営業パーソンのなかには「営業は他業種や職場に役立つのだろうか」と疑問に思っている方がいるかもしれません。現在は営業職に尽力できていても、いざというときに営業スキルを活かせるのか知っておきたいでしょう。
転職の際は、営業職として「何のスキルをどのくらい身につけているのか」が重要なポイントとなります。
この記事では、営業スキルを転職でどのように活かせるか、どのスキルが重要かを探ります。営業職からの転職において知っておくべきポイントや、活かせる職種についても解説します。自己理解を深めてキャリアアップする際の参考にしてみてください。
営業職は転職に向いている
営業職で培ったスキルが転職においてどれほどの価値があるのかを確認しましょう。結論をいえば、営業の経験は転職に向いています。以下に、転職が可能である理由を紹介します。
- 営業職の経験やスキルが広範で、他業種にも適用可能であるため
- 営業経験者は顧客との関係構築の経験があり、市場の動向についても見識があるため
- 目標達成や成果の可視化に慣れており、即戦力としての評価が高まるため
営業職で培った人間関係の構築やチームワークも、新しい職場での適応力を高め、成功への道を切り拓く要素となります。営業職の経験は転職において有益であり、広い視野で新たなキャリアを築くのに適しているのです。
転職でアピールできる!基本の営業スキル6選
転職の際は、これまでの実績に加えてアピールしたい営業スキルがあります。ここで紹介する6つの力は営業職を通じて養える力です。それぞれについて詳しく解説します。
徹底した顧客目線
営業職は顧客にもっとも近い存在であり、顧客のニーズや反応をリアルに把握することが可能です。つまり、徹底した顧客目線を育成しやすい職業と考えられます。
営業職で培った「顧客目線」は、職種や役職が変わったとしても重要な要素です。たとえば開発者や企画スタッフになるとしても、営業職の経験が活かされます。市場やユーザーのニーズを的確に捉えながら、製品に改善を加えたり新たな企画を考案したりする際に効果を発揮します。
コミュニケーション力
営業職は顧客と直接話す機会が多い職業です。たとえば、以下のようなコミュニケーション力が身につきます。
- 顧客の話にしっかり耳を傾ける
- 顧客の話を聞きながらニーズを把握する
- ニーズにもとづいて最適な商品やサービスを案内する
- 顧客の欲求を満たしたり刺激を与えたりするフレーズを用いる
- 顧客の本音を引き出すために適切な質問をおこなう
- ツールに応じたコミュニケーション法を使う
このように営業職は多様なコミュニケーション法を用いて、スキルアップを図れる仕事です。現在は従来のような対面営業だけでなく、電話やメール、SNSなど多様な媒体が活用されているため、さらにコミュニケーション力を向上させる状況となっています。
営業職で鍛えたコミュニケーション力は異なる属性の相手とも円滑な対話を可能にし、仕事の幅を広げるものと考えられます。
交渉・調整力
営業職は、その仕事の特徴から交渉したり調整したりする力を高められます。たとえば、営業職の以下のような要素は交渉・調整力の向上につながります。
- 一度断られても、顧客分析を通じてニーズにかなう提案内容を作成する
- 相手の性格を考慮しながら(相手が)取り入れやすい状況を考案する
- 顧客や案件の特性に応じて、地道にときには大胆に交渉を続ける
営業経験から得る交渉力は、難しい局面でも柔軟に対応したり調整したりする能力です。仕事の規模が大きくなるほど必要になる力であり、プロジェクトリーダーに抜擢されても営業で培った交渉・調整力を発揮できるでしょう。
プレゼンテーション力
営業職は顧客との商談でプレゼンテーションをおこなうケースが多い仕事です。顧客の興味を引きつけ、自社商品やサービスの特徴を効果的に伝えたり、相手にわかりやすい言葉で表現したりする力は多様な場面で活かされます。
たとえば以下のケースが考えられます。
- 聴衆の興味を引きつけ情報を効果的に伝える(教育現場や企業研修の場面)
- 新商品の発表会や展示会(マーケティングや広報関係)
- 患者さんやクライアントに対して現在の状態や治療法などを説明する(医療やカウンセリングの現場)
このように、営業で培った経験(プレゼン力や提案スキル)は決して無駄ではありません。営業シーンで顧客におこなうプレゼンテーションは、他業種に活かせる要素を鍛えていると考えられます。
問題解決能力
営業職は問題解決能力を向上させる仕事です。実際の営業では、最初から自社商品やサービスを購入してもらえる確率は低く「断られるのが当たり前」と考えてよいでしょう。
断られた際にすぐにあきらめるのではなく「顧客が本当に求めているものは何か」「提案の仕方を変えて別のやり方を試してみよう」など客観的に判断して、さらに分析を進めたり新たな見方で物事を捉えたりします。
さまざまな分析を通じて改善策を講じ、実行に移す……。つまり目標設定から計画実行、分析など、PDCAサイクルをしっかり回せる力が欠かせません。試行錯誤しながらもアイデアを創出できる柔軟さも必要でしょう。
この過程で育まれた問題解決能力は、予測困難な状況や新たな困難にぶつかっても、柔軟に対応して壁を乗り越える姿勢につながります。
粘り強さ
営業はなかなか成果が見えず、モチベーションを保ちにくい職種ともいえるでしょう。業務を遂行するには、粘り強く、あきらめず、ポジティブな姿勢を保つことが不可欠です。
1回の商談で成約につながることは難しいため「顧客ニーズに応じて戦略を立て実行に移し、さらに改善する」といった取り組みを継続しなければなりません。意気消沈して投げやりになりそうなときは、適宜リフレッシュして気持ちを新たにする工夫も求められます。
モチベーションを保ちながら地道に取り組む姿勢は、どの職業に就いても必要な要素です。
営業職から転職できる職種とその理由
営業職で身につけられる6つのスキルは、営業職以外の仕事にも活用できる能力です。ここでは、営業職の経験やスキルを活かしながら転職可能な職種について詳しく解説します。
企画・管理・事務職
企画・管理・事務職は、営業職で培ったスキルを活かしやすいと考えられます。これらの仕事はどちらかといえば社内対応が多くなりますが、営業で鍛えたコミュニケーション力や調整力などが活かせます。
- 企画:顧客のニーズを把握し、それに合わせた企画を立てる(徹底した顧客目線、コミュニケーション力、問題解決能力)
- 管理:部下の育成や業務の効率化が求められる(コミュニケーション力、交渉・調整力、問題解決能力)
- 事務:業務の効率化や顧客対応が求められる(徹底した顧客目線、コミュニケーション力、問題解決能力)
以上のように、営業スキルは、企画、管理、事務の仕事においても有効なスキルです。転職活動においては、提示したスキルをアピールすることが大切です。
サービス業:販売・接客職
顧客と直接接する機会の多いサービス業は、まさに営業職の経験やスキルが活かされる仕事です。営業で培った顧客志向の発想力や提案力が、サービスや販売において他者と差をつける要因となります。
また、営業職においては顧客との信頼関係を築くことが求められます。同様にサービス・販売・接客職においても直接顧客と接する機会が多いため、信頼関係の構築に関わるスキルは非常に重要です。一緒に働く仲間とのコミュニケーションを大切にすることも、店内の雰囲気をより良くするためには欠かせません。
以上のように、営業職で鍛えたスキルは、サービス業全般で活かされることが多いと考えられます。
技術系:ITエンジニア・Webデザイナー
営業職から転職する場合、ITエンジニアやWebデザイナーに就くケースも挙げられます。就活や転職で人気があり専門性の高い職種ですが、営業で身につけた考え方やスキルがプロジェクトの推進や開発において役立ちます。
たとえば、営業職の「課題解決力」や「粘り強さ」は、ITの仕事においても役立つでしょう。課題解決力は、システムやデザインの問題を解決するための分析力や判断力に関連しています。粘り強さは、長期的なプロジェクトにおいて最後まで諦めずに取り組む力として重宝がられるでしょう。
顧客のニーズに応じたコンテンツづくりが必要であるため、顧客目線でのコミュニケーション力や調整力も不可欠です。
営業パーソンのなかにはITツールを駆使しながら営業活動をおこなっている人々も少なくありません。その過程で、「もっと自分だったら扱いやすくデザインできるのに」と感じる経験のある人は、転職先としてIT業界を選ぶ可能性もあるでしょう。
金融・不動産
営業で培ったコミュニケーション力が、金融や不動産の取引における信頼構築に活かせます。営業の経験から得たビジネスに対する洞察や分析が、金融商品や不動産の価値を評価する際に有利に働くでしょう。
また、一連の営業業務を通じて「市場や顧客情報を把握する力」や「客観的データをもとにして分析する力」も強みとなります。金融・不動産業界における財務などの分析と組み合わさり、顧客に適した提案ができる可能性が高まります。
教育業界:塾講師・教師
営業職を通じて「相手に必要な知識や情報を教えること」にやりがいを感じる人も少なくないでしょう。そうした方々は教育業界に転職することも考えられます。
教育業界への転職は、教育に対する熱意やコミュニケーション力などが求められます。上司や同僚、保護者との対応で交渉や調整力、さらに子どもの成長を長い目でサポートする粘り強さも重要な要素です。
営業職として得たさまざまな知識や技術を伝えるのは、子どもたちに大変有益です。その理由は、多様な価値観や考え方を伝える機会となるためです。「教えたい」気持ちの強い営業職の方は、教育業界への転職も考えられます。
転職を成功させるには自己分析と事前調査
営業職の方は自分が気づいていなくても、さまざまなスキルを身につけています。「営業をやっていても役に立たないのでは」思う必要はありません。
営業職からキャリアチェンジを考える際に「とにかく辞めたい、転職したい」といったスタンスでは失敗する可能性があります。事前に、より正確な自己分析と事前調査がより良い転職のポイントとなります。
ここでは、転職を成功させるために必要なポイントとして「自己分析」と「事前調査」の2点について詳しく解説します。
自己分析のステップ
営業で鍛えたコミュニケーション力や交渉力など、自分のスキルを再確認してみましょう。洗いざらいリストアップすることが重要です。自分の強みや弱み、興味、価値観など細かな情報をすべて可視化しましょう。
そのうえで転職先として考えている業界や職種が、自身の目的やニーズと合致しているか考察します。自分の強みがどのような職種でどう生かせるのかも検討しましょう。この際、お金に関する価値観についても考慮します。
その理由は、転職して職場の雰囲気や仕事内容が自分に合っていたとしても、給与が大幅に下がってモチベーションに影響してしまう可能性があるためです。「やっぱりお金は大事だなあ……、前のほうがゆとりがあって良かったかも」と後悔するのは避けなければなりません。
今の仕事よりも金銭的、待遇的に良いのか客観的に検討することは重要なポイントです。自身の価値観と徹底的に照らし合わせて、悔いのない転職をめざしましょう。
事前調査のポイント
転職先の市場動向やトレンドをリサーチし、求められるスキルや資格を確認することは非常に大切です。転職先の求人情報を分析し、どの企業が自分のスキルや志向に合っているかを検証しましょう。
同じ職種や業界に転職成功者の情報を仕入れたり、可能であれば直接会って話を聞いたりします。その際、成功のポイントや注意すべきポイントを把握するのは重要です。
場合によっては、転職先で必須とされるスキルや資格を取得するためのトレーニングを検討することも考えられます。自分ひとりで分析したい判断したりするのが難しい場合は、転職エージェントに頼ることも考慮しましょう。
まとめ
営業職からの転職では、営業スキルや実績が他の職種でも高く評価されます。営業で培った、顧客目線の対応やコミュニケーション力、交渉力などは転職先でポジティブに受け止められるでしょう。
営業スキルは新たな環境での人間関係を構築したり、プロジェクトを円滑に進めたりするうえで有益です。記事で紹介したように、さまざまな職種において活用できます。
ただし、転職を成功させるには自己分析と事前調査が不可欠です。自分の価値観やスキルを正確に把握し、転職先の市場動向や求められるスキルをリサーチします。今の時点で転職を考えている方は、本記事を参考にして最適な職場を見つけ、生活と仕事の充実度を上げていきましょう。