PREP法は、ビジネスの中でよく使われる文章構成法です。PREP法を学び実践すれば、職場や学校などあらゆる場面で、自分が伝えたい内容を相手にしっかり伝えられます。
しかし、PREP法のメリットは分かっても、いざというとき忘れがち。日常で意識し経験を積んでも、気が動転したりストレスを抱えたりすると思うようにできません。
今回は、PREP法のよさや難しさを解説するとともに、とくにプレゼンなどのビジネスシーンで成功させるための秘訣をお伝えします。
PREP法とは?
PREP法とは「結論(Point)→理由(Reason)→具体例(Example)→結論(Point)」の順でおこなう書き方・話し方をさします。頭文字をならべてPREP。
簡単にいえば、小学生で習った「はじめーなかーおわり」の流れ。つまり「なか(ここでは理由と具体例)」を「はじめ」と「おわり」の2つの結論(Point)ではさんでいます。とても分かりやすくシンプルです。
複雑ですと覚えるので精いっぱいで使いこなすまで至りません。緊張しやすい方も経験と練習を積めば少しずつ上達するでしょう。
PREP法のメリット・デメリットとは?
この章ではPREP法のメリット・デメリットを解説します。デメリットの中に改善の視点がありますので、ぜひ通してお読みください。
PREP法のメリットとは?
PREP法の良いところは、話や文章の内容を自分や相手に分かりやすく伝える点にあります。
話している(書いている)うちに「何を伝えたいのか分からなくなった」という経験はありませんか。相手の反応から「つまらなそうだ」「分かってもらえてない」と感じれば焦ります。余計に話が冗長になりますね。
聞き手や読み手の立場でしたら「相手の話をまったく理解できない」と思った経験もあるでしょう。しかし、目的や論点が明確でデータや資料などを提示してくれる話は安心して聴けます。「この言葉いいなあ」と感じる余裕も生まれます。
また、PREP法の流れはとてもシンプル。誰もが取り入れやすいので、経験を積んで自信をもてるようになります。短時間で鍛え上げるのも可能です。「分かりやすい」「分かってもらえた」という感覚は信頼関係の構築につながるでしょう。
PREP法のデメリットとは?
デメリットというより、注意すべき点。それはパターン化しやすい点です。「パターン化ならいいじゃない」と思うかもしれません。しかし、パターンつまり型は誰もがマネしやすいため独自性を出しにくくします。
また、PREP法では工夫の難しさがあります。初めに結論があるため、「いいネタやオチ」が先にバレてしまう場合も。面白みに欠け終わりまで聞いてもらえる可能性が低くなります。
それを回避するには興味づけを図る必要があるでしょう。ただ、型をある程度確かなものにしたら、独自性を出すゆとりが生まれます。工夫次第でさらにレベルを上げるのも可能です。
たとえばプレゼン構想の考え方の一つ、TAPS。この方法を使えばPREP法のパターン化を回避できます。のちにご紹介しますが、その前に基本的な方法を確認しましょう。
PREP法でプレゼンを成功させる方法
ここからは、PREP法でプレゼンを成功させるコツと例文をご紹介します。
PREP法を意識して文章構成
文章構成の際もPREP法の流れを念頭に書きます。構成を覚えたら実践をくり返しましょう。無意識にこなせれば、プレゼンだけでなく日常会話でも使えます。話のうまさ、分かりやすさを自分の武器にできるはず。具体的には次の流れになります。
・結論(Point):まずは自分の伝えたいこと・要点を述べる
・理由(Reason):なぜその結論に至ったのか、理由・根拠を述べる
・具体例(Example):理由に関する具体的な事例やデータを提示する
・結論(Point):最後の結論で相手に印象づける
流れがとてもシンプル。短時間で内容を的確に伝えられます。プレゼンだけでなく、会議の場でも一人ひとりが意識すれば、やたらに長い時間を過ごすことにならないでしょう。
資料作成でもPREP法!
一旦書き上げた原稿をもとに資料作成します。原稿づくりの前に資料作成から入る方もいます。この辺りはそれぞれやりやすい方法でいきましょう。いずれにしてもPREP法を原稿や資料にとことん入れ込むつもりで準備します。
準備や仕込みの大半は、原稿づくりと資料作成にあると言えます。しかし資料づくりで注意すべき点は、PREP法のPはまだしもReasonやExplanationの情報を入れ込み過ぎないこと。
パワポのスライドに、つらつらを文章を書き入れているものを見かけます。聞く情報と読む情報が同じで引きつける材がとくに無ければ逆効果です!
また図やグラフを列挙し過ぎるのもおすすめしません。聞き手によっては情報量が多すぎて疲れるだけでしょう。スライド1枚に入れ込む情報は質・量ともに吟味する必要があります。
実際のスピーチでもPREP法!
スピーチで原稿を読み上げるだけでは相手の興味を引きません。また、情報のすべてを伝えられない場合はコンパクトに補足する必要があります。
「何をどのくらい伝えるか」は、プレゼンの目的と照らし合わせましょう。そのためにスピーチの間も「Point(結論)」を頭の隅に置きながら進めます。ポイントはいつでも「結論」。
そして話の一文は「~ので、~だから、~になるのですが」のように次々と文章をつなげないようにします。一文を短く、一文ずつ切る。これを意識すると冗長になりません。
裏付けは自分の経験と数字で
2つの結論に挟まれる「理由(Reason)と具体例(Example)」。目的が明確で思いが強いほど、理由や根拠をたくさん伝えたくなります。このときは「結論につながる裏付け」かどうか確認しましょう。
ただ、裏付け資料があればあるほど悩みますね。そのなかから、取捨選択し「聞き手や読み手の心を引きつける材」を選びます。具体物として画像・グラフ・図などが効果を発揮するでしょう。
また、データや数値は信頼性のあるものを選択します。自身の体験を伝えるのも効力があるでしょう。なぜなら数値は誰もが引き出せますが、体験はその人本人、つまりオリジナルだからです。共感も得られます。
2度目のPで印象付ける
終わりのPoint(結論)は、始めと違う趣向で臨みたいものです。順調にくれば聞き手や読み手はあなたの伝えたいことを分かっているはず。終わりまで聞いてくれた方に感謝を込めて、とっておきの言葉を贈りましょう。
もったいぶって続きがあるような終わり方は良くありません。スッキリしない感を聞き手や読み手に与えます。また「あまりうまくプレゼンできなかったなあ」と思い、最後に言い訳がましく解説を始めるのはナンセンス。
その際は、覚悟を決めてズバリ結論を強調しましょう。「終わり良ければすべて良し」はプレゼンの場合も同様です。
補足:一文は短く
PREP法の文章構成で通して意識したいのは「一文を短く」「過度な修飾や敬語を避ける」です。「~させていただきたいと思います」は「~いたします」「~します」のように言い切りましょう。
「とても大きく」「すごい」という言葉は、根拠となる資料提示に変えます。これらは日ごろから意識できることですね。
PREP法の文章構成【例文3選】
PREP法を意識して準備・練習したプレゼンは分かりやすくなっています。ただ、いきなり大勢の前で発表するのは緊張しますね。本章では、その策として普段から意識したいPREP法の実践をお伝えします。「日常」「面接」「プレゼン」の順で例文を挙げます。
日常編
結論:私は登山が好きです。
理由:自然を目にしながら登っていくと日常を忘れますから。
具体例:仕事やプライベートでいやなことがあっても無心で登れば消えています。登り切った頂上で深呼吸すると自分の血液さえも浄化されるようです。
結論:これからも私の登山好きは止まらないでしょう。この感覚をあなたにも味わってもらいたいなあ。
登山好きをアピールするつもりはなくても「理由や具体例」を入れるだけで、最後の一文は入れなくてもいいほど、聞く人の心を捉えるでしょう。
面接編
「1年の目標(人事部)を話してください」
結論:社内で「ピアサポート制度」の導入を推進します。
理由:とくに若手社員が楽しく働き生きがいを感じられる職場にしたいからです。
具体例:先日○○さんから「今やっている仕事に虚しさを感じる」という話を聞きました。そこで部署内で簡単アンケートをとりました。同じように感じる社員が40%おり、20代に限ると70%もいたのです。
結論:早急に手を打つ必要があります。「一人じゃない」感覚をもち悩みの解決、自信につなげたいです。まずは企画書を完成させたいです。
結論に「ピアサポート制度」と「一人じゃない」の言葉。これが一番伝えたい内容でしょう。そう思う根拠に、実際の経験と数値を入れています。説得力が増し本気度も伝わるでしょう。
プレゼン編
結論:夕方以降の購入をねらった「プチスイーツ」の製造・販売を増やす必要があります。
理由:昨今、夕飯後にスイーツを食べる会社員が増加しました。
具体例:「自分のご褒美」「ストレス緩和」の理由でスーパーやコンビニでスイーツを購入する人がコロナ前より増加(2021年モンテールの調査「スーパー・コンビニ スイーツ白書 2021」より)。
・スーパー・コンビニのスイーツを食べる回数と量は 4 人に 1 人で増加。スイーツを週1以上買う人は 26.5%。特に男性 30 代(42.4%)が最も高い。
・「夕食後」は会社員(43.9%)で特に増加。スイーツの量が 1.5 倍以上に増えた割合は約半数以上。 (スーパー・コンビニで)スイーツに使う金額は平均 202 円、昨年より 7 円アップ。
結論:30代男性社員をターゲットにした「大人の男スイーツ」開発は○○社の業績アップにつながります。
「(夕方以降)プチスイーツ」と「大人の男スイーツ」の結論を、根拠を具体に示して裏付けます。数値が入ればより説得力を増します。
ただ、強調すべき数字がありますね。たとえば「特に男性30代(42.4%)」「”夕食後”の会社員(43.9%)」です。どれも情報(数字)として提示したくなりますが、取捨選択する必要があります。
PREP法をよりよくする方法「TAPS」
PREP法のデメリットとして「パターン化しやすい」「ネタバレやすい」点を挙げました。ただ、このデメリットを解消する方法はあります。たとえば、資料の提示の仕方、始めと終わりの結論の出し方を工夫するなどです。
それに加えて、TAPSというプレゼン構想の考え方をご紹介します。TAPSとは、ストーリー性を意識しながら聞き手や読み手の興味づけや集中度を高める方法です。
■To be: 理想像の共有や明確化
聞き手のもつ「理想像」を明らかにします。「○○のようになりたい」「○○にしたい」の思いを共有するのです。ただ、一方的に話したいことを話す視点ですと、興味づけがうまくいきません。それを避けるには、プレゼン発表者と聞き手が想定するゴールを共有する必要があります。
■As is 現状を知る
ゴールが分かったとしても「今、自分はどこの立ち位置にいるのか」「どれくらいのレベルなのか」分からなければ、何をどうしたらよいのか途方に暮れます。ゴールに向かう方法を一方的に話したとしても心に届きません。他人事に感じるからです。
そうならないよう理想と現状の姿を比べ、そのギャップに気づく・気づかせる作業が重要です。ギャップが大きければ大きいほど印象づけられ「じゃどうすればいいのか」と自分事で考えられるようになります。
■問題(Problem)
理想と現実のギャップを埋めるために、どうすればいいのか。まず、ギャップの要因を探ります。どうして現状はこうなのか、できるだけ実感できるようにしましょう。客観性を持たせるには、PREP法と同様に資料データが必須。具体が見えれば「何をどうすればいいのか」分かります。
■解決策(Solution)
プレゼンの締めで解決案を出します。聞き手側から具体的な解決案が出されるかもしれません。そうなれば、プレゼンは成功したも同然でしょう。あなたが提案したい内容をここでズバリ出します。その解決策がなぜいいのか、端的に理由付けするのもいいでしょう。結論を印象づけられます。
PREP法との違いといえば、理想と現実を明らかにして当事者意識を持たせる点にあります。PREP法はズバッと言い切る形。TAPSの視点は、聞き手の共感と協働意識を引き出します。チーム一丸となって新たなプロジェクトに取り組みたい場合は、TAPSの視点でのプレゼンが効果的です。
加えて、TAPSの視点がPREP法のデメリットの解消につながります。インパクトとストーリー性。この2つで、自分事として捉えられます。課題を認識できれば仕事に向かうモチベーションも変わるでしょう。共感モードが新たな信頼関係づくりにもなります。
まとめ
プレゼンを成功させるには、準備段階からPREP法の視点を用います。実際の発表の場でのスピーチでもPREP法が頭にあれば、たとえ焦ったり緊張したりしても、目的や結論に添って話ができるでしょう。
ただ、それにはプレゼンの準備や練習に加えて、日常から意識するのがおすすめ。休憩時間の何気ない会話はまったく自由で構いませんが、同僚や上司への報連相・会議・面接・顧客との商談など、あらゆる場面でPREP法を意識します。
短時間で要点を得た話ができ、相手の興味や共感を引き寄せられます。PREP法をマスターしTAPSのような手法を用いれば、さらにプレゼンの力を伸ばせるでしょう。ぜひ今回の記事や例文を参考に、日々の実践に活かしてみてください。