレーニングによって、会話はより鮮明で魅力的なものになります。視覚、聴覚、触覚などの感覚を活用することがポイントです。
家族との会話でも、具体的なイメージや色彩を使って状況を描写したり、音楽に関連した言葉を使ったりして、会話をより豊かにするよう努めましょう。五感を活用した表現を瞬時に使うのは、相手により強いインパクトを与えられます。
例えば、夕食の感想を単に「おいしかった」と言う代わりに、「赤、黄色、緑の配色が鮮やかで、香りもスパイシー!」「具材の食感も程よく感じられて本当においしかった」と表現してみましょう。
また、子どもがいる家庭では、「五感ワードで5分会話」という名前で試してみると、子どもの感性を育むうえでも役立つでしょう。
人とかかわりながらできるトレーニング
ほかの人との関わりを通じたおこなうトレーニング方法を紹介します。
- 相手の話を傾聴する
- 詳説&要約する
- 相手に質問する
- ボキャブラリーを増やす
- メモをとって伝える
上記の内容は、個人的に意識するトレーニングにも含まれますが、人とのかかわりを通じてより鍛えられる方法として解説します。
1.相手の話を傾聴する
瞬発力のある会話において、相手の話によく耳を傾けるのは重要な要素です。話の内容はもちろん、相手の非言語的なサインや感情を読み取る姿勢も大切です。傾聴スキルが向上すれば、顧客の意図やニーズを正しく把握し、それに対して適切に返答できます。
傾聴をおこなう際に注意したい点を以下に挙げます。
- 注意深く聴く
- 相手のサインに敏感になる
- 共感の姿勢をとる
注意深く聴くとは、相手の話にとにかく集中して耳を傾ける姿勢を指します。途中で割り込んだり考えごとにふけったりしないように気をつけます。
また、相手の表情やジェスチャー、声のトーンなどから感情や意図を読み取り、共感的な態度を示すのは、相手に信頼感をもたせる聴き方です。
日常生活やビジネスシーンのなかで傾聴の習慣を身につけ、会話の質を高めていきましょう。
2.詳説&要約する
瞬発力のある会話にするには、日ごろから自分の話を詳しく解説したり相手の話をまとめて話したりする練習が欠かせません。
顧客の会話内容を瞬時に把握し、顧客ニーズに合う自社商品やサービスをわかりやすく話す姿勢は顧客に良い印象を与え、実際の関係づくりに役立ちます。
実践を重ねると同時に、個人的にトレーニングをおこなうのも有効です。ニュースや新聞、Web情報などの話を要約して家族や友人に伝えたり、彼らから質問があれば要点を絞って順序立てて話したりする習慣はビジネスシーンでも役立ちます。
3.相手に質問する
瞬発力のある会話では、ただスピーディにやり取りできる点だけでなく、どのような質問を相手に投げかけられるかが重要です。
意義のある質問をするためには、事前に相手の情報を把握するとともに相手の話を傾聴しなければなりません。ビジネスシーンでは顧客の興味や要望、本音などを引き出すために、相手の情報や話の内容にもとづいた質問をする必要があります。
相手が答えやすいオープンクエスチョンや5W1Hを使った質問をすることで、具体的なニーズを把握しつつ会話をテンポよくつなげられます。日常会話やビジネス環境で意識したいトレーニング方法です。
4.ボキャブラリーを増やす
ボキャブラリーを増やすためには、個人的な取り組みが必要ですが、ほかの人との会話を通じて学べます。「語彙力をつけたい」と心に願っていれば、おのずと人の会話から「この言葉は参考になる、使ってみたい」と感じるボキャブラリーを見つけられます。
また、書籍やウェブサイトから情報を収集し、興味をもった言葉や新しい表現を学べば豊かな語彙力を養えるでしょう。
こうした取り組みは、実際のビジネスシーンにおいて顧客に価値ある情報を提供できることにつながります。ボキャブラリーが豊富であれば顧客に良い印象を与え、新たな発見を通して顧客から感謝されるケースもあります。
5.メモをとって伝える
思いついたアイデアや興味深い話をメモに残す習慣は、記憶を補完したり整理したりするのに役立ちます。メモをふり返るプロセスで、最初に気づかなかった視点を得られる可能性があります。
また、メモをすばやく誰かに伝えるのは、話題を共有したりフィードバックをもらったりして会話をより豊かにする効果があります。
つまりインプットとアウトプットを組み合わせることで、瞬時に価値ある内容を会話に活かすセンスを磨けるため、瞬発力のある会話に移行できるのです。
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ここまで個人でできるトレーニングと人とのかかわりを通じて可能なトレーニングを紹介しました。自分ができることから順にトレーニングを始めてみましょう。
徐々に要素を組み合わせて日常的に意識できるように努めると、瞬発的な会話力の向上につながります。
会話力トレーニングをおこなう際に考慮すべきこと
会話力を鍛える際には、瞬発力だけでなく他の要素にも注意を払う必要があります。以下では、会話力トレーニングを実施する際に考慮すべきポイントについて解説します。
会話力とは瞬発力だけではない
会話に瞬発力があれば顧客に鮮明な印象を与えますが、会話にスピード感があるだけでは十分ではありません。
一番大切なのは、顧客に良い印象を与えたうえで獲得する「信頼関係」です。単にテンポが良く楽しく会話が弾んだとしても、顧客に好感をもってもらえない場合もあります。
「この営業マンは私の話を本当によく聞いているだろうか」「話のスピード感についていけず、自分で考える余地がない」といった感想を顧客がもてば、関係づくりに支障をきたします。
瞬発力はあったほうが顧客に魅力的にうつりますが、それだけではなく「共感や思いやりを感じさせるコミュニケーション」をおこなうようにしましょう。
自分の個性やスタイルを大切に
自分の会話力に自信がなく「会話にもっとスピード感をもたせたい」と願う営業パーソンであっても、それぞれに個性やスタイル、得意な温度感をもっています。
つまり、自分が得意とする会話の「性質」を認める姿勢も重要なのです。たとえば、以下のような会話の性質が挙げられます。
- リラックスした雰囲気を醸し出せる
- 軽妙なユーモアをさりげなく言える
- 落ち着いた声のトーンや速さで話せる
上記の会話は、顧客にとって安心感のあるものになります。自然体で、顧客との相性や状況に合わせて調整できることも、よりよいコミュニケーションには大切なポイントです。
自分の会話における個性やスタイルの重要性を理解し、自信をもってさらに磨く姿勢を保っていきましょう。
思わぬ言葉で相手を傷つけないように
瞬発力のある会話では、ときに「ついつい」といった失言が生じやすいものです。常に相手の感情や意見を尊重する姿勢を大切にしましょう。
言葉の選び方や表現方法に気を配り、顧客の心を過度に刺激したり傷つけたりしないようにします。また、直感で言葉を発する前に「この言葉を伝えて大丈夫だろうか」と瞬時に考える姿勢も重要です。
瞬発力のある会話は、自分の発する言葉について即時判断できる力も関連しているといえます。
会話の瞬発力を高めたいと思う営業パーソンのなかには「言葉を発する前に考えすぎてしまって機を逃してしまう」と悩む方がいます。こうした悩みは悪いことではありません。
重要なのは、いつでも顧客に思いやりの気持ちをもち丁寧に対応する姿勢です。瞬発力は、その過程をより凝縮させて鍛える過程で身につきます。地道な取り組みを積み重ねていくなかで、会話の瞬発力を向上させられると認識し、日々研鑽を積みましょう。
会話力をよりクリエイティブにするには
瞬発力だけでなく、よりクリエイティブな会話を生み出すための要素として「つかみ勝負」と「適切な一言や間を入れる」というポイントがあります。
まず「つかみ勝負」とは、話をしてからの数秒もしくは30秒間に顧客を引き込む力をもつことを指します。会話の初期段階で、相手に興味や関心を抱かせるような言葉や表現を使います。たとえば、簡潔で魅力的な要点を伝えたり、興味深いエピソードや意外性のある事実を紹介して顧客の注意を引きましょう。
次に「適切な一言や間を入れる」というポイントです。会話の中で顧客の話に対して適度な反応や共感を示します。これによって顧客が話を続けやすくなり、会話がスムーズに進むでしょう。
また適切な間を設けるのは、顧客に考える時間を与える思いやりの表れ、戦略的な手段ともいえます。さらに、営業パーソン自身が考えを整理したり、新たな発想を生み出したりするための時間を確保するのにも役立つでしょう。
今回紹介した10個のトレーニング法と上記の2点を意識することで、相手とのコミュニケーションを豊かにし創造的なアイデアや意見の交換を促進できます。
まとめ
瞬発力のある会話を意識しクリエイティブなコミュニケーションを実現するのは、ビジネスや人間関係の構築に欠かせません。
自己トレーニングや他者とのかかわりを通じて会話力を鍛え、瞬発力と創造性を兼ね備えた営業スタイルを構築しましょう。また、自分の個性や会話の性質を良く理解し、会話の独自性を保つ姿勢も大切です。
今回の記事を参考にして、より豊かな人間関係や成功につながる会話を実現するために、日々研鑽を積み重ねていきましょう。