社会人になれば応接室での商談を経験するでしょう。オンライン商談だけでは信頼関係の構築が難しいため、顔合わせや契約時には対面商談を選択する場合があります。応接室に通されて右往左往したり、来客に非常識な席次を勧めたりするのは絶対に避けたいですね。
そこで今回は、席次(どこに誰が座るかの順番)の大切さと席次の基本ルールをお伝えします。「応接室の席次が分かりにくい場合はどうしたらいい?」「顧客が迷わないような椅子の配置はあるの?」など席次に関する質問にお答えします。
この記事を読めば、席次の常識が分かり対応もスムーズにできるでしょう。あなたが接待する場合、される場合をイメージしてお読みください。
席次を知らないとヤバい理由
常識やマナーをあらかじめて知っておけば、恥をかく・恥をかかせる失態を回避できます。席次も同じです。自分が応接室に通されたり来客を迎えたりする際、席次を間違えたらどうでしょう。
つまり、席次を知らないとヤバい理由は次のようになります。
・社会人としての常識やマナーを疑われる。
・間違えた席を案内すれば客人に対する敬意を疑われる。
・相手の心証を悪くし商談の結果に影響を与える。
若いうちは上司や先輩に教えてもらえるでしょう。しかし、頼り切っていたら自分が教える側になったとき困ります。一人で商談に対応しなければいけない状況もあるでしょう。
場数を踏めば分かってきますが、あらかじめ基本ルールは覚えておきたいものです。その方がスマートな社会人として信頼を得られます。次の章で席次のルールを確認しましょう。
席次の基本ルールはまずこれ!
実は応接室の座り方、席次の基本ルールはたった一つ!「出入口から遠い席が上座、近い席が下座」。これを頭に入れておきましょう。
上座とは目上や年長者が座る場所で、下座は立場や年齢が下の人が座る場所です。なぜこのような順番で座るのでしょうか。理由を考える際、和室をイメージしてください。
和室には、奥の床の間に掛け軸や飾り棚があります。床の間は奈良時代に始まったとされ、身分の高い人が座る場所だったといいます。また床(とこ)は「とこしえ」(永遠)の意味も含まれるそうです。
応接室にもちろん床の間はありません。ただし歴史的背景をイメージすればお分かりでしょう。つまり出入口から遠い上座に客人を招き入れるのが礼儀であり、相手に対する敬意を示すことになるのです。
実際、出入口に近い席ですと、人の行き来があり落ち着きません。廊下の気配も気になるでしょう。席次の基本ルール「出入口から遠い席が上座、近い席が下座」は来客が心地よく過ごしてもらうための”おもてなし”なのです。
応接室の座り方:基本4選
「出入口から遠い席が上座、近い席が下座」のルールは確認できましたね。続いて、応接室の座り方について具体的にお伝えします。来客の人数、椅子の種類など4つのポイントで解説します。招く側・招かれる側に限らず、きちんと覚えておきましょう。
応接室の座り方:来客が座るまで待つ
まず応接室に来客を案内したのち、あなたが先に座って話し始めるのはNGです。客が座ってから自分が座るようにしましょう。
応接室の間取りや椅子の種類・置き方によっては、混乱する来客がいるかもしれません。相手が初めて訪問し大きな商談を抱えていたら、緊張から焦ってしまう場合もあります。
もしも来客が席次に悩んで座れない場合は「どうぞ」とさりげなく促しましょう。それも接客マナーの一つです。ほんのささいな言動ですが来客に安心感を持たせます。逆の立場だったらうれしいですよね。場の雰囲気が和めば仕事の話もうまくいくはずです。
応接室の座り方:来客に奥の椅子
さて、来客に「どうぞ」と案内する場合、出入口から遠い奥の席を勧めましょう。その際、年齢や役職は関係ありません。来客が新卒社員であっても大切な「顧客」です。必ず上座を案内します。
来客が複数で訪問した場合も同じです。2人でしたら役職が上の方が一番奥、次の方が二番目という順番になります(3人でしたら長椅子の奥から上司、真ん中、手前の順番です)。
自分が来客として伺うときも、この順番を覚えておきましょう。間取りや椅子の種類などで混乱しそうな場合は、出入り口近くで待っているのも一つの対応策です。上司が同伴している場合は、奥の席を勧めて先に座ってもらい、自分はあとで……を心がけましょう。
応接室の座り方:来客に長椅子
上座・下座を意識して座るのが基本ですが、椅子の種類も考慮します。来客に案内する椅子は、一人掛けより長椅子の方が一般的です。
そのため上座方向(奥側)に長椅子を置いた方が混乱を招きません。しかし、間取りや調度品・生花が飾られている場所によっては、出入口近くに長椅子を置く場合があります。
もし、来客が座る椅子に悩んでいるようならすかさず、長椅子に案内するようにしましょう。逆にあなたが訪問先で席次に迷うときは、程よい場所で待てば促されます。
応接室の座り方:来客に景色や絵を見せる
来客に上座は常識ですが、応接室の奥ではなく出入口に近い席を案内される場合があります。例えば、庭の景色や生け花・絵画などが見える席です。これは「素敵な○○が見える場所が上座」のルールに基づきます。
もしあなたが初めて相手方に訪問したり、重要な案件を提示したりする場合は緊張するでしょう。その際、緑豊かな木々や素晴らしい芸術品を目にしたら、気持ちのうえでクッションになりますね。
来客へのおもてなしは、こうした場づくりです。基本ルールとは若干外れても、来客に心地よさを提供する視点を重視しましょう。景色や絵画のよく見える場所が出入口であれば、長椅子をいわゆる下座側に置くと混乱しません。
ただ、来客が怪訝そうな表情を見せたら(あるいは見せる前に)さりげなく伝えるといいです。「今の季節、緑が一番きれいです。ぜひ見ていただきたくこちらにどうぞ……」と一言添えましょう。
なお「素敵な○○が見える場所が上座」のルールは、応接室以外での会場(料亭やレストラン)でも使えます。取引先と食事を介して接待をする機会のある方も覚えておきましょう。
応接室の座り方:例外3選
さて、ここまで応接室の座り方と基本ルールについてお伝えしました。この章では、さらに詳しく細かな情報をお伝えします。
座り方の基本が分かっているとはいえ、ときに思わぬ状況が待っています。その際あわてないよう、例外編として「もし○○の場合どうする?」に答える内容です。
大人数で椅子が足りない場合
事前に電話連絡で「3人」と聞いていたとします。しかし実際の来客は4人だったとしたら焦りますよね。「前もって教えてくれたらよかったのに」「急に変更があったら連絡すべきだ」と思ってしまうでしょう。
対応次第でよくも悪くもなります。急遽、隣の会議室に変えますか?機器や清掃具合によっては難しいでしょう。最低限、近くの部屋のパイプ椅子をもってくるなど早めの対応をしたいものです。
また、そういう場合があるのを予想して、あらかじめ椅子を用意しておけば慌てずにすみます。細かな気遣いですが、心とモノの準備は抜かりなくが鉄則です。
長椅子に来客が3名座る場合
3名の場合、奥から順番に「立場や年齢が上の方」に座ってもらいます。ただし、例外があります。
例えば、社長と上司とあなたの3人で取引先に伺う場合を考えましょう。案件の説明をあなたが中心でおこなうと想定してください。
基本ルールに従えば、席次は長椅子の奥から社長、上司が真ん中で、あなたが手前となります。ただ、それでは全体に伝わりにくいでしょう。相手方の上司にあたる方は一番遠くなります。誰か一人でも「聞こえない見えない」状況を作らない方がいいです。この場合はあなたが真ん中で説明します。
また、自社に3人の来客があり、応接室に案内したとします。上司とあなたの二人が対応する場合、次のような状況も考えられるでしょう。
来客の体格や事情によっては「3人掛けの椅子に3人」は窮屈です。来客が資料を広げれば話しづらいでしょうし、こちら側も聞きづらくなります。その場合、3人のうち立場や年齢が下の方にあなたの席を譲りましょう。あなたは、用意しておいたパイプ椅子に座ります。
応接室に長椅子がない場合
応接室の一部には長椅子を置かず、すべて1人掛けの席となっているかもしれません。上座に3脚、下座に3脚の場合は、上座・下座は、会議室で行う場合と同じです。
つまり、来客のうち立場が一番上の方が上座側の真ん中、次の方が奥側の席、3人目の方が手前の席となります。自社側も同様です。
応接室の座り方に関する注意点
ここまで応接室の座り方基本ルールと例外編をそれぞれ解説しました。この章では知っておいた方がよい注意点をお伝えします。
応接室で椅子に座るタイミング
席次が分かっていても、その際の所作で心証をよくも悪くもします。タイミングもその一つ。例えば、あなたが取引先に訪問して応接室に通された場合を考えましょう。
通された部屋はルールに基づいて椅子やソファが配置されており、席次は基本ルールで判断つきます。そうであっても上座の長椅子にすぐに腰掛けるのはやめましょう。
確かにあなたが来客ですから、上座の長椅子は合っています。しかし自分が礼儀ある行動をとっているつもりでも「無礼で横柄」と評価されるかもしれません。
あるいは、取引先の方が「こちらの花は弊社社員が今朝生けてくれたものです…」と紹介しているのに、座ったままの姿勢で聞くのは失礼にあたります。
自分が客の立場でも相手に対する気遣いは忘れないでください。ちょっとした気遣いが大きな信頼を得る可能性があります。
応接室で椅子から立つタイミング
取引先との商談もすべて滞りなく進みました。ほっとしたのかお茶を飲みながら仕事以外の話をし始めたとします。ところが、あなたは次の会議の準備が心配で、思わず「それでは…」と席を立ったとしましょう。
相手方はどう感じるでしょうか。「早く帰れということだな」と一気に冷めてしまいます。せっかくそれまで良い雰囲気だったのに、後味の悪い商談となるでしょう。
そうならないよう話を聞きつつ相手の気持ちを考えながらのタイミングを図ります。間違っても「会議がありますので」と言わないように。
「本日はいい天気ですね。このあとのご予定は?」と相手に返してさりげなく締めへと導くのもいいでしょう。あらかじめ終了予定時刻を伝えておくのも、実は相手の時間を奪わない策といえます。
策といえば冷たい印象ですが、すべて「相手への敬意と思いやり」が基盤にあります。上司から教わったり経験を多く重ねたりして、独自の接待スキルや言葉かけのノウハウを磨いていきましょう。
非常識や失敗の対処法
ここでは「万が一」の場合をイメージしてお伝えします。自分が非常識であるのは避けたいところですが、相手の非常識な言動もビジネスにはつきものです。
その際「なんて非常識な人なんだ」「この会社とは取引したくない」と思うかもしれません。しかし態度に表さないよう注意しましょう。例えば稀な例でしょうが、わざと非常識な言動をする方もいます。
相手の出方を伺うためです。想定外の状況になっても「臨機応変に対処するか」「柔軟に対応できるか」「何があっても顧客を大事にできるか」試されていると思いましょう。
また、若手社員がどんどん先に座ってしまって、上司に注意を受けたとします。緊張が走りますが、冷静に優しくフォローすれば場の雰囲気は変わります。
立場が上の方だけでなく「誰に対しても敬意と思いやりの心を忘れずに」は重要です。応接室の座り方や諸々の所作にその視点を入れるようにしましょう。
まとめ:常識ある応接室の座り方で信頼を!
やはり常識ある人は信頼されます。基本中の基本です。常識とは「相手に敬意や思いやり」を表すもの。応接室に案内された相手が心地よく過ごせたら仕事にも好影響を与えるでしょう。
最初から自分らしさを求めず、まずは基本ルールや例外編・注意点を念頭にきちんと実践していきましょう。そうすれば体にしみ込み、いつでもどこでも常識ある言動ができるようになります。その経験から自分らしい接待方法も生まれてきます。
ぜひこの記事を参考に、応接室の座り方とおもてなしをマスターしていきましょう。