【オンライン商談】メリットの前に知っておきたいデメリットと注意点

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今回はオンライン商談について解説します。オンライン商談とは、インターネットを利用したWeb会議システムでおこなう商談です。増加のきっかけは新型コロナウイルス感染予防ですが、時間や場所を選ばないため利用する企業が増えています。

ただ課題があるのも事実。この記事ではまず、オンライン商談のデメリットと注意点をあげます。それを念頭にメリットについて話を進めます。後半では、対面商談とオンライン商談のハイブリッドなスタイルを提案しますので最後までお読みください。

オンライン商談の実態

まずオンライン商談の実態を見ていきましょう。エン・ジャパン株式会社の1,000社対象調査をもとに解説します。

エン・ジャパンが運営する『engage(エンゲージ)』上で、利用企業を対象にした「オンライン商談」に関するアンケートを実施しました(1,056社から回答)。

それによりますと43%がオンライン商談を導入しているそうです。新型コロナウイルス感染拡大を機に導入した企業が多数。コスト削減やスピード化などのメリットを挙げつつ、次のような懸念が明らかにされました。

「通信トラブルのおそれ」「コミュニケーションの難易度」「商談相手との関係構築」などです。つまりオンライン商談の利点を充分に感じられない場合があるということ。次章でデメリットについて解説します。

オンライン商談のデメリット

エン・ジャパンの調査で挙げられた懸念事項を「信頼関係」「意思疎通」「環境整備」の3つの視点にまとめました。

オンライン商談は信頼関係を築きにくい

対面と同じようにオンライン商談でも相手の表情はよく見えます。しぐさもそのまま映し出されます。ただ対面商談と比べれば微妙な表情を読み取りにくく、場の雰囲気を感じにくいのでストレスを抱えるでしょう。

これには「日本人」という要素が多分に入ります。日本はハイコンテクストカルチャーの国。コンテクストとは文脈・脈絡・環境という意味です。つまり”ハイ”コンテクストカルチャーという場合、”わざわざ言わなくても分かる”という概念がある文化をさします。

「察する」「空気を読む」「汲み取る」なども日本特有のものでしょう。それが良いか悪いかはここで省きます。ただオンライン商談で少しでも「信頼関係を築くのは難しいなあ」と感じるのは日本人なら自然のことなのです。

やはり「五感で(人や職場全体の)雰囲気を感じたい」という思いが根底にあるのではないでしょうか。オンライン商談での信頼関係の構築は、日本人特有の感覚をどう生かし解決するかによります。

オンライン商談は商品やサービスの魅力を伝えにくい

パソコン越しに自社商品やサービスを提示するのは可能です。データ保存してある画像や動画をその場で共有できます。ただし現物を手にすることはできません。

「肌触りがよいですよ」「軽くて丈夫です」と何度言っても先方には伝わらないのです。食品ならなおさら無理でしょう。美味しいですと言われても実感できません。一押しの商品を紹介したいのに先方にその魅力を分かってもらえないのは商談としてNGです。

このような理由でオンライン商談に後ろ向きな企業があるのは仕方ないでしょう。エン・ジャパンの調査でそれが分かります。調査では、オンライン商談を導入している業種を紹介しています。

全体では43%でも次の業種では導入が進んでいません。「サービス関連(42%)」「不動産・建設関連(39%)」「流通・小売関連(32%)」「その他業種(25%)」です。

ちなみに導入上位の業種は「広告・出版・マスコミ(88%)」「IT・情報処理・インターネット(83%)」「コンサル(67%)」となります(メーカー・商社・金融も平均以上)。

このように自社の商品やサービスが「何」であるかにより、オンライン商談をメリットに感じるかデメリットに感じるのか変わってくるのです。


オンライン商談は機材や環境整備が双方に必要

対面商談とは異なる準備がオンライン商談では必要になります。まずはパソコン、マイク・モニター・照明などの機材、インターネット通信環境などです。

zoomやSkypeの有料プランや特別な機能をもつシステムやツールを契約すれば、さらにコストがかかります。もともと情報機器に精通している人がオンライン商談を請け負う場合は問題ありませんが、苦手意識をもつ人が使うとなれば社内教員も必要になるでしょう。

また、たとえ社内で「さあオンライン商談をやろう」と意気込んでも、先方が後ろ向きで機材や環境整備が整っていない場合があります。相手がいての商談。これでは費やした時間とコストが無駄に終わります。

このように移動時間も削減できるオンライン商談ですが、機材や環境の整備如何でメリットにもデメリットにもなる点を頭に入れておきましょう。

オンライン商談の注意点

続いてオンライン商談をする場合の注意点をお伝えします。オンライン商談を導入する場合、以下の点に注意して進めるとデメリットを少なくできます。

「自社だけでなく先方の機材や環境整備の状況を把握」すること。

この場合、商談の目的や方向性に関して共有するのが先決です。「オンライン商談は絶対いいから」「弊社では必要機材を購入しシステムを導入しましたから」という理由でどんどん話をすすめるのはよくありません。

商談前から心証や関係を悪くする可能性があります。商談が良好に進み契約成立となるには、前も後も負担をかけたり強要したりしないようにしましょう。

また、先方に合わせてばかりいても互いの発展につながりません。オンライン商談を提案して、たとえば先方から次のような回答をされたとします。

「オンライン商談は手間やコストがかかるからちょっとね…」「面と向かって話した方が商品のよさも伝わるし信用できそう」「名刺交換ができないのも何だか寂しい」

そのとき「オンライン商談がいいからそれでは困ります」と切り捨てるような発言は避けましょう。相手の事情を考えず、上から目線でよくありません。しかも先方がIT化に苦手意識をもっている場合、あなたの一言で追い込まれメンタルを悪くする可能性もあります。

そうならないよう「オンライン化については私たちも協力できます。もしもよろしかったら…」と提案するゆとりが必要です。協力して環境整備にあたれば双方にとってのメリットにつながるでしょう。

オンライン商談のメリット

ここまでオンライン商談のデメリットと注意点についてお伝えしました。いまだに不安を抱く方は少なくないでしょう。本章ではメリットについて解説します。利点や効果が分かればオンライン商談に対する見方も変わるはずです。

オンライン商談で時間やコストの削減

エン・ジャパンの調査ではオンライン商談の利点についても挙げられていました。「新型コロナウイルス感染予防(70%)」「移動・出張等のコスト削減(68%)」「顧客対応のスピード化(32%)」「営業人員の効率化(25%)」です。

感染予防と異動出張等のコスト削減が際立っているのがお分かりでしょう。オンライン商談導入のきっかけが感染予防なのは確かです。結果、遠方の商談で出張として扱われたものがなくなり、時間とコストの削減となりました。

また先方と互いに環境が整備がされれば、対面商談と比べて迅速に対応できます。少ない人員で商談を進められるでしょう。空き時間が生まれ業務そのものにゆとりが生まれると考えられます。


オンライン商談で商談数が増える

場所や移動時間によらず迅速に対応できるオンライン商談。業務効率化や営業人員の削減によってコストも抑えられます。特に「浮いた時間」は商談数の増加につながります

対面商談の場合商談そのものよりも移動に時間がかかるため、一日で回れるのは3~4社が限界。しかし、オンライン商談になれば倍増は無理でも増やせるのは確実です。商談数が増えれば契約率の向上やや売上拡大につながるでしょう。

また、地域内にとどまっていた営業エリアを広げられるのもメリット。全国、あるいは海外との商談が可能になります。自社商品やサービスを世界に広げるチャンスでもあります。

中小企業基盤整備機構の「海外CEO商談会」では、日本企業との連携を希望する海外企業経営者(CEO)と海外展開を目指す日本の中小企業者との商談会を実施しています。この商談会により海外企業とのパートナーシップが生まれた企業も多くあります。


オンライン商談でデータ共有や保存が可能

対面商談では紙媒体の資料が必ず用意されます。オンライン商談では資料をデータ化するのが一般的です。データ化の利点は比較的容易に「共有」できること。紙媒体での「共有」も有効ですが、時間やコストがかかります。

資料のデータ化のメリットは、その場で必要データを引き出せる点でしょう。「以前のデータと比べてみたい」「「あの商品をもう一度確認したい」という依頼に対し即応じられるのもオンラインだからこそ。

また、Web会議ツールを活用すれば音声としてデータ保存ができます。議事録を残す必要がないので大変便利です。紙資料を用意する必要がなければ印刷時間やコストが削減でき、資料の紛失も防げるでしょう。ただし、セキュリティの高いデータ管理は必須です。


オンライン商談と対面商談のハイブリッド化

本章ではデメリット・注意点・メリットの3ポイントを総合的に捉え、オンライン商談と対面商談のハイブリッド化について解説します。それぞれの懸念事項を減らし利点を感じやすくする発想です。

まずオンライン商談における大きな懸案事項は信頼関係づくりです。物質的コストや営業人員の削減、商談数の増加などによる業績向上は、基盤に信頼関係がなければ達成できません。

たとえ自社で業績を伸ばせても、先方が「商品やサービスのよさを本当に分かってもらえているのか」「新たなシステム導入と言われても自社にメリットはない」と思えばオンライン商談は失敗といえます。

信頼関係を構築し、双方の発展につながる商談にするにはどうしたらよいか?オンライン商談のデメリットとして挙げた「商品とサービスの魅力を伝えにくい」「機材や環境整備が大変」を解消すればいいのです。

互いによりよい環境整備で商談をするために、情報交換あるいはITに長けている社員の対面交流をします。自社だけで整備を進めるより、互いの情報やアイデアを持ち寄れば想像以上の環境を整えられるでしょう。

対面交流の中で信頼関係が生まれれば、実際のオンライン商談も円滑に進み契約成立につながります。

また商品やサービスの魅力を伝える点に関しても、概要説明や画像・動画での魅力伝達はオンライン商談で、決め手になる最終判断は対面商談にします。あるいは最初や中途に適宜、オンラインや対面商談を入れ込むのもよいでしょう。

業種によってオンライン商談を大きく価値づけられるものと対面商談の方がよいものがあります。建築関連も低い業種のひとつです。ただ価格も実物も大きな商品・サービスで対面による信頼関係づくりを基盤にしないと顧客とのトラブルのもとになります。

逆にIT企業のようにその分野に精通している業種であっても対面商談をゼロにするのは企業の発展にとってもマイナスです。前述したように日本はハイコンテクストカルチャー。場の空気を読めるのは感性とつながります。

実際に会って話し、アイスブレイクでふとアイデアが浮かぶ…そこには人間のもつ感性や創造性が働いています。つまり雑多であれ対面商談を取り入れた方がクリエイティブに事業を拡大できるのです。

まとめ

今回はオンラン商談のメリットより先にデメリットと注意点から話を進めました。

オンライン商談のメリットをより感じるようにするには、デメリットである「信頼関係づくりの難しさ」「商品やサービスの魅力の伝えにくさ」「機材や環境整備の難しさ」を改善する必要があります。

ただオンライン商談の「時間やコストの削減」「商談数の増加」「資料データの共有」というメリットを共有できればデメリットの解決方法が見えてくるでしょう。

信頼関係は「自社だけ先をいく」という発想からは作られません。Win&Winは迎合でなく協調姿勢からです。めざす企業像や商談の目的を念頭におきながら、独自の商談スタイルを構築してみてはいかがでしょうか。

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