商品知識を記述するノートをもっている営業パーソンもいることでしょう。自社商品に関する知識をしっかりもっているのは、ビジネスを成功へ導くうえで重要です。
しかし、なかには「一応メモのようにとっているけど、業績に直結していない」「ノートを作成しても活用しきれていない」といった悩みをもつ人がいるかもしれません。
本記事では、商品知識ノートの重要性やメリット、効率的に成果へつなげられるノートの取り方について紹介します。また、ノートを活かすための留意点について詳しく解説します。
単に「ノートを取ればよい」といった発想ではなく、商品知識ノートを取る目的を認識しながら、効果の上がる取り方を理解できますので、ぜひ通してお読みください。
商品知識とは?
商品知識とは、特定の製品やサービスに関するさまざまな情報や理解を指します。営業パーソンや販売員、製造業者、マーケティング担当者など、さまざまな立場で重要です。
重要性
商品知識の重要性として、以下の4点が挙げられます。
- 商品やサービスの販売促進
- 顧客対応の質を向上
- アイデアの創出
- 品質の管理
まず、商品知識は販売促進に直結します。製品やサービスに関する正しく深い理解は、顧客への適切な情報提供を可能にし、購買意欲を高めることにつながります。
また、商品知識は顧客に対する丁寧な対応が可能となります。知識豊富な営業パーソンは、顧客からどのような質問をされても適切に応えられるため、信頼感をもってもらいやすくなるでしょう。
商品知識は、アイデアの創出にも役立ちます。知識が豊かになると、ますます新たな情報を得ようと努めるようになり、おのずとアイデアが生まれやすくなります。市場のトレンドや競合他社の状況を把握し、新しい戦略やアプローチを考え出すことも可能になります。
品質管理においても、商品知識は必要です。製品の品質における課題を早期に発見し、迅速に解決に導けます。より品質の高い製品を生み出し、企業の業績向上に貢献できるでしょう。
商品知識の豊富な営業パーソンは各場面で適切に対応できる人材であり、顧客や同僚からも信用してもらえます。仕事にやりがいを感じたり、より効果的な手法を考案したりするなど、ポジティブな姿勢につながります。
種類
商品知識は、ビジネス全体にわたって不可欠な要素であり、営業業務と企業の成長に影響を与えます。ここでは、商品知識に含まれる「種類」について解説します。知識の種類として考えられるのは、以下の3点です。
- 商品やサービスの詳細な情報
- 市場動向や競合、顧客情報
- 商品やサービスの扱いに関する情報
たとえば、製品の素材に使われている素材に関する知識をもっていることが大切です。製品の特長や用途などを正しく把握し、顧客からの質問があれば迅速に応えられなければなりません。
自社製品だけでなく、他社製品の知識や顧客ニーズに関する情報も必要です。加えて、市場の動向を適切に把握しながら、常時更新する姿勢が求められます。その理由は、現代は市場や顧客ニーズの変動が著しく、昨年の流れが現在まで続いているとは限らないためです。
製品の基本的な使い方やトラブル時の対処法を熟知しておけば、とっさの対応もスムーズに行えます。営業パーソンであっても、製品の仕組みや操作手順など基本的な知識はしっかり身につけておきたいところです。
以上のように「商品知識」は、多岐にわたって重要な要素となります。すべてを頭のなかに入れてすばやく対応するには難しい場合もあるでしょう。そのときこそ、商品知識ノートが役に立ちます。
商品知識をノートで記録する理由5つ
商品知識をノートで記録する理由として、本記事では以下のとおり5つ取り上げます。
- アウトプットで記憶を助ける
- 聞き方が上手くなる
- 復習や活用が容易になる
- 顧客から信頼される
- スキル向上と自信につながる
それぞれ詳しく解説します。
アウトプットで記憶を助ける
他者の話を覚えておきたい場合にノートを取るのは、通常「インプット」といわれます。しかし、インプットで終わり…となれば、記憶として残りにくいでしょう。営業パーソンとして商品知識ノートを取る場合は「アウトプット」を意識することが重要です。
エビングハウスの忘却曲線によれば、人間は覚えた瞬間から「忘れ始める」そうです。たった20分で覚えたことを約4割忘れているといわれます。しかし、その後は、覚えたことを「ゆっくりと」忘れていきます。
ノートを取っていなければ話の内容を永遠に抽出できず、単に「話を聞いた」といった記憶が残るだけでしょう。一方、商品知識をストックするためにノートを取るとすれば、のちに復習が可能となります。製品の仕様を記憶するのに10分かかったとしても、1時間後に復習すれば5分程度で覚えられます。
つまり、ノートを取るのは復習、つまりインプットした記憶を自身の頭のなかから再度「アウトプット」するためにあるのです。この点を理解しておくと、商品知識ノートを単にメモとするのではなく、「復習するためのノート」といった見方に変換できます。
聞き方が上手くなる
アウトプットのためのノートといった考え方で商品知識ノートを活用していくうちに、聞き方も上手になります。復習や長期的な記憶保持に役立てたいと思えば、いざ振り返る際に「見やすく分かりやすいノード作成」を目指すでしょう。
このような考え方は、相手の話を聞く態度や姿勢にも影響を与えます。たとえば、営業パーソンとして次のような疑問や質問などが生まれる可能性があります。
- 相手から何を聞き出してストックしていくのか?
- 顧客はどの点に不安をもち、自社に何を求めているのか?
- 改善の糸口やキーワードを聞けないだろうか?
自分のノートにとどめておきたい内容を聞けるようになり、相手に質問する力を向上させられるでしょう。また、事前にノートに質問や重要事項を書き留め、積極的に顧客にたずねたりアプローチをしたりすることも可能です。聞き方と同時に、商品知識ノートの取り方も上達します。
復習や活用が容易になる
一回で覚えられない内容を定期的に見直す取り組みを通じて「より見やすく分かりやすいノート作成」を可能にします。
ノートを取る際はもちろん、いつでもどこでも取り出して復習したり記述を加えたりするなど、自分の知識をストックするための行動を取れるようになるでしょう。
たとえば、以下のような要素をノートづくりに取り入れることが考えられます。
- 一目でわかるようにマーカーを入れる
- 顧客にすぐに見せられるような図表やデータを貼る
- インデックスを付けて振り返りやすくする
商品知識ノートを用意してもメモに使うだけでは、復習する際に戸惑うかもしれません。「どこに書いてあるかわからない」状況ではノートを充分に活かしきれません。自分の知識を豊かで確かなものにするために、商品知識ノートの整え方を工夫するのは重要なポイントです。
顧客から信頼される
商品知識ノートを取る理由の4つ目は、顧客からの唐突な質問にも冷静に対応するためです。顧客の質問に対して丁寧に回答できれば、信頼してもらえる確率が高くなります。
ノートに書かれた顧客ニーズや好みが頭に入っていれば、顧客の本音を掘り起こしたり悩みを軽減したりして効果的にアプローチできるでしょう。顧客に対して、よりカスタマイズされた提案を行えます。
商品知識ノートを上手く活用し、プロフェッショナルな対応ができることで、自社商品そのものに対する信頼性も向上します。
スキル向上と自信につながる
商品に関する知識をノートに取る理由の5つ目は、営業パーソン自身に関する内容です。商品知識ノートを活用する過程で営業スキルの向上が促され、成果を感じる場面が増えることで自信につながります。
営業パーソンが商品知識ノートを作成・活用する場合、精神面で以下のようなメリットが期待されます。
- いつでもどこでも確認できる安心感が生まれる
- 記憶の強化を自覚できる
- 学び続ける意欲や好奇心が湧く
- 成果を実感し自信が高まる
ノートに記録された情報を振り返ることで、自分の知識を補ったり強化すべき点を見つけたりすることが可能です。また、新しい情報やトレンドに対する関心も高まり、さらに情報収集や分析を行う姿勢につながります。
この過程で専門知識が深まり、顧客とより良い関係性を築けるようになれば営業パーソンとしての自信に直結します。
商品知識ノートの作成と適切な活用は、自己の成長と業績の向上に好影響を与え、モチベーションアップにつながると考えられます。
以上、お伝えしたように、商品知識ノートの作成・活用は、営業スキルの向上や営業パーソンの意欲などにプラスの効果をもたらします。次章では実際の作成・活用方法について解説します。
商品知識ノートの効率的な取り方
商品知識ノートを取る理由やメリットを念頭に置き、実際のノートづくりに活かしていきましょう。日々の業務がたくさんあるなか、いかに効率的にノートを取るかが重要なポイントです。
以下では、商品知識ノートを作成する方法について詳しく解説します。まずは、ノートの種類を選択する視点について紹介します。
適切なノートの選択
ノートの種類やサイズ、罫線の有無など多様な要素から、最も自分が使いやすく効果を感じやすいノートを選びましょう。たとえば、以下の要素をポイントとして挙げます。
- 種類:綴じノートやリングノート、ルーズリーフなど
- サイズ:B5、A4、A5、A6など
- 罫線:無地、罫線(幅にも考慮)、ドット方眼など
- 紙質:書きやすさや色合い
目的や個人の好み、使い勝手の良さなどを考慮し、自分自身が効率的に使えるノートを選びます。資料の挟み込みを必要とする場合は、小さすぎるサイズは使いにくいと考えます。
なかには、ノートの1ページを縦に三分割してカテゴリーを作るほうが書きやすい人もいるでしょう。あるいは、ページ上部2/3を使うスタイルを基本として、下部1/3は振り返りや追加項目を書く場所として設定する場合もあります。
いずれにしても、商品知識ノートの目的や用途、内容などを吟味して、自身が手持ちで活用しやすい種類を選ぶ必要があります。
分類と整理
商品知識ノートを使う際は、適切な区切りを入れると効果的です。セクションを設定することで、書いたり振り返ったりする際の効率性を高めます。
区切りとは「ページをどう分割するのか」「1テーマ2ページにするのか」「製品別にノートを作るのか」など、意外に多くの要素が含まれます。商品知識ノートを作成して実際に活用を始めても、最初から上手くいくとは限りません。
商品知識ノートを作る際は、たとえば一つの製品を例に挙げ、実際に書いてみることをおすすめします。各内容や順番、課題、追加項目などを予想して「どの配置で書けば、のちに振り返りがしやすいのか」イメージしてみましょう。
また、インデックスを付けて何の商品のページが分かるようにすると、効率的に探し出せます。重要なポイントについては、マーカーを入れたりカラーペンで書き足したりするなどの工夫をして、全体的に分類・整理されたページを作りましょう。
記録と復習を継続的に
ノートは単に記録するためのものではありません。既にお伝えしてきたように「活用する」ことが重要なポイントです。復習しやすく手に取りやすいノートがベストで、自身のバイブルを作成するつもりで取り組む必要があります。
記録しては復習し、改善点を入れてはさらに復習する…。こうしたサイクルを繰り返し、自身の記憶を確かなものにしていきます。忙しい営業パーソンが、いつでもどこでも「ぱっと見てわかる」ようなノートが理想です。
単に文字をつなげて書くのではなく、箇条書きにしたり枠を入れたりして視覚的に理解しやすい作成方法を取ります。また、グラフやチャート、図解など書いたりコピー縮小したものを貼ったりして、目で理解できる要素を入れると効果的です。
効率的なノートの選択や整理、記録、復習などを繰り返すことで、商品知識を効果的に管理し、日々の業務に活かしていきましょう。
商品知識ノートを作成するための注意点
商品知識ノートを効果的に作成し、維持するためにはいくつかのポイントを考慮しなければなりません。ノートを作成する際の注意点として、以下の3点が挙げられます。
- 定期的に情報を更新する
- オンライン情報を活用する
- セキュリティ対策を徹底する
これらのポイントについて順に解説します。
定期的に情報を更新する
商品知識ノートは、最新の情報を反映させるために定期的に更新しましょう。新製品の情報や価格変更、重要なアップデートは取り入れる必要があります。
従来の情報のままでは、顧客に説明をするときに間違った内容を伝えるリスクがあります。また、顧客のニーズや要望、クレームなど課題があれば、その都度丁寧に書き加えましょう。
また、不要になった情報についてはノートから削除するなど、適宜整理を行い、常に見やすいノートにしておくことが重要です。
オンライン情報を活用する
商品知識ノートのなかに書き込めない情報については、関連リンクや参照元を追加します。これによって、顧客から求められたり自身で確かめたりしたいときは、迅速に情報把握ができます。
また、オンライン環境が整っている場合、電子ノートを活用することも可能です。電子ノートとは、手書きしたメモをデジタルデータとして処理するアプリケーションを指します。タッチ画面やスタイラスペンで、紙に書くように文字や図形を書き込めます。データ保存や消去も可能で、機種によってはデータをPCに転送して管理することもできるでしょう。
持ち運びも便利で整理しやすく、半永久的に活用できて秘匿性も高い点などがメリットです。ただ、書き心地やコスト、充電、メンテナンスなど、課題はあります。利用者のなかには「実際、記憶がしづらい」といったマイナスの面も感じるようです。
いずれにしも、アナログ要素とデジタルツールなどをハイブリッド的に回していくスキルも、現代のビジネスパーソンには求められるといえます。
セキュリティ対策を徹底する
商品知識ノートには機密情報が含まれる可能性があるため、情報の取り扱いには十分注意しましょう。
商品知識ノートは活用度が高いアイテムとなり、カバンから出し入れしたりする機会も増えるでしょう。しかし、うっかり商談場所に忘れたり、移動途中で落としたりするようなことがあれば、セキュリティ上、大変な問題となります。
顧客情報や企業秘密などの資料添付や記述を避けるなど、取扱いには細心の注意を払いましょう。
まとめ
商品知識ノートは、製品に関する情報を正しく把握し記憶に残すうえで重要な役割を果たします。知識を定着させ顧客に適切な情報や回答を伝えることは、信頼関係の構築に欠かせない要素です。
ノートを有効に活用し、商談場面で説得力のあるアプローチが可能になれば、成果につながるでしょう。その過程で得た自信がさらに意欲を高め、正のスパイラルが生まれます。
今回紹介したノートの取り方を参考にしながら、人まねではない、自分が扱いやすく愛着がもてるようなノートを作成してみてください。なかなか納得のできないものになるかもしれませんが、改善点が明確になれば2冊目以降に取り方を変更すればよいのです。まずはやってみることが大切です。
自分の商品知識ノートが増えていくのは「目に見える努力」として自信につながります。自身のモチベーションもさらに高めていけるでしょう。