営業パーソンのなかには「二者択一法」といった手法を耳にしたことがあるでしょう。とくにビジネスの最終段階であるクロージングで適切な二者択一法を使えるかどうかは、結果を大きく左右すると考えられます。
しかし、具体的にどのような場面で二者択一法を活用したらよいのか悩む人もいます。また、実際に活用していても、効果をいま一つ実感できずに困っている人がいるかもしれません。
今回は、営業トークに使える「二者択一話法」の概要と効果を解説するとともに、とくにクロージング場面での具体的な使い方や対処法について紹介します。本記事を参考にして実践に移していきましょう。
二者択一法の基本とは?
ここでは、二者択一話法についてその概要と効果を説明します。
二者択一法とは?
営業において、二者択一法は強力なコミュニケーションツールです。二者択一法とは、顧客に選択肢を与えることで自身の意思を明確にさせ、商談を優位に進める際に使われる手法を指します。
たとえば、商談中に「Aの商品とBの商品とでは、どちらが御社にメリットがあると思われますか?」と質問して顧客のニーズを確認したり、より効果的な提案をしたりする際に使われます。
二者択一法は、相手に選択肢を与えることで責任や自信をもたせ、不安や抵抗感を軽減する役割を果たします。また、会話が行き詰ったときに二者択一法を取り入れることで、スムーズなコミュニケーションを保つ要素も含まれます。
他の話法とどう違う?
二者択一法の特徴や効果について、Yes,No話法やオープンクエスチョンと比べて説明します。
Yes,No話法とは、相手にYesかNoを答えさせるもので「商品Aについては御社にメリットがあると思われますか?」といった質問を指します。相手にとっては答えやすい質問ですが「どちらともいえない」あるいは「はい、あると思います(いいえ、とくに良いとは思いません)」のように、”話がそれで終わってしまう状況”を招く可能性があります。
一方、オープンクエスチョンは顧客が具体的な内容について答えられる質問で、たとえば「商品の購入時期に関しては何月ごろをお考えでしょうか」のような内容です。回答する側である顧客に、自身の意思を明確にもたせる意図が含まれます。自分から具体的な内容を話すのは、責任と自信をもたせることにつながり、商談に対する前向きさを引き出します。
二者択一法にはオープンクエスチョンと通じるところがあり、オープンクエスチョンで答えにくい場合に、こちら側が「AかBか」の選択肢を提示することで回答しやすくしたものといえるでしょう。
つまり二者択一法は、相手が決めかねている状況であっても、2つのオプションを付けることで顧客が答えやすく、自分の意思を明確にできるメリットがあるのです。
二者択一話法の活用場面を紹介
クロージングにおける活用例を紹介する前に、二者択一法が実際に活用される場面をお伝えします。活用場面として、以下の3つが挙げられます。
- アポ取りで使う場合
- 顧客の心理的な負担を軽くしたい場合
- クロージングで使う場合
アポ取りでは、たとえば顧客にとって都合が良い日時を聞く場合に使います。見込み客の都合を優先して、確認しながらアポイントを取るのは重要です。
顧客の心理的な負担を取り除いて自信や安心感を与えたい場合、二者択一法が用いられます。とくに新規顧客の場合、自社に対する信頼感はまだ高くないため、購入や契約に際してYesかNoかで決断を迫るのは避けたいところです。適切な選択肢を提示することで、不安や悩みを軽減します。
クロージングにおける二者択一法は「もし購入されるとしたら、A商品とB商品のどちらをご希望ですか?」のように提案する場合に使います。顧客に対して、購入や契約を前提に選択肢を提示する方法です。
二者択一法は、自社にとっても顧客にとってもそれぞれのメリットを享受しやすい質問法といえるでしょう。
クロージングにおける二者択一法の活用例
クロージングは商談の成功に導けるかどうかの重要なプロセスです。クロージングで二者択一法を活用することで、ビジネスの成功率を高めることが可能になります。
クロージング前に確認を取る
実際のクロージングに入る前に、顧客に確認をとります。商談のプロセスで成約の手ごたえを感じていたとしても顧客が納得していない場合があるため、確認は成功への鍵を握る重要なステップです。
たとえば商談でプレゼンテーションが終わったのち、次のステップに移る前に確認をおこなうことで、クロージングへの流れをスムーズに導けます。
まず、説明が終わった際に「説明は以上となります。何かご質問はございますか?」と丁寧にたずねましょう。顧客の真意や疑問点を確かめる機会となります。顧客から質問がある場合は、真摯に対応し顧客の不安や疑問を丁寧に取り除きます。
実際のクロージング場面での使い方
商談のクロージング場面では、以下のような形で二者択一法を取り入れましょう。
- 「当社のサービスにはベーシックプランとプレミアムプランがございます。お客様のニーズに合わせて、どちらのプランをお選びいただけますか?」
- 「もし商品をご購入いただく場合、お支払い方法は一括払いと分割払いのうち、どちらがよろしいでしょうか?」
このように、商品・サービス内容や支払い方法の選択など、実際の購入や利用に関係する項目について二者択一法を使います。顧客にとって明確な意思決定の機会を得るのは責任が伴いますが、実は「自身で決断できる」といった安心感をもてるのがメリットです。
選択肢を提示するのは、顧客に自分のニーズや予算に合わせた選択をおこなう余地を与え、購買意欲を高める効果を発揮します。また、二者択一法による質問に答えることで、不安や迷いの軽減も期待できます。
反対意見やネガティブな姿勢への対応
顧客が反対意見やネガティブな態度をとった場合、営業パーソンとしていかにうまく対応できるかが成果に影響します。
顧客が反対意見や懸念を示す場合にも、二者択一法をうまく活用して対処することが重要です。以下はその対処法の一例となります。
- 反対意見を丁寧に受け止める姿勢を示す
- 顧客の意見に対して二者択一法をおこなう
- 懸念事項を解決する方法を提案する
反対意見が出た際には、まずその意見を丁寧に受け止めましょう。「ありがとうございます、その点についてお話しいただけますか?」と問いかけ、顧客の意見を詳しく聞きます。ここで大切なのは、顧客の立場や不安を理解しようとする姿勢を示すことです。
次に、顧客の意見に対して選択肢を取り入れた形で対応します。「お客様のご不安な点について理解いたしました。この場合、ご予算に合わせたプラン変更、あるいは分割でのお支払いをお選びいただくとしたら、どちらをご検討されますか?」といった質問を投げかけます。顧客は現在の懸念事項と選択肢を照らし合わせて考える機会を得られるでしょう。
このようにニーズや悩みの解決につながる適切な提案をすることも重要です。質問に対して顧客が「分割での支払いを希望します」と答えた場合、さらに「分割払いの場合、お支払い回数や金額を調整することも可能ですので、お客様の予算に合わせたお支払いプランを提案いたします」とアプローチできれば、顧客の不安を取り除く助けになるでしょう。
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以上のように、二者択一法を用いる際は、クロージングの前段階、さらに商談の全過程において「顧客目線」「共感と理解」といった姿勢を貫くことが大切です。
商談の最終段階であるクロージングでは、とくに顧客の不安や懸念に配慮するようにしましょう。十分に寄り添うことなく成約にこぎつけたとしても、その後の顧客満足度に負の影響を与えます。
顧客に「購入しなければよかった」と事後で後悔させ、取引の中止といった結果は避けなければなりません。顧客と持続的な関係性が保てるよう、適切に二者択一法を活用する必要があります。
顧客に残る不安を把握したうえで、顧客自身がすっきりと意思決定できる質問をするように心がけましょう。
二者択一法で勝つためのポイント
ここでは、クロージングを通じて顧客との信頼関係を構築し、長期的な視点でプラス効果をもたらすための視点やコツを紹介します。クロージングで二者択一法を活用する際に、念頭において取り入れると効果的です。
ifクローズ法と組み合わせる
ifクローズ法とは「もし~であれば」のように仮定の状況を相手に提示して、その状況における意見や判断をたずねる手法を指します。一方、二者択一法は選択肢を提示して相手の意思決定をサポートする手法です。
2つの手法を組み合わせることで、顧客のニーズをより深く把握しながらクロージングを進められます。
たとえば、営業トークの中で「もし弊社の○○が▢▢の機能をもっていた場合、お客様の業務にどのような影響を与えそうですか?」といった感じでifクローズ法を活用し、その後に「それとも、今ある機能のグレードを上げるほうが御社にとって効率的だとお考えでしょうか?」と二者択一法を重ねます。
ifクローズ法と二者択一法の組み合わせによって、顧客のニーズや優先順位などを明確に把握できます。ただ、両者を組み合わせる際は、会話が複雑になり過ぎないように注意しなければなりません。相手が質問によって混乱しないよう、適切な言葉や選択の分かりやすさを重視して活用しましょう。
信頼関係の構築をイメージする
二者択一話法の活用により、顧客との関係を単なる取引だけでなく、継続的な信頼関係の構築につなげられます。その理由は、クロージングにおける二者択一法を通じて顧客に選択しを与えるのは、彼らに主体性や責任感をもたせる効果があるためです。
選択によって、顧客は自身の要望や優先事項などを再確認できるとともに、営業パーソンに自分の意思を伝えやすくなります。対話を通じて顧客の不安が軽減され自信や前向きな姿勢につながるのは、事後の関係性にもプラスの影響を与えるでしょう。
二者択一法について「選択肢を提供して自社にとって優位な展開へ導くための手法」と捉えるだけでは十分ではありません。顧客との信頼関係づくりにおいて有効な手段として重視する必要があります。顧客のニーズを理解し、適切な選択をサポートする姿勢が長期的な関係性を築く基盤となるのです。
自然な会話を目指す
二者択一話法を活用する際には、自然な会話の流れに無理なく組み込むように努めましょう。対話によって顧客が心地よく、前向きになれるようにする必要があります。
相手の反応を見て、選択肢を提示する内容やタイミングを調整する姿勢も大切です。たとえば、顧客が特定の要素に関心をもっている場合、その内容に関連する二者択一法を用います。
また、タイミングについては、会話の流れにそって自然に取り入れ、相手が選択を迫られているような印象を与えないようにしましょう。無理なプレッシャーを感じているかどうかは、相手の表情や声のトーン、姿勢などから把握します。
言い回しについても配慮が必要です。二者択一法を活用するときには、過度に偏ったり評価したりする内容を避け、バランスのとれた表現を使うことが重要です。顧客が選択しやすい状態を保ち、自然な会話の流れを妨げない対話を意識しましょう。
過度な質問やアプローチは避ける
このような手法を用いても顧客の気持ちが購入や利用に向かないと判断した場合、さらに畳みかけるように働きかけるのは賢明ではありません。今はその時期ではないと捉え、一旦その場を収めましょう。その後も継続的に相談に乗る旨を伝え、実際にタイミングよく連絡を取るようにすれば、顧客は「自分(たち)のことをしっかり考えてくれている」と好感をもってくれます。
信頼関係は成約だけにあるのではなく「継続的なつながりをいかに保てるか」「顧客が相談をもちかけてくれるかどうか」にあると捉え、顧客目線の丁寧な対応を続けていきましょう。
まとめ
クロージングの瞬間に緊張感が生まれるのは、営業の担当者だけでなく顧客自身も同様です。二者択一法は、緊張感やプレッシャーを軽減するために活用しやすい手法といえます。
クロージング場面では、顧客のニーズや感情をさりげない言葉や表情から読み取る能力が重要です。ニーズや気持ちに共感しつつ、二者択一法を用いて互いに納得できる状況を共同で作り上げるイメージをもって対話をおこないます。
本記事の内容を参考にして、実際の商談の場で生かしたり分析したりする活動を通じて二者択一法を習得し、顧客との信頼関係づくりと成功率の向上につなげていきましょう。