現に営業に携わっている人、あるいはこれから営業職に就く人にとって「自分は営業に向いているだろうか」と考えることはあるでしょう。
向いていないと思えば業務を進められず、諦めてしまうことも多くなります。悩みを深くする前に、まずは、営業職に適しているとされる基準を自身が満たしているかどうか確認しなければなりません。適切な診断によって改善点を洗い出せれば、事後の目標を立てやすくなります。
本記事では、営業の向き不向きを見極める際に必要な診断項目について解説します。各項目がなぜ重要であるか、その理由を明らかにするとともに、実際に活用できる15個のチェックポイントを紹介します。診断結果の適切な活用方法や留意点についても説明しますので、今後の取り組みに活かしてみてください。
営業パーソンが気にする営業の向き・不向き診断とは?
最近では、営業職における適正や特性を評価し、営業の向き不向きを理解するための診断ツールがWeb上に公開されています。
読者の皆さんのなかにも実際に活用している人もいるでしょう。数多くのデータから営業職に必要とされる要素を明確にして、該当する項目に「あてはまるか、あてはまらないか」を判断してもらう形式が多く見られます。
なかには該当する度合いが5段階(例:とても思う、どちらかといえば思う、どちらともいえない、どちらかといえば思わない、まったく思わない)に設定され、利用者に選択してもらう診断ツールもあります。ポイントの数によって営業職に向いているかどうか判断したり、AI診断で営業職に合っている度数をパーセンテージで示したりするなど、結果報告の方法はツールによってさまざまです。
診断ツールを活用すれば自己評価が可能で強みや弱みも明確になり、今後の取り組みにつなげられるでしょう。しかし、各項目の本質を把握できなければ表面的な改善しかできず、本当の解決にならない場合があります。
そこで、営業の向き・不向きを評価するための診断観点として5つを例に挙げ、それぞれの観点がなぜ必要であるか、その理由を詳しく解説します。後述する、より具体的な15のチェックポイントの価値を理解するために必要な観点をしっかり確認しましょう。
営業職に必要な5つの診断観点
営業職を務めるにあたって、重要な要素として以下の5つを挙げます。
- 顧客目線
- PDCAサイクルの実践
- 学習意欲
- ストレス耐性
- 独自のアプローチ
それぞれの観点の概要と必要とされる理由について詳しく解説します。
顧客目線
顧客目線とは顧客の思いや考え方に寄り添いつつニーズを把握し、要望に合う案を提示しようと努める姿勢を指します。つまり、顧客の利益を最優先に考える姿勢です。
営業パーソンに必要な要素としてコミュニケーション力が挙げられますが、顧客目線があってこそコミュニケ―ションが成り立つ点を忘れてはなりません。単に口がうまいだけ、あるいは自分の話ばかりする営業パーソンは顧客の信頼を得ることは難しいでしょう。
営業職は顧客に対して思いやりをもち、傾聴の姿勢や顧客の悩みを解決するための行動力が求められます。言葉の選択や話の流れ、提案内容や提示の仕方など、あらゆる行程において顧客目線が重要です。顧客目線で物事を考え行動できる営業パーソンが顧客から信頼され、営業の業績向上へとつなげられます。
PDCAサイクルの実践
PDCAサイクルとは、Plan(目標や計画設定)、Do(実行)、Check(分析)、Action(改善)の一連の流れを遂行することを指し、ビジネスを成長させるうえで重要な取り組みです。
会社や営業部署内における目標達成を追求する場合に必要な要素ですが、個人のスキルアップにも欠かせません。PDCAサイクルを回して、営業の質を良くしたり成約率を向上させたりする取り組みが必要です。
努力をしても営業成績を向上させられない場合、そもそも目標設定の仕方が間違っていることがあります。長期的な目標は大切ですが、自身にとっては遠い存在で具体的なアクションにつながらなければ見直さなければなりません。
また、商談数を増やしたり成約率を上げるためには、飛び込み営業などを増やす手法もありますが、「とにかく数だけ増やせば…」と考えていては成果につながらないでしょう。顧客情報を収集してリスト化し、営業で得た情報を入力して分析するなどの作業は重要です。
数値やデータの分析力が弱いと判断した場合は、向上させるための策を考え行動に移す必要もあります。
PDCAを適宜回していく習慣を身につければ営業力の向上に役立ち、最終的な目標を達成することにつながります。
学習意欲
IT技術やインターネット環境が日々進化しており、市場の変化も著しいのが現代です。時代の流れやトレンド変化が激しい環境で事業を成功させるには、新しい情報を取り入れたりスキルアップを継続的に図ったりする必要があります。
顧客との距離が近い営業パーソンこそ、ニーズや市場動向を的確に捉え事業に活かすうえで重要な存在です。このため、新たな情報を活用したり学習したりする姿勢が求められます。
また、既存のやり方や固定観念に縛られすぎず、変化に対応する柔軟さも必要です。「学び続ける」「挑戦する気持ち」があれば営業戦略を最新化し、競争力を維持しやすいと考えられます。
ストレス耐性
顧客目線で円滑なコミュニケーションを心がけ、PDCAサイクルを回しながら日々研鑽に努める営業パーソンであっても、心身ともに疲れてしまうことはあるでしょう。その際、適切にストレスに対処できるかどうかも重要なポイントです。
ストレスは誰にもあるとしながらも、適切に対処しなければ知らぬ間に身体を壊してしまうかもしれません。日々のストレスを適宜軽減し、持続的な体力と気力を維持するための工夫をする必要があります。
たとえば、生活のリズムを整え、ストレスが大きいと思った場合は温泉を利用したり自然散策をしたりしてリフレッシュするなどの行動も重要です。
営業職は成功と失敗の両方を味わう仕事です。ストレスを上手く処理して精神的なタフさを保てる人は、逆境に立ち向かい目標に向かって努力を続けることができます。
独自のアプローチ
営業は競争が激しい分野であり、自己主張や新しいアプローチが求められることがあります。自分の取り組みに自信をもち、自分らしい方法で課題に取り組む独創性も重要です。いつも言われたことしかしなければ、変化に対応しにくく自身の成長も難しくなるでしょう。
独自のアプローチができればほかと差別化ができ、自身の強みを明らかにできます。創造的なアイデアで場に変化をもたせられれば、営業部全体、あるいは顧客との関係性にも新たな発見が生まれるなど、ビジネスをポジティブな方向にもっていけます。
これら5つの観点に基づき、次章で具体的なチェックポイントを解説します。
営業の向き不向きを見極める15の診断項目
前章で紹介した診断の5観点にもとづいて、以下のチェックポイントで自身の「今」を確認しましょう。
判断の目安として以下の内容を紹介します。
- 「営業に向いている」:各観点3つのチェックポイントのうちすべて該当するケースも含めて、合計11~15にチェックできた場合
- 「どちらかといえば向いている」:各観点の3ポイントのうち2つ該当するケースが多く、合計8~10にチェックができた場合
- 「努力次第で向いているに移行可能」:どちらかといえば各観点3つのうち1つにチェックするケースが目立ち(場合によってはゼロ)、合計5~7の場合
- 「営業に向いていない」:どちらかといえば各観点ゼロが目立ち、合計0~4の場合
以上はあくまでも目安である点をご承知おきください。「向いている」といった結果になったとしても、改善点はないか今一度確認し、克服のための解決策や行動が必要です。
では、以下に15のポイントを一つ一つチェックしていきましょう。
【観点①顧客目線のチェックポイント】
チェックポイント 1:顧客の立場になって、提供する価値や解決策を考えられるか?
チェックポイント 2:顧客が話すことを注意深く聞き、その内容を理解できるか?
チェックポイント 3:顧客のニーズや課題を特定し、質問を通じて詳細に掘り下げられるか?
【観点➁PDCAサイクル実践のチェックポイント】
チェックポイント 4:長期的な目標を設定し、それに向けた計画を策定できるか?
チェックポイント 5:実行した行動や成果を定期的に評価し、必要に応じて改善策を導き出せるか?
チェックポイント 6:数値やデータを活用して戦略を立て、目標達成に向けた行動に起こせるか?
【観点③学習意欲のチェックポイント】
チェックポイント 7:新しい情報やスキルを積極的に学び、適用できるか?
チェックポイント 8:自己成長のために書籍やセミナーなどを活用し、スキルを向上させられるか?
チェックポイント 9:変化する市場や競争状況に適応し、新しい知識を取り入れられるか?
【観点④ストレス耐性のチェックポイント】
チェックポイント 10:厳しい状況や批判に対処し、ポジティブな姿勢を維持できるか?
チェックポイント 11:生活リズムを整えて健康的な生活を送っておりリフレッシュを適宜行っているか?
チェックポイント 12:失敗や挫折に対して柔軟に対応し、成長への意欲を保てるか?
【観点⑤独自のアプローチのチェックポイント】
チェックポイント 13:常に新しいアイデアやアプローチを考え、他と差別化できるか?
チェックポイント 14:独自の視点や客観的な見方をもち、問題に対して創造的な解決策を見つけられるか?
チェックポイント 15:他の人と同じ行動を取らず、自分らしい方法で課題に取り組めるか?
以上15項目ですが、いかがでしょうか。
「向いていない」といった結果となった場合、意気消沈して「自分はダメだ」と思い込まないようにしましょう。悩みを大きくしてしまう前に、信頼のおける人に相談することをおすすめします。向き不向き診断は自身の判断でおこなっているため、不安に感じる場合は専門家の意見を求める姿勢も重要です。
次章では、今回の診断項目をチェックして得た結果を今後、どのように活かしていくべきかについて解説します。
営業の向き・不向き診断の結果を活用する方法
営業の向き不向き診断の結果を活用する方法は、以下のようになります。
- 自己理解を深める
- 長所を活かす
- 短所を改善する
- ポジティブなアプローチをする
次より4つのポイントについて解説します。
自己理解を深める
まずは診断結果を丁寧に分析し、自己理解を深めることが大切です。診断はあくまで一つの視点であり、自分の性格や能力を客観的に見つめる機会だと捉えましょう。
診断結果を通じて、自分の強みや弱みを正確に把握します。どの領域で優れているのか、どの領域で改善の余地があるのかを理解することは、営業活動において自信をもったり改善のための行動に移したりする際の基盤となります。
長所を活かす
診断結果から得られた長所を活かす方法を見つけましょう。たとえば、顧客目線やPDCAサイクルの実践に長けている場合、長所を活かして顧客との信頼関係を築き、目標達成に向けた計画を立てる能力を強化します。
また、全体として「営業に向いていない」結果を受けたとしても、観点の一つである「顧客目線」のポイント「顧客が話すことを注意深く聞き、その内容を理解できるか?」についてチェックが入れば、傾聴の姿勢を自身の強みとして捉えます。
短所を改善する
診断結果で明らかになる短所や課題にフォーカスし、改善策を見つけて中長期的な視点で具体的な行動計画を立てましょう。たとえば、学習意欲に課題がある場合、読書習慣をつけるように努力したり、動画サイトでビジネス情報を入手したりするように工夫します。
短所を改善するには、より具体的で確実にできる方法を採用します。日常生活のなかで「いつどこでどのくらいやるのか」を明確に決め、確実にできる時間を選択することをおすすめします。また、3日坊主になったとしても気にせず、次の策を考えて実行に移したほうが改善の糸口をつかめます。
ポジティブなアプローチをする
診断結果にもとづいて自己評価をおこなう際は、常にポジティブな姿勢を保つようにしましょう。自分の個性や特徴を肯定的に受け入れ、強みを最大限に活かす方法を見つけます。
合計ポイントが1~4であっても、なかには自信をもってチェックできる項目があると思います。診断といえばとかくポイントの数に着目しがちです。ただ、診断は次への指針を示すものであり、大切なのは「今後何をどうすればよいのか考える要素」を見つけることです。
傾聴の姿勢に自信をもっているのであれば、徹底的に顧客の話を聞く姿勢を強化します。得られる情報を分析して質問力へとつなげる努力をすれば、チェックポイント 3「顧客のニーズや課題を特定し、質問を通じて詳細に掘り下げられるか?」にYESと答えられる日が近づきます。
キャリアアドバイザーの活用
診断結果についてポジティブに受け止めることが難しい場合もあるかもしれません。しかし、そのような状況に直面した場合も適切な行動を取ることが重要です。
キャリアアドバイザーは、営業の向き不向き診断結果にもとづいて個人のニーズに合わせたアドバイスをしてくれます。長期的な目標や改善計画の策定、定期的なフィードバックと成長支援などを通じて、営業職における成功への具体的なステップを示唆してくれるでしょう。
また、診断結果によってメンタル的な負担が大きいと感じた場合は、カウンセラーや心理の専門家に相談することも大切です。話を聞いてもらう過程で、自身の悩みや課題が明確になる場合があります。
専門家に相談するのは勇気がいるかもしれませんが、誰かに話を聞いてもらうだけでも心が軽くなる可能性があります。診断結果にもとづいて「人に相談する」という行動を選択したのであれば、それが自己ケアの一環であり、前向きなステップであると考えましょう。
向き不向き診断結果は「出発点」と見る
営業の向き不向き診断は、自己評価やキャリアの方向性を明確にするのに役立つツールであり、営業職における成功に向けた指針となります。ただし、診断結果はあくまで参考情報であり、個人の成長や変化に対応するための「出発点」として受け止めましょう。
自分自身を単純に向いているか向いていないかで判断するのではなく、継続的な努力と学びのプロセスを通じ、て営業職における成功を築ける点を忘れないようにしてください。診断結果を活用しながら、常に成長し続ける姿勢こそ大切だと認識しましょう。
まとめ
営業の向き不向き診断は、自己評価やキャリアの方向性を明確にするのに役立つツールです。営業職における成功への道につなげるための指針といえます。
今回紹介した診断観点の把握や項目チェックによって、自身の特性や能力を客観的に把握できます。ただし、その数値にのみ注視してはいけません。内容を重視し、自身の今後における指針を適切に捉えるように努めましょう。
重要なのは「診断結果を今後、いかに活用できるか」にあります。自身がより良い方向に進むための行動をとってください。必要に応じて、人に相談するなどの行動力も重要な要素となります。
本記事の内容については適宜見直し、営業パーソンとしてより良い成長につながるよう活用しましょう。