社内・社外問わず、プレゼンテーション(以下プレゼン)をする機会は多いでしょう。しかし、もともと人前で話すのが苦手な方・慣れていない方は当然緊張します。かといって仕事となれば逃げられません。
今回はそのような方を対象にプレゼン力の鍛え方をお伝えします。この記事を通して読めば、日ごろからできる方法も学べるでしょう。
具体的な鍛え方を解説する前に「プレゼンの目的と重要性」「いいプレゼンの条件」について確認します。方法を先に知りたい場合は飛ばして読んでも構いません。ぜひ最後までお読みください。
プレゼンの目的と重要性
なぜプレゼンをするのか?それは「自分が伝えたい内容を相手に理解してもらう」ためです。コミュニケーションを円滑に進めるためのツールといえます。
時間をかけて説明すれば「話の内容」は伝わるでしょう。ただ、いくら丁寧さを心がけても、相手にとって分かりにくければ目的は達成できません。疲労感だけ残すなら関係づくりに影響を与えます。
つまりプレゼンの重要性は、相手の理解を促進し良好な関係づくりにつなげる点にあります。会社や部署、あなた自身の信頼性を保証する意味も含まれるでしょう。
例えば次のような場面で、何のために何を伝えるのかを確かめます。
・顧客との商談…商品の購入・取引へつなげるために商品のよさを十分にアピールできるか
・社内の報連相…働きやすい環境づくりのために考案した企画の共有・理解・賛成を得られるか
・銀行との商談…新商品を作るために必要な資金を調達してもらえるか
プレゼンの目的と重要性を常に認識しながら、準備・作成・発表へとつなげていきます。ゴールのカギを握るのはプレゼン力なのです。
いいプレゼンの条件3つ
いいプレゼンは「相手の心が動く」ものです。ここでは相手の心を動かす条件を3つお伝えします。
・ワクワク感…面白そう、楽しそう、うまくいきそう、利益がありそう、発展につながりそう
・自分も○○したい…実際にやってみたい、使ってみたい、行動したい、一緒に挑戦したい
・誰かに伝えたい…他の人にも教えたい、家族や友人にも勧めたい、できるだけ多くの人に広めたい
心が動くのは「~したい」と思うときです。プラス的な欲・希望の感情はおのずと「行動」へとつなががるでしょう。つまり「○○を試す・買う・使う」などです。実際の行動につなげられるのが、いいプレゼンといえます。
プレゼン力を鍛えるための基本的な方法
苦手に感じるプレゼンを何とかしたいと思っている方へ、この章では基本的な方法を4つお伝えします。レベルを上げる前の外せない基本。しっかり押さえて実践すれば自信につながるはずです。
プレゼンの目的や意図を明確に
最初にお伝えしたように、まずプレゼンの目的を確かめます。飛行機で旅行するにも、目的地がはっきりしなければ当然着地できません。目的地が定まればルートも決まります。
機長が離陸前に挨拶しますが、おおよそ次のような内容です。「皆さまこんにちは。機長の○○です。本日は◇◇航空123便ロンドン行きをご利用いただきありがとうございます。本日のフライトは約10時間、スムーズな飛行を予定しております……」
乗客は行き先が分かっているため、機長の挨拶を特別気に留めないでしょう。しかしプレゼンの場合、冒頭部分で不安になる可能性はあります。「何を伝えたいのかはっきり伝わってこないなあ」という具合です。
プレゼンの冒頭挨拶も機長のアナウンスと同じ。話の目的や結論・時間などを先に話せば相手は安心します。ゴールがはっきりと見えるからです。
明確な目的や「○○のよさを伝えたい」と強い意図が働くと、あれもこれも伝えたくなります。しかし「何を一番に伝えたいのか」をはっきりさせましょう。それには「冒頭で目的と結論を話す」を心がけてください。
プレゼンの原稿づくりはPREP法で
さて目的地がはっきりすればルートも見えてきます。プレゼン準備段階での資料作成はある意味、ルート表。その中の原稿づくりで覚えておくとよい流れがPREP法です。PREP法と話しの組み立て方→”方”というより”型”と捉えましょう。
・Point:結論や要点を伝える
・Reason:その理由を伝える(解説)
・Example:事例や具体例を伝える
・Point:再度、結論を伝える
自分が伝えたいことを相手に理解してもらう…そのためにはシンプルで分かりやすいのが一番です。その点PREP法はおすすめです。
事務的に言葉を連ねるだけでなく「相手の心を動かす」点は覚えておきましょう。たとえば「商品の魅力を訴える(Point)」「顧客ニーズとのマッチング(Reason)」「実際の利用者の声(Example)」「商品の魅力はほんもの(Point)」。
このように聞き手を興味づけ、欲を満たしつつ記憶に残す話の流れなら行動へつながります。ただ、一度にすべてを満たそうとするのは難しいでしょう。まずはPREP法の基本線を大切に原稿づくりをしてください。
プレゼンのための資料は分かりやすく
上記の2つで話の内容をかなり絞れます。目的地とルートの両者そろったところで、実際の資料づくりに入ります。
話を聞くだけでは内容が頭に入らない場合もあります。百聞は一見にしかず。聞いて分からない内容も図や表・グラフを示されただけで理解しやすくなりますね。プレゼン資料は視覚情報を上手に活用しましょう。
例えば「生クリームを七分立て」と聞いて困る方はいます。「つのが立ちきらない感じ」と付け加えられても分かりません。重ねて説明するのは時間の無駄ですし、相手に失礼です。その場合「生クリームの七分立て」の画像や動画を盛り込めば一目瞭然ですね。
このように資料づくりでは、目的を達成するために「何をどう見せたり読んでもらったりするのがよいのか」考えましょう。情報量が多すぎても疲れます。バランス感覚はこの場合も必要です。
プレゼンのために録音・録画で確認を
「目的・話の流れ・資料づくりもばっちり!本番を待つばかり」となる前に一度通してみましょう。自分で話すだけの通し練習はおすすめできません。録音・録画で確かめましょう。
声質や声の高さは、自分で聞くのと異なる場合が多いです。「あれ?なんだか声が低すぎて聞き取りずらいなあ」と感じるかもしれません。あるいは、話すスピードや間の取り方「え~と」「あの~」が気になる場合もあります。
重要なプレゼンほど多人数で確かめ合った方がよいでしょう。自分一人では気づかない点を教えてもらえます。本番前に人に聞いてもらう経験は貴重です。振り返る回数や内容が多ければ自分のプレゼン力を鍛えられるでしょう。
プレゼンをよりよくするための方法
前章では鍛えるための基本的な方法4選をお伝えしました。この章では+αの情報「よりよくするための方法」を補足します。相手の心を動かすノウハウです。ぜひ通してお読みください。
相手の五感を刺激する
自社商品や企画の魅力を相手にしっかり伝えるにはどうしたらよいか?分かりやすさは大事な要素ですが「心に響く瞬間」があればなおいいですね。それには相手の五感を刺激します。
資料づくりの箇所でお伝えしたように、言葉だけでなく視覚情報を入れるのです。単調で冗長な話を長時間聞くと眠くなりますね。
しかし、視覚情報が入ると理解度が高まる方は多いでしょう。人間の知覚は、視覚83%、聴覚11%、嗅覚3.5%、触覚1.5%、味覚は1%といわれます。例えば非常口やトイレの案内に使われるピクトグラム。「見て分かる」典型的な例です。
人によって誤差がありますが、視覚情報が入れば分かりやすくなります。また、知覚割合が低めとはいえ、ほかに聴覚、時に味覚や嗅覚、触覚を意識しましょう。
例えば、食品関係のプレゼンでは味覚・嗅覚は外せません。寝具や衣服では触覚が必須でしょう。プレゼン中にBGMが流れれば興味づけができます。
ただ、網羅し過ぎるのはよくありません。単なる賑やかしで目的や意図から離れる可能性があります。常に「何のために何をどう伝えれば相手の心を動かせるのか」を念頭に準備・作成・発表をしましょう。
いいプレゼンを研究する
プレゼン力をよりよくするには、向上心が欠かせません。例えば「このパワーポイントは分かりやすい」「話し方がうまいなあ」「思わず買ってしまいそう」と思ったプレゼンがあれば研究しましょう。
可能ならご本人から直接レクチャーを受けます。が、いつもそういうわけにはいきません。その場合、以下の視点で確認してみましょう。
・資料(紙媒体やPowerPoint)のタイトルや見出し
・図やグラフの種類やカラー
・言葉の使い方、声の大きさや抑揚のつけ方
・話し手の表情やしぐさ、服装
おそらく「いいなあ」と思う要素は一つではないはずです。探し始めれば多く見つかるでしょう。つまり、好感をもてるプレゼンには細かな要素がいくつも働いているのです。「いいなあ」と思うのは相乗効果!
自分が見つけた要素について同僚と比べればさらに学べます。自分がプレゼンをしなくても鍛える場面はたくさんあると理解しましょう。いいと思ったら「まねる」のも一つの方法です。
たとえ話や比喩を使う
実は今回の記事、たとえ話や比喩を意識して使いました。イメージ化にプラスとなっていれば幸いです!
こんな経験はありませんか?「滑舌よく聞き取りやすくパワーポイントの内容も分かりやすい。でもなんだか眠くなっちゃうんだよなあ」……この場合「たとえ話」や「比喩」を使うと効果的です。
一般的に、分かりやすいけど心に届かないプレゼンは結構あります。「話し方が単調すぎる」「きれいにまとめすぎている」と厳しい見方をすればそうでしょう。「相手の心を動かす」には基本的な方法を使うだけでは足りない場合があります。
しかし「例えば…」「~のような」を少し入れるだけで印象が変わります。「肌が白くなります」よりも「肌が雪のように白く輝きます」といわれると「へえ~っ」と心が動きますね。
視覚にも通用します。例えば生態系を脅かしかねない外来種アルゼンチンアリ(2022年6月6日放送NHKクローズアップ現代)。その退治に企業や自治体が研究を重ねています。
その繁殖力や恐ろしさを伝える場合「多女王性でそれぞれの女王アリは40~60個/日の卵を産むので相当数の数になる」の言葉だけより「例えば2か月で…」と次の画像見せられたらどうでしょう。繁殖力の凄まじさがより伝わりやすくなるはずです。
たとえ話や比喩は、補足情報かもしれませんが、情報を共有し聞き手のイメージを膨らませる役割を果たします。視覚効果も同様です。
日ごろから”相手の心を動かす”
ここまでプレゼン力の鍛え方・磨き方をお伝えしました。プレゼンに限らず日ごろから「相手の心を動かす」視点をもって生活すると多くの示唆が得られます。
職場に、引き込む話し方ができる方はいるでしょう。そうでない方は得意な方の言動を”研究”します。表情やしぐさ・さりげない優しさ・間の取り方など「引き込ませ方」につながる要素を発見できるはず。
プレゼン力の基礎は、相手の心を動かす「相手目線」です。聞き手の話に耳を傾ける。反応をみながら受け答えする。こうしたシンプルなコミュニケーション力を身につけるのが重要です。
それには、日ごろの積み重ねと客観的なアドバイスに耳を傾けるゆとりが必要でしょう。実は学べる要素はいろいろな人・場・状況などたくさんあります。
また、YouTube動画・TEDなどの無料ツールで勉強するのも可能です。笑いをとるタイミングも学べます。「プレゼンそのものだけでなく日常から学ぶ」を習慣化させましょう。
まとめ
相手の心を動かすプレゼンをするには、それなりの努力が必要です。しかし、その過程を楽しめるようになれば必ずプレゼン力を向上させられます。
本来のプレゼンの目的や重要性、いいプレゼンの条件を常に意識しながら改善をしていきましょう。そのために具体的な方法として今回は4点あげました。まず基礎編で鍛え上げます。さらなる向上をめざすための3点も加えました。
いつでもどこでも誰に対しても「心を動かす」姿勢があれば、プレゼンに活かせる要素をたくさん発見できます。しかも実際の職場における人間関係づくりに好影響を与えるでしょう。ぜひこの記事を何回も読んでプレゼン+αの力を磨いてください。