「第三者話法」もビジネスシーンでよく使われています。「みなさん○○してますよ」「あの有名な○○さんにもご愛用の…」など、自分以外の第三者の話を入れるトーク術。思わず「えっそうなの?だったら…」となりますよね。
今回は「第三者話法」の具体を分かりやすく解説します。相手のイメージを引き上げる話法は、実はそれほど難しくありません。今日から使えるコツを5つご紹介!
ただ、注意すべき点もあります。「自分の考えではないから責任は問われないだろう」「ちょっと話を盛ってもいいだろう」と思いがち…。使い方によってはお客様との信頼関係をこじらせます。
その点を確認しつつ「第三者話法」のコツを説明をします。この記事を読めば営業本来の目的を確認できますから、ぜひ最後までお読みください。
「第三者話法」とは?クッション話法とは違うの?
基本的にYes,But法、Yes,And法などのクッション話法と考え方は同じです。例えば営業販売の場面。お客様の悩みや相談に対し「それはよくありませんね」と否定語から始めるのではなく、肯定語からスタートします。とにかく最初は、Yes!からです。
これは、相手が話を受け入れやすくするためのトーク術。いきなりNo!と言われたら聞いてくれませんよね。「第三者話法」も同様です。
「この商品は絶対おすすめです。ぜひ購入してください」と伝えても効果はあまりありません。ストレート過ぎます。「いりません!」と怒りの返しがあるかもしれません。
しかし次のように投げかけたらお客様の反応はどうでしょう。
「この商品はお客様と同じ年代の女性にご好評いただいています」。何も特別な営業トークではありません。「お客様と同じ年代の女性」と加えただけです。実は「たった一言」が相手の心理に刺さるケースは多いです。
「え、そうなの?それなら…」とお客様の姿勢は柔らかくなるでしょう。「第三者話法」はクッション話法と同じく「相手にとって受け入れやすい」状況を作るのです。臨戦態勢を受容・共感モードに変える役割と果たすといえるでしょう。
このように正面からの対立を防ぐ策を、実は子どもも使っています。つまり親との対立を回避する作戦。「みんなやってるよ」「みんな持ってるよ」「みんな言ってるよ」などの「みんな○○作戦」。最初は「絶対ダメ!」と否定的だった親の態度が、この一言で揺らぎます。
人が共感しやすい状況や対象(同調・親しみ・信頼・権威・特別など)を挙げ「○○は皆やっている」などとすれば、相手は容易に「なるほど」と思ってしまう…。
なぜなら「第三者」が加わればイメージが広がるからです。自分ひとりの固定観念が崩れ「もしも~だったらいいかも」「もしかしたら私も~になれるかも」と期待感も膨らむでしょう。安心感も生まれます。
先ほどの子が親に「みんなも…」のケースもそう。子がどこまで親の心理を分かっているかは別として、言われた親は「そうか…みんなもやっているなら」となります。実は親が「許す理由」や「安心感」を得たのも当然ですね。
クッション話法や第三者話法の内実を分かっていても”なんだかその気にさせられちゃう”のが人間の心理。そこで次の章で「第三者話法」の弊害についてお伝えします。
「第三者話法」の弊害はあるの?
結論から言えば「第三者話法」の弊害はあります。
第三者を立てれば直接説明するより相手に「なるほど」を思わせられますね。姿は見えなくても話だけで「賛成(反対)意見」が増えるからでしょう。話し手(営業マン)と聞き手(お客様)双方にとっての味方が第三者!
この状況なら誰かに背中を押されるごとく、とんとん契約まで進む可能性があります。実際その場で契約成立!業績アップにつながる案件成立は営業マンにとって自信になります。お客様も「あの人にようになれるわ」と希望を抱ける購入となるでしょう。
しかし、いい商品だったとしてもお客様によっては満足を得られない可能性があります。使ってみての効果を感じない場合「営業マンは絶対〇〇のようになれます!」と言ったのに…ともしかしたらクレームを入れるかもしれません。
そうならないようまず「ウソをつかない」のは基本です。また、第三者話法を用いても「商品・サービスの成果が100%」というわけではない点をお客様と共有するのは必要でしょう。
「第三者話法」のアピール術5選
前述までお伝えした点を念頭に「商品・サービスの価値を伝え購入へとつなげるにはどうすればよいのか」そのコツとイメージアップの方法をお伝えします。「第三者」の誰・何に着目して5つ挙げます。
「みなさん」口コミ・レビュー情報
子どもが親に伝えるほどですから一番使いやすい表現でしょう。例えば次のような場面で…。
お客様:この間、マットレスを購入したばかりなのよ。高かったしとても買えないわ。
あなた:そうですか…確かにすぐのご購入は難しいですよね。それでは枕はいかがでしょう?実は弊社の枕「試しに使ってみたら熟睡できる」と多くのレビューをいただいているんです。
こちらはYes,Andなどクッション話法も使っていますね。加えて別の商品をご案内しながら、自社商品のレビューを付け加えています。本当の話であるなら「あら、そうなの?」と興味をもってもらえるでしょう。
「〇代の女性・男性など」…お客様に近い方の情報
商品・サービスを開発する際「誰」をペルソナにするのか決めます。お店を出すときもそうですね。どんな欲や悩みをもち解決したいと思っているのか…それは具体であればあるほど効果的です。
あなたがお客様にご案内する商品もそうでしょう。もとは誰のためなのか確かめてみます。次のような事例を挙げます。トレーニングマシーン売り場での一場面。
お客様:ビールは止められないし、そうかといって忙しくてジムにも通えない。でもこのお腹をどうにかしたいんだよ。
あなた:ビールは美味しいですよね。あ…そういえば、お客様よりひと回りほど年上の男性がジム通いを止めてコチラのマシーンをご購入いただいたんです。なんでも…
と話は続きますが、このトークは「ひと回りほど年上の男性」を第三者にしたところがポイント。ここでもし、お客様より若い方の話を持ち出せば「ま、若い人はね、いいよね~」となるでしょう。
しかし、ひと回りも年上の男性もジム通いをやめてマシーンの購入をしたと聞けばどうでしょうか?「え、そんな年上の人もがんばっているんだ」と気持ちが前に向くのでは?
ただ、年齢や年代を出す場合は、失礼にあたらないか十分気をつけましょう。
「○○さん」…有名人・医師・弁護士など
お客様がよく知っている名前を出すと効果的です。たしかに身近な人で「あの人も」となればいいのですが、知らなければ「あ、そう」となってしまいます。
CMや通販番組などで企業が有名人を起用しているのも、いわば「第三者話法」の一種。あの女優が使っている化粧品、あの俳優が飲んでるビールなどイメージが広がりますね。「専門家も認めています」の話も有効です。
お客様:実際、○○を食べて腸活に本当に効くの?
あなた:今はたくさんの情報が飛び交っていますから、何を信じていいか分かりませんよね。ただ弊社の商品は第三者機関に試験を依頼しその効果を医師が実証しております。医師によりますと…
「第三者話法」で「第三者機関」そして「医師」。実際の話としてきちんとお客様に伝える必要があるでしょう。具体的に「○○大学の○○教授」と名前を具体的に挙げてもOK。人は権威性のあるものに弱いです。お客様が「へ~そうなの…だったら試してみようかしら」と答えてくれるでしょう。
「文献・研究論文」の情報
世の中に出ている文献や研究論文などをかみ砕いてお客様に伝えるのもいいでしょう。論文は審査が厳しく、情報の信ぴょう性を保証してくれます。
お客様:私は野菜が好きで、肉とかは食べないようにしてるの。
あなた:野菜は栄養バランスにかかせないですよね。魚は召し上がりますか?実はタンパク質が不足すると精神疾患になりやすいという話ご存じでしょうか。海外や日本の論文でもストレスでタンパク質合成が阻害されるという…。
精神疾患・うつ病・適応障害など昨今は多くの人が苦しまれているので、話の切り出し方は慎重にした方がよいでしょう。ただ、お客様の健康を考えて伝えたい内容ではあります。この場合、数値やグラフなどデータを提供できるとなおいいでしょう。
「私が○○だったら」
こちらは自分を第三者にするケース。「私がお客様の年齢にでしたら」「私がもし○○になったとしたら」のように話します。
お客様:車の免許を返納して電動自転車で生活しようかどうか迷っているのよ。
あなた:そうですよね、車の運転もいつどこで何があるか分かりませんし…かといって急に自転車に切り替えるのも不安ですよね。私がもしお客様の年齢になったとしたら、公共機関やタクシーを使うかもしれません。そこで今回ご案内するサービスですが…
という感じで、年齢差はあったとしても「自分だったら」というのは意外と相手の心に響きます。「お客様の悩みや課題を自分も考えている」と受け取ってもらえるでしょう。
「第三者」を出すのは、お客様の悩みや不安などに寄り添い「一緒に解決しますよ」のアピールだといえます。味方を登場させて相手に安心ですよ!と伝えるのです。それがコツでしょう。
「第三者話法」でウソはダメ!
何度もお伝えしたように、ウソや話の盛りすぎは禁物!バレなければいいという話ではありません。道義上問題があります。いつかはバレますし、ウソは商品・サービスの欠陥として必ずお客様が感じるところとなるでしょう。
しかも不当な勧誘や契約条項などによる消費者トラブルは「消費者団体訴訟制度」があるため公になりやすい点も承知しておきましょう。
「消費者団体訴訟制度」とは、内閣総理大臣認定の消費者団体が、消費者(この場合悩みや問題を抱えている被害者)に代わり企業や個人事業主などに対して訴訟ができる制度です。
民事訴訟では、被害者民事訴訟の原則的な考え方では、被害者である消費者が加害者の企業や個人事業主などを訴えるのが普通です。しかし、訴訟は初めから消費者に不利に働きます。
例えば、情報量や質の差、時間・コスト・費用の負担などです。そのため泣き寝入りするパターンが多く発生します。個別になんとか解決できでも、同じようなトラブルが続けて起きます。それを防ぐために、内閣総理大臣が認定した消費者団体に訴訟の権限を与えたのです。
これには大きく2本の柱があります。一つが差止請求。企業や個人事業主などの不当行為に対して認定消費者団体が差止請求ができます。もう一つは被害回復。不当な行為をした企業や個人事業主などに認定消費者団体が被害の回復を求める制度です。
万が一お客様があなたの営業スタイルに疑問をもち「買わされた」「だまされた」などの怒りを覚え、消費者生活センターに相談したとしたら…。その内容によっては「不当な勧誘や契約条項」と判断され、消費者団体から連絡が入るかもしれません。
でお客様に「買わされた」「だまされた」と思われないためには、ウソをつかないこと。いい商品だからぜひ…とお客様にすすめる際も”思わずウソをついてしまった”とはならないように気をつけましょう。
やはり三方よしですね、会社・お客様・世間一般にとってのメリットを考えた営業姿勢を大切にしましょう。
「第三者話法」はお客様の幸せサポート
第三者話法は使い方次第で、お客様に幸せをお届けする役割を果たします。お客様が気づかない視点やよりよい選択をするチャンスをギフトするのです。
あなたの言葉で「あ~なるほど、それはいいですね。ぜひ」と自然に心が動く…そうしたトーク術を磨いていきましょう。この記事を参考に、提供できる材やアイデアをストックしておくのをおすすめします。
その場の思い付きでない「第三者話法」はきっとお客様の心を動かすでしょう。