先行者利益のメリットとリスク|いち早く参入するが勝ちなのか

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「先行者利益って何?」
「先行者利益って本当にメリットがあるの?」
「先行者利益よりも後発者利益の方がいいの?」

このような疑問をもつ方はいるでしょう。

先行者利益で成功すれば大きな利益を得られますが、先行きが読めそうで読めない実態や莫大な資金を投入するリスクを考えると、実際に市場に繰り出すには勇気がいります。

万が一の損失を回避するには、先行者利益のメリットやリスクをしっかり確認するとともに、後発者利益のメリットも含めて自社でよく吟味する必要があります。

そこで今回は、先行者利益のメリットやリスクに加えて後発者利益に関する情報をお伝えしながら、企業の発展に必要な視点を解説します。予測不可能な時代において自社が生き残り、さらに発展するためのポイントが明らかになりますので、ぜひ最後までお読みください。

先行者利益とは?そのメリット

先行者利益は先発優位とも呼ばれ、新しい市場にできるだけ早く参入し市場全体の利益を独占したり、絶妙なタイミングで自社商品やサービスを投入したりして得られる利益を指します。新規市場は競合が少ないため、後発的に始めるより有利にビジネスを展開できます。

市場の動向や消費者の志向を分析し戦略的に商品やサービスを投入する方法であり、単なる早い者勝ちではありません。

ここでは、先行者利益にどのようなメリットがあるか解説します。

強固なブランディングにつながる

あるジャンルにおいて、まったく新しいコンセプトの商品がヒットすると強固なブランディングにつながります。売り上げが爆発的に伸びるなどうれしい結果を得られるだけでなく、以後「〇〇といえば▢▢」という代名詞がつく可能性が生まれます。

利益を独占できるばかりか、商品ブランドが強固になるため収益を安定的にキープできるかもしれません。たとえば、次の商品やそのジャンルにおける代名詞になっています。

  • セロハンテープといえば「セロテープ」(ニチバン)
  • インスタントラーメンといえば「カップヌードル」(日清食品)
  • ハンバーガーといえばマクドナルド
  • 柿ピーといえば亀田製菓
  • スマートフォンといえばiPhone

一旦、商品・企業ブランドが確立されると先駆者として後世に受け継がれます。また、高いネームバリューによって、消費者が最初に購入を検討するなどのメリットもあります。

市場の利益を独占できる

資金投入の額がたとえ高額でなくても市場でヒットすれば利益を独占でき、企業全体の成長につながります。

競合他社がいる場合は、価格を下げる手立てが必要になるでしょう。しかし、先行者利益が成功すれば消費者に選択の余地がないため、価格競争を受ける心配がありません。つまり、価格やシェアに関する競争を回避しながら市場の利益を独占できるのです。

また、価格や収益の面だけでなく特許や商標登録などの規格・技術面で地位を確立できる点も、企業にとって大きなメリットといえます。

先行者利益のリスクやデメリット

先行者利益を得るためには、新技術や商品開発などに対する投資が必要になります。先行者利益にメリットがあるとはいえ、資金力の乏しい企業にとってはリスクになるかもしれません。

そのリスクは、時代の流れを読み市場や消費者の動向を丁寧に分析して新商品やサービスを導入しても起こり得ます。失敗した際の損失が大きければ倒産を招く可能性もあります。

また、中小・ベンチャー企業が先行者利益で一時的に成功できたとしても安心できません。その理由は、資金力やブランド力のある大企業やマーケテイング手法に優れた企業が、それ以上の商品やサービスを市場に送り込めば太刀打ちできないケースがあるためです。

つまり先行者利益のリスクは、成功して認知度を高めたのちに独占的な地位を保てるかどうかが不透明である点といえるでしょう。

早いもの勝ちでもない後発者利益

ここまで先行者利益について解説しましたが「早いもの勝ちでもない」のも事実です。たとえば、後発的に既存分野に参入して利益を得る「後発者利益」の場合、参入に必要な投資や時間的なコストを削減できます。

その理由は、先行者のノウハウを利用したり課題があれば改善したりしながら、よりよい商品やサービスを導入できるためです。

実は、先行者利益の事例と考えられる商品ブランドには、意外に多くの後発者利益が含まれています。たとえば、下記の企業や商品ブランドは後発的な参入によって成功しました。

  • ヤマト運輸の宅急便
  • はごろもフーズのシーチキン
  • 亀田製菓の柿の種
  • 旭化成のサランラップ

ヤマト運輸の「宅急便」は宅配便サービスのブランド名です。先行者利益と思いきや、最初に始めた宅配便は三八五貨物(現:三八五流通)のグリーン宅配便だといわれています。

はごろもフーズの「シーチキン」は商品ブランドが確立していますが、はごろもフーズの前にマグロ油漬け缶詰で成功している製品があります。それが静岡県水産試験場の村上芳雄氏が開発した缶詰です。しかも水産試験場が缶詰業者に製品化を提唱した際、最初に名乗りをあげたのは、はごろもフーズではなく清水食品でした。

また、亀田製菓の「柿の種」は、柿ピーとして有名ですが、柿の種を開発したのは新潟県の浪花屋製菓株式会社でした。創業当時は煎餅をつくっていましたが、大阪のあられづくりを教わり試行錯誤のうえ完成したのが柿の種といわれています。

食品用ラップフィルムといえば旭化成の「サランラップ」。商品名が、そのジャンルの代名詞になっている事例です。ただ、日本におけるラップフィルムの最初は、クレハの「クレラップ」だといわれています。

このようにブランディングが確立されている商品が、意外に後発者利益を得ている事例は多くあります。後発者は、先行者と比べて分析や研究にかけるコストを削減しながら効率的に商品改良ができる点にメリットがあるといえるでしょう。

後発者利益のメリットとは?

後発的に商品やサービスを市場参入することに、どのようなメリットがあるのか…。ここでは以下の3点を挙げます。

  • 経費や時間を削減できる
  • 先行者とは異なるポジションを得られる
  • 資金力で一気にシェアを獲得できる

次から順番に解説します。

経費や時間を削減できる

後発者として市場に参入する場合は、先行者が負うような経費や時間などのコストを削減できるメリットがあります。また、先行者がスタートした事業の課題を解決した商品やサービスを市場に送り出すチャンスになります。

ゼロから調査や分析をする時間や新しいアイデア商品を考案する時間をカットできれば、さらなる価値を生み出す商品やサービスづくりに集中できます。そこで生まれたものは先行者利益以上のメリットを受けやすくなり、企業の成長に大きく役立つでしょう。

先行者とは異なるポジションを得られる

市場がある程度成熟すると、先行者の商品やサービスに対する消費者のニーズを満たしきれない部分も分かってきます。

このため、既存分野に参入する後発者が消費者のニーズをより詳しく分析すれば、自社商品やサービスの新たなポジションを見つけやすくなります。つまり競合他社に負けないポジションが明確になるため、効果の上がるマーケティング戦略を打ち出せるのです。

資金力で一気にシェアを獲得できる

先行者利益をねらわず後発者として自社の発展を可能にするための一つの条件として「資金力」があります。資金力があれば後発者として市場に参入しても、商品開発や集客・販売促進活動に十分な投資ができます。戦略的に投入できれば、一気にシェアを獲得するのも可能です。

市場の大きさや将来性などによって投資額は変わりますが、先行者がいることで見通しを立てやすいのもメリット。あとから参入したとしても、市場のシェアを拡大したりトップに躍り出たりできるでしょう。

先行者が圧倒的優位とはいえない?

前章までの内容を読んで「もしかしたら先行者が圧倒的優位とはいえない?」と思う方はいるでしょう。

実は日本企業が先行者であったのに、その後想定以上の伸びを示さなかった分野はあります。たとえば電子書籍kindle。電子書籍を世界で初めて投入したのはソニーでした。シャープやNECなどの企業も参入したのですが、最終的に市場を独占したのはkindleでした。

また現在供給不足が続いている半導体はかつては日本の代表的な産業の1つでした。一時は世界シェアの50.3%を占めていたのですが、2019年には世界シェアの10%にまで落ち込んでいます。

その理由としてバブル崩壊による投資不足や施策の滞り、海外との貿易規定などが挙げられます。先行者として成功しても、市場シェアをキープしたり伸ばしたりするには、時流を読みつつ戦略的に投資・開発・販促などをしていく必要があります。

つまり、先行者利益にメリットがあるとはいえ安住できず、常に変化し続ける市場を分析して成長し続けるための要素を見極めねばならないのです。

先行者利益で成功するには

先行者利益はたしかにリスクはありますが、成功すれば最大の成果とネームバリューを得られます。後発者利益はコストをかけずに安定したビジネスを展開できるのがメリット。ただ、先行者が大成功を収めた場合の利益には及びません。

では、先行者利益で成功するにはどうすればいいのか、ここでは「先行者の中小企業が後発の大企業に負けないための視点」をお伝えします。まずお伝えしたいのは、もし先発者の地位を確立できたとしてもそこで満足せず、万が一大企業が参入してきた際の対策をとっておくことです。

つまり、その分野における市場で絶対的優位なポジションを確保しておくのです。たとえば次から紹介する内容を参考にしてください。

消費者や市場の調査・分析

消費者のニーズあるいは時流を適切に捉えながら市場を調査・分析する必要があります。後発者として大企業が参入してくる場合のリスクも考え、いつでも優位に立てる場所を確保したり大手参入時の戦い方を想定したりするなど準備しておくのです。

企業力や商品力を分析・強化

消費者や市場の動向を把握したのちは、自社や既存の商品力を分析します。商品やサービスの強みや弱みを詳細にとらえたり、社員の能力や組織力などを総合的に判断したりするのです。

そこから考えて新商品を開発する場合「自社が競合他社に優位に立てるポジションはあるのか」「どこに特化した商品を開発すべきか」などを考えましょう。

その際、他社が参入してきたことを想定して、絶対に負けない商品力やポジションを確保することが重要です。市場や他社の動向を見ながら、戦略的に供給を先延ばしにすることも考えられます。

タイミングを見極める

上記までの分析は、できるだけ迅速におこなうことをおすすめします。その理由は、時代の流れやトレンドがめまぐるしく変化するためです。いくら良い商品やサービスを開発できても、市場調査や分析に時間がかかれば、収益化のタイミングを逃します。

消費者の興味やニーズも日々変わる現代において、時流に乗れる商品やサービスを「ここぞ!」という時機に投入できればブームを巻き起こす可能性が広がります。ただ、一時的な利益だけでなく本当に長く愛される商品やサービスを開発するのは常に念頭におきたいところです。

効果の上がるマーケティング戦略を

いくら企業の底力や商品力があったとしても、最適な消費者の目に留まり、今の市場ニーズにマッチした販促活動を打てなければ存在価値がなくなってしまいます。効率的なマーケティング戦略を立て実践に移すことが重要です。

今はインターネットが普及し、いつでもどこでも誰もがさまざまな商品を目にします。そのなかで、やみくもにマーケティング戦略を打っても、誰の心にも響かず資金も無駄になってしまうでしょう。

前述したように自社企業や商品の立ち位置を明確にするならば、そのポジションで成果を出せるマーケテイング手法を見い出せます。

まとめ

早い者勝ちといわれる先行者利益ですが、企業戦略や商品力などの要素をクリアしなければ、具体的な成果は出せません。あるいは、無意味な投資をし続けることになり、場合によっては倒産の危機にあるでしょう。

先行者や後発者問わず、企業が市場や消費者が求めるものを丁寧に調査・分析することは大切です。また、後発者の方が利益が上がるかもしれない点を想定して、一番いいタイミングで効率的なマーケティング戦略を打てるかが重要になるでしょう。

利益を出すための可能性を探りつつ具体的な商品開発を手掛けるのはもちろん、いつどこでやるのかを念頭におきます。その意味で、先見性と行動の迅速さは必須事項といえます。ぜひこの記事を参考に、自社が先行者あるいは後発者として進むのかを見極めて行動に移していきましょう。

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