新規商品やサービスを開拓したり実際に市場に送り出したりする前に、競合他社の調査をする企業は多いでしょう。
「他社との差別化を図れるか」「自社がより有利なポジションを獲れるか」に対する答えをYES!とするには、徹底的な調査が必要になります。
しかし競合他社の情報収集や分析の仕方によっては、当初の目的から外れてしまったり資金を投入しても結果を出せずに終わるケースもあります。
そこで今回は、競合他社の調査目的や知っておきたいポイントを紹介します。自社が狙う分野で圧倒的なポジションを獲得し成功するために必要な情報です。
本記事を読めば成功へのロードマップをイメージしながら実行に移せます。ぜひ通してお読みください。
競合他社を調べる目的
そもそも競合他社を調べる目的とは何か…。競合他社調査のねらいを明確にしておかなければ、調査内容を活用しきれなくなります。
ここでは、競合他社を調べる目的として以下の3つを紹介します。
- 市場調査では足りない情報を補う
- 他社と比較して自社の強みや弱みを見つける
- アイデアの創出や実効性を確認する
それぞれ内容を詳しく解説します。
市場調査で足りない情報を補う
市場調査とは、自社商品やサービスに関する市場あるいは顧客のニーズを調べることを指し、競合調査は市場調査の内容を補うためにあります。
市場調査では、自社商品やサービスが市場にどのように受け入れられているかがわかります。ただ、市場調査はいわゆる”自己分析”であり、他社との差別化を図るには不十分です。
最適な競合他社を選定して調査し自社の調査と合わせて丁寧に分析することで、市場における自社の立ち位置を明確にできるのです。
他社と比較して自社の強みや弱みを見つける
市場調査に加えて競合他社を調査するのは、自社との比較を通して強みや弱みを明らかにしたり、自社が優位になるポジションを見つけたりするためです。
強みがわかれば戦略を策定して行動でき、弱みがわかれば改善を加えたり必要に応じて強化策を打てたりできます。
強みと弱みの把握を通して自社の方向性がわかると同時に、必要な策を講じれば市場における自社の存在感を押し上げられるのです。
アイデアの創出や実効性を確認する
競合他社を調査する過程のなかで、ふとアイデアが浮かぶ場合があります。また、生まれたアイデアが市場や顧客ニーズにあっているかどうか実効性を確認できます。
つまり、競合他社の調査や分析をするのは、今まで見えなかったものを可視化できるメリットがあります。漠然ととらえていたものをカタチにするチャンスといえるでしょう。
さらに「アイデアが実際に機能するかどうか」「〇〇をしたら▢▢の効果を出せるだろう」など仮説を立てて検証する過程を踏むことが大切です。その理由は、実際に商品やサービスを市場に送り出したときに結果を出せなければ、時間や労力、投資などが無駄になってしまうためです。
仮説を検証して成功への見通しが立てば、早速戦略を策定できます。競合他社を調査する目的は、具体的な戦略を立て実際のアクションに移すことにあるといえます。
競合他社を調べる前の確認ポイント
ここでは、競合他社の選び方と調査をする前に知っておきたいポイントについて解説します。調査の過程で下記に紹介する内容を頭に入れておかなければ、調査が滞ったり無駄になったりする可能性があります。しっかり確認しましょう。
競合他社選びは明確な視点で
競合他社を選ぶ際は、自社商品・サービスと顧客ニーズの適合性を念頭におき、いかなる戦略で事業展開していくのか明確な視点をもたねばなりません。視点を絞らなければ、競合他社をいくつ選んで調査しても満足した結果を得られないでしょう。
「いくつの会社をピックアップすればよいか」の問いに関しては、少なくて3社、多くても10までとお伝えします。ただ実際は、業種によって選ぶ数が変わるでしょう。
業界で似たような企業が混在している場合もあります。そのすべてを調査するよりも、トップ企業や発展性が見込まれる企業を選んだ方が、自社にとって有益な情報を入手し調査・分析ができます。
限られた時間のなかで、いかに効率的に調査ができるか考えて競合他社を選びましょう。たとえば、競合他社を選ぶ方法として下記の視点を紹介します。
- 自社と類似する商品を扱っている企業
- 業界シェアのトップあるいは発展性のある企業
- 自社と同じような立ち位置の企業
- 同じ価格帯の事業展開をしている企業
- ビジネス戦略が似たような企業
このほか、ターゲットが似ている商品やサービスを提供しているのに、自社よりも売り上げを出している企業、シェアは低めで発展性は未知数だがコアファンがおり手堅く業績を上げていくと予想される企業…なども考えられます。
自社が「どこで何をどのように事業展開をしていくのか」を予想したうえで、競合他社を選定しましょう。
顧客目線で調べる
実際の調査ではどうしても自分目線になりがちです。しかし、常に顧客目線であることは忘れないようにしましょう。
たとえば、競合他社がおこなっている戦略を顧客の目線で読み解く視点も重要です。競合他社の調査をおこなう際は下記のポイントを事前に把握しましょう。
- 商品単価や割引率
- 顧客数と業界別の比率
- 営業や集客の手法
- 売れ筋商品の比率や背景
調査して分析する際も「どうして顧客はこの商品を求めるのか」「顧客に人気があるのは単に安いだけか」など顧客目線で分析します。
また、数値を調べてわずかな違いに一喜一憂するのではなく、インパクトのある数値や差の大きい箇所を見つける姿勢も大切です。その理由は、大差ないところをいくら吟味して対策を練っても効果に期待がもてないためです。
自社の強みや弱みを具体的に把握できず、競合他社との差別化も図れなくなります。”虫の目2でしっかり分析するのは重要ですが、最終的な成果や全体を見る”鳥の目”も忘れないようにしましょう。
競合他社を調べる方法
競合他社の調査を始める前に、まずは目的を明確にすることが肝心です。目的とは、自社が勝てる分野やポジションを確保することにあります。
調査結果をもとに戦略を立てる際「自社が勝てる分野か」「ポジションを確保できるか」に対する答えがYESにならなければ意味がありません。目的を達成するための道筋を次から詳しく解説します。
仮説を立てる
調査の目的が決まればすぐに調査に入りたいところですが、ここで一旦立ち止まります。まずは目的から下ろした仮説を立てるのです。
たとえば競合他社の調査目的を「30代キャリア女性をターゲットにした新商品の開発」とすれば、ペルソナを明確にして顧客ニーズを探ります。
顧客ニーズが「実用性」「コストパフォーマンス」「シンプル」として、新商品に「普段使いのハンドクリーム」を想定するとします。
この場合、競合他社もある程度絞れるでしょう。価格帯が低めでシンプルなデザイン、機能性を重視する企業を選ぶ必要があります。あるいは、価格が少し高めだけれど実用的な商品を展開する企業も選定できます。
例として「普段使い+見ても使っても笑顔になれるデザインで香り付きのハンドクリームは30代女性に受け入れられるだろう」といった仮説を立てるとすれば、競合他社の選定や調査の視点をより明確にできるでしょう。
また既に販売されているA社商品があっても、A社のマーケティング手法に変わる手法を使えば勝ち目はある!と判断できます。
いずれにしても、目的にもとづいた仮説を設定して調査・分析をした方が結果を得られやすく、仮説が万が一成り立たなかったとしても修正の視点を明らかにできるのです。
各種データを収集する
前述で仮説をもとにした調査の視点を説明しましたが、仮説をもとにして調査項目を立て、丁寧に調べる必要があります。
項目とは、商品やサービス内容や訴求できるポイント、ペルソナ設定、顧客に与える価値などを指します。調査項目を明確にした方が、対象を比較しやすいため必ずおこないましょう。
調査方法については、たとえば下記の方法があります。
- 競合他社や店舗に直接訪問する
- 競合他社の商品を購入する
- 競合他社のWebサイトやECサイトを分析する
- SNS投稿や顧客のレビューを抽出する
- アンケート調査をおこなう
このほか、各種媒体の広告、プレスリリースの内容、イベントやセミナーの参加など、インターネット上や購入や参加などを通じてリアルな情報を入手します。
仮説でSNSマーケティングの良しあしを判断したい場合は、ツイッターやインスタグラムなどのアクセス分析は欠かせません。
「競合他社と自社の違いを明確にするものは何か」を常に意識し、あらゆる方法を使って調査するねばり強さも必要でしょう。
調査内容をもとに分析する
競合他社の調査によって多様かつ膨大な情報を入手した場合、後述するフレームワークを活用しながら分析をおこないます。
仮説が正しいかどうか、その答えや根拠を見つけるのです。とくに競合他社と比べて自社が抜きん出ている(できそうな)点と改善が必要な点を洗い出します。強みや弱みは、競合他社と比較することで見えてくるため、調査内容をしっかり分析しましょう。
この場合、強みであっても競合他社と共喰いのようになってしまい、実際の業績アップにつながらない可能性もあります。逆に弱みであっても充分な投資で改善できれば、市場における圧倒的なポジションを獲得するチャンスとなるかもしれません。
既存の価値観や思い込みに左右されることなく、顧客目線にもとづいてデータを客観的に分析するようにしましょう。
仮説の検証をする
競合他社の調査結果について、調査前に立てた仮説が正しいかを検証します。仮説を実証できれば、調査結果をもとに具体的な戦略を策定できます。
また社内で今後の戦略を共有する際も、競合他社の調査や分析結果を提示することで社員を説得しやすいでしょう。
万が一仮説が外れて予想を覆されるとしても、悲観的になる必要はありません。調査から見える視点をポイントに新たな仮説を立てて調査し直します。調査のやり直しは精査のチャンスととらえて前に進みましょう。
競合他社調査を効率的におこなうには
競合調査は時間や労力がかかりますが、時間をかけすぎれば商品展開のタイミングを逃す可能性もあります。効率的に調査をおこなうには、フレームワークやツールを活用するのもひとつの方法です。
フレームワークの活用
ここでは、競合他社調査に使えるフレームワークを紹介します。紹介するフレームワーク以外にも多くの型がありますが、今回お伝えするのはよく使われる分析方法です。
市場や顧客のニーズを把握しながら、競合他社と自社との比較を明確にできるフレームワークを4つ紹介します。
5(ファイブ)フォース分析
5フォース分析とは、5つのフォース(脅威)から事業環境を分析して、自社のポジションを明らかにすることを指します。フォースは「既存競合他社」「新規参入企業」「代替え品」「売り手(サプライヤー)の交渉力」「買い手(顧客)の交渉力」の5つです。
外部環境からの脅威であるフォースを分析すれば、収益化につながる要素がわかり「新規商品がヒットするか?」「理想の価格帯はどこか?」などが見えてきます。商品の戦略を決めたり価格を設定したりする際にも役立てられます。
4C分析
4C分析は、Customer Value(顧客にとっての価値)、Cost(顧客のコスト)、Convenience(顧客の利便性)、Communication(コミュニケーション)の4つの要素を分析するものです。分析により、顧客がどのような価値基準で商品やサービスを選ぶのかわかります。
競合他社の4Cを洗い出した結果と自社の4Cを比較すれば、自社の強みや弱みを可視化できます。また、顧客に商品を購入してもらうための要素を具体的にできるでしょう。
4P分析
4P分析は、自社商品やサービスをProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(販促)の視点で分析することです。
自社のマーケティング戦略を立てる際に使われるフレームワークですが、競合他社との差別化を図るために活用できます。その理由は4つのPが競合他社と比較しやすい項目であるためです。
4P分析は、自社目線で情報を整理したりマーケティング戦略を策定したりする際に活用できます。
SWOT分析
SWOT分析とは、自社にとっての外部環境と内部環境を比較しながら分析することを指します。企業の現状を把握する際に、よく用いられるフレームワークで「強みを弱みの分析」といえばSWOTと考える人は多いでしょう。
縦軸と横軸で分けられた4つの項目からなるマトリクスが特徴で、4つの項目とはStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)を表します。SWOT分析は競合他社と自社の立ち位置を整理する際に役立ちます。
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競合他社を調べる際は、各フレームワークの利点に応じて活用しましょう。
分析ツールの活用
競合他社の調査をする際に、ツールを活用するのもひとつの方法です。
とくに、競合他社のサイトを分析する場合は、分析ツールを使った方が短時間で質の良い内容を得られます。
分析ツールを活用するメリットは、次の2点が挙げられます。
- 人間がおこなう通常の分析ではわからない情報を得られる
- 時間や労力をかけずに効率よく調査をおこなえる
ここでは、3つのツールを紹介します。
SimilarWeb
SimilarWebは、企業のWebサイトへのアクセス状況や流入経路などがわかるSEOチェックツールです。競合他社などほかのWebサイトに関する情報を詳細に知ることができます。
アクセス状況や流入経路のほか「どの広告媒体を使っているか」「SNSの利用状況」「訪問するユーザーの属性」などを把握できます。
現在多くのマーケティング担当者が注目しているツールのひとつです。
Keywordmap
Keywordmapは、Googleが評価するコンテンツ要素が一目でわかるマーケティングツールです。自社や競合他社のWebサイトはもちろん、どんなコンテンツを作成すれば上位に表示されやすくなるかなど、一度に分析できます。
たとえば、検索ワードで流入する顧客のニーズまで明らかにできます。Keywordmapは、競合他社のコーポレートサイトを通して調査をする際に、重要な要素を簡単に抽出できるため便利なツールといえるでしょう。
Gyro-nSEO
Gyro-nSEOとは、GoogleやYahoo!、Bingの検索結果の順位をチェックできるSEO支援ツールを指します。SEO順位チェックや競合サイトの順位比較、ページ分析、キーワードサジェストまで、SEO関連を網羅したツールといえます。
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ただ、競合他社と自社のWebサイトだけを比較して双方の強みや弱みを100%明確にするのは不可能です。
足を運んで直接競合他社の商品やサービスに触れたり、顧客の声に耳を傾けたりするなど調査内容を充実させるための手立てを尽くすようにしましょう。
競合他社を調査・分析後にやること
競合他社の調査によって、自社がこれから市場に送り出そうとしている商品やサービスの良い点・改善点などが見えてきます。また、仮説検証も可能になり、自社の優位性が確保されれば次のステップに進めます。
つまり、競合他社の調査・分析をしたあとは、自社のポジショニングを可視化したうえで具体的な戦略を策定することが大切です。
「勝てる見込みのある分野に商品やサービスをどのように投入するのか」など、ポイントを絞った戦略策定に入り、実行に移すためのアクションプランを立てましょう。
現在は市場の移り変わりが激しく、調査後の動き次第ではせっかくの戦略も水の泡になってしまう可能性があります。このため、調査や分析した後は、すぐに戦略やアクションプランの策定に入りましょう。
つまり、成功に向けてのロードマップの最終段階は、調査後の戦略やアクションプランの策定をスピーディにおこない、タイミングを逃さず実行していくことなのです。
まとめ
ここまで紹介した方法で競合他社の調査をおこなえば自社と競合他社との違いが明確になり、いつ何をどのような戦略で実行に移すべきか見えてきます。
「目的」と「顧客目線」を忘れずに仮説を設定しながら競合他社を調査しましょう。他社との違いを明確にしたところで実際に勝てるか判断します。勝てると分かれば、できる限り早めに戦略を策定しアクションをおこします。
各過程では、よく使われるフレームワークやツールの活用が有効です。何の目的で使うフレームワークあるいはツールかをよく吟味し、適宜調査や分析段階で取り入れましょう。