営業マンのなかには「実はあまり話すのが得意ではない」「焦ってしまうと余計にうまくいかない」といった悩みをもつ方がいるかもしれません。
ただ、現在は営業スタイルも変化しており、以前よりも口下手な人が営業に向いている可能性が広がっています。そのなか、顧客との信頼関係を構築しつつ業績を向上させるには効果的なアプローチが必要です。
この記事では、口下手でもデキる営業マンになるためのアプローチやとくに注意したいポイントを紹介します。具体的にどのような視点、スタイルを大切にしていくべきかわかる記事となっています。ぜひ最後までお読みください。
「口下手は営業に不向き」は本当か?
口下手は営業に不向きではありません。むしろ、口下手な人は営業に向いているという考え方もあります。その理由は以下のとおりです。
- 口下手な人は自分の話よりも相手の話を聞く姿勢を保てます
- 口下手な人は無理に話さないでことで、顧客に安心感を与えます
- 口下手な人は顧客の気分や反応に合わせて話し方や態度を調整できます
このように、口下手な人は話すよりも聞くのが得意である場合が多いため、顧客のニーズや悩みをしっかりと把握できます。口下手な営業マンに対して「自分の思いを大切にしてくれそう」と顧客が安心する場合もあるでしょう。
さらに、口下手な人は周囲の状況を察知したり、相手の気持ちをくみ取ったりする傾向があります。顧客の様子を見ながら対応してくれるため、顧客のほうから「実は…」と話を持ちかけやすくなります。
現代は、市場や顧客のニーズが複雑かつ多様化しています。このため、営業マンは、顧客が本当に求めるものを読み取り、顧客に合わせた商品提案ができることが重要です。その過程で顧客との信頼関係を築き、長期的なファンをつくることが求められます。
押しが強く流ちょうに話を続けられる人ばかりが、デキる営業マンとはいえません。口下手であるほうが、今後のビジネスシーンで活躍できる機会を増やせる場合があります。
次の章では、従来型の伝統的な営業方法がどうかわっているのか、もう少し詳しく探っていきます。今の営業法との違いがわかれば、口下手な人が今後何を重視してスキルを磨いていけばよいか把握できます。
伝統的な営業のイメージが変化している
従来の営業法は商品やサービスを売ることが目的でした。商品やサービスをいかに多くの人に大量に販売できるか、それによって業績を上げられるため、営業マンは売り込みに必要なスキルを必死に習得しようとしました。
現在でも、商品やサービスを売るのが主要な目的です。ただ、「それだけ」では必ずしも売れないでしょう。価格に見合う質の良さ、消費し使ってみたくなる魅力があるか、などさまざまな要素が絡みます。
では、従来の営業法と今の営業法とでは何が違うのでしょうか。違いを考える際、以下の要素を確認する必要があります。
- 顧客のニーズや購買行動が多様化し、個別化されている
- 顧客がみずから情報を収集し、比較検討ができる
- オンライン化が進み、営業の場や方法が多様化している
従来の営業法では、一方的に商品やサービスの特徴やメリットを伝える傾向がありました。しかし、今は顧客の状況や課題に応じて、最適な解決法を提案する必要があります。
また、従来の営業法では売り手である企業が情報を提供する立場でしたが、現代では売り手よりも買い手が優位な状況が生まれています。顧客が自分で情報収集し、比較検討することが可能です。このため、売り手は顧客一人ひとりに合わせた商品やサービスを提案しなければならず、差別化や信頼性を高める努力が必要となります。
さらに従来の営業法では対面での訪問営業が中心でした。現代は訪問営業のほか、電話やメール、オンライン営業など、さまざまな手段を使って営業がおこなわれています。売り手は顧客の好みや状況に合わせて、効果的な営業手法を選ぶことが肝要です。
つまり現在の営業シーンは「複雑化、多様化、個別化」といった視点が必要であり、従来の価値観で営業をおこなっていては企業が生き残れません。時代に合わせて営業のアプローチを変えていく必要があるのです。「コミュニケーションがあればOK」あるいは「口下手はダメ」といった考え方はリスクとなります。
リスクを回避するには口下手であれ、コミュニケーションが得意であれ、顧客との信頼関係をいかにつくり上げるのかといった視点が必要です。押し売りや自慢といった、一方的あるいは上から見る姿勢ではなく、顧客に対する思いやりや人間性がにじみ出るようなアプローチが求められています。
口下手でもデキる営業マンになるためのアプローチ
ここでは、情報化によって変化している営業シーンで「口下手であってもデキる営業マン」になるためのアプローチを紹介します。具体的にどうすれば良いのか思い描きながら、ご確認ください。
まずは自分自身を受け入れる
口下手なことをコンプレックスに感じている人は多いかもしれません。しかし、口下手は決して欠点ではありません。自分が口下手であると自覚すると同時に、「口下手な人にも営業に向いている長所がある」と捉える姿勢が大切です。
実際に口下手な人は、自分からあまり話そうとしない点を指摘されることがありますが、違う視点で見れば相手の話に耳を傾ける長所があると理解できます。
自分の性格や特徴を否定せずに、まずは自分自身を受け入れ「人の話に耳を傾ける」といった強みを意識しましょう。自分に自信がなければ、顧客に対して自信を持って提案できません。自分の強みや弱みを客観的に分析し、強みを伸ばし、弱みを補う方法を考える姿勢が大切です。
営業トークに「聞く」「質問する」を入れる
前述のように、口下手な人は話すことよりも聞くことのほうが得意です。これは営業において非常に有効なスキルです。顧客の話をしっかりと聞くことで、ニーズや課題を把握できます。また、相手に信頼感や安心感を与えることができます。
ただ聞くだけではなく、適切な質問をすることも重要です。質問するのは相手の話に興味を持っていることを示します。適切に深掘りすれば、顧客の本音をしっかり把握できます。質問するときは、オープンエンドの質問(Yes/Noで答えられない質問)を使うと効果的です。たとえば、「どのように感じましたか?」「いつごろ購入を考えていますか?」などです。
顧客の目の前で沈黙することを恐れない
口下手な人は顧客との会話の中で沈黙が生じると、気まずく感じてしまう場合があるでしょう。しかし、沈黙は必ずしも悪いことではありません。沈黙は相手が話した内容を消化したり、自分の考えをまとめたりするために必要な時間です。
沈黙を恐れて無理に話そうとすると、話がまとまらなかったり、顧客の話を遮ったりすることになりかねません。沈黙するときは、相手の目を見てうなずいたり相槌を打ったりして、話に集中している気持ちを伝えましょう。また、自分から話す場合は顧客の話に対する感想や質問を述べることで、スムーズに会話につなげられます。
メールやチャットなどのテキストメッセージを活用する
先ほど、口下手な人は聞くことが得意と伝えました。同じように書くことも得意である傾向があります。そこで、メールやチャットなどのテキストメッセージを活用することがおすすめです。
テキストメッセージなら時間をかけて内容を考えたり、文章を推敲したりできます。また、口下手な人にとってはストレスが少ないコミュニケーション手段となり、営業スキルの向上につなげやすいと考えられます。
テキストメッセージを使うときは、以下のポイントに注意しましょう。
- 件名や挨拶、署名などの基本的なマナーを守る
- 目的や要件を明確に伝える
- 文章を簡潔にまとめる
- 誤字や誤解を招く表現を避ける
- 返信の期限や連絡先を明記する
また、相手からのチャットに対して迅速で丁寧な返信を心掛けたり、タイミングよくフォローするメールを送ったりすることで相手との信頼関係を構築しましょう。
自分の言葉で話す
口下手な人ほど自分の言葉で話すようにしましょう。
口下手な人は、営業トークをするときに、難しい言葉や正しい日本語を使おうとする場合がありますが、それは逆効果です。難しい言葉や正しい日本語を使おうとすると頭で考えることが多くなり、言葉が出てこなくなったり話がつまったりする可能性があります。
また、顧客にとっても、難しい言葉や正しい日本語は理解しにくく、親しみやすさを感じない場合もあります。
自分が普段使っている言葉や表現を使うことで、以下のようなメリットがあります。
- 言葉がスムーズに出てくる
- 話が自然にまとまる
- 相手にも分かりやすく伝わる
- あなたに親しみを感じやすくなる
ただし、自分の言葉で話すときは、専門的な言葉や略語は避け、丁寧な言葉遣いをするようにしましょう。相手の立場や目的に合わせることは重要なポイントです。
営業はコミュニケーションの技術ですが、それは必ずしも「話すこと」だけではありません。口下手な人は、話すことにこだわらずに「聞くこと」や「書くこと」にも力を入れ、顧客との信頼関係を築いていきましょう。
「デキる営業マン」の基本を忘れずに
以下に紹介する内容は、口下手な人、話すのが得意な人に関係なく心に留めておきたい内容です。ここで改めて営業の基本を確認し、デキる営業マンを目指して努力を続けましょう。
他者への気遣いと信頼構築
デキる営業マンとして、顧客だけでなく社内の人との関係も大切にしましょう。いつでもどこでも、誰に対しても相手の立場になって考え、そのニーズと真摯に向き合う姿勢は信頼を築く鍵となります。継続的な取り組みが、自然なふるまいにつながります。
また、顧客に対応する際は「単なる取引ではない」「一過性の関係に終わらせない」と認識し、持続可能なビジネスパートナーシップの構築が成功の鍵だということを念頭におきましょう。
一流の営業マンの心構え
自分のためではなく、相手のために何ができるかを考える姿勢が一流の営業マンに求められます。営業は地道でコツコツとした作業が不可欠です。
前述でもお伝えしたように、短期的な成功だけでなく長期的な関係性の構築が真の成功につながることを忘れないようにしましょう。使命感と奉仕の心が、営業マンを他者に好かれる存在にします。
口下手でもいい!しかし正しい欲は必要
正しい欲とは、周囲を押しのけて自分を上げていくことではありません。誰のために何をどう提供していくのがより良いのかを追求する姿勢です。目標をしっかり設定して、その実現に向けて真摯に取り組むことを心掛けましょう。以下に、目標設定の重要性と使命感や熱意の大切さについて紹介します。
目標設定は重要
営業の収入向上は目標の一部です。一流の営業マンは「お客様のために働くこと」を使命としています。具体的な目標を掲げつつも顧客への奉仕を忘れずに意識しましょう。その結果、相手から感謝され、おのずと商品やサービスの売上向上につながるのです。正しい目標設定と地道な取り組みが功を奏すれば、少しずつモチベーションを高めていけるでしょう。
使命感や熱意の重要性
営業は自分の仕事が顧客や社会に与える影響を理解し、使命感を持つことが不可欠です。他者のために働くことで、営業マンの成長が促されます。
強気な目標を掲げつつも、顧客のために仕事をすることを忘れてはなりません。個人の成功は自分を鍛え上げることであり、使命感が重要です。顧客の幸福を同時に追求すること、つまり「自分が提供した商品やサービスを通じて、人々に幸せのストーリーを届ける」と考える姿勢はデキる営業マンへの道につながります。
まとめ
「口下手は営業に不向き」という考えに反して、口下手な人こそ営業に適している可能性があります。伝統的な営業のイメージが変化し、商品やサービスだけでなく、自分自身を売る視点が大切です。信頼関係の構築が成功の鍵であり、顧客の利益を最大化する提案がポイントです。
口下手でもデキる営業マンになるためには営業トークの落とし穴を避け、顧客の話を大切にし、相手のニーズを理解することです。口下手な人の強みは、相手の気持ちを理解し適切な対応ができることにあります。
また、デキる営業マンになるためには、他者への気遣いと信頼構築が基本です。自己中心的な欲望ではなく、顧客のために働く使命感と熱意を大切にしてください。営業の本質を理解して目標を設定し、自身の成長と相手の幸福を同時に追求することで一流の営業マンを目指していきましょう。