「ニーズに応える」の奥にあるものとは?顧客ニーズをググっと深堀り

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企業が発展していくためには、顧客満足度を上げる必要があります。顧客の満足度を上げるには、まずはニーズをしっかり把握しなければなりません。顧客のニーズに合う商品やサービスを自社が提供すること、それが”ニーズに応える”という意味になります。

ニーズを把握したとしても「顧客の本音に近づいているか」「ニーズを満たす以上の要素を盛り込めるかどうか」など、常に顧客満足度を分析する姿勢が重要です。

とはいえ、なかなかニーズを把握しきれないのが現状でしょう。顧客のニーズの引き出し方に悩んでいる方もいると思います。

そこで今回は、顧客ニーズのニーズの意味を再確認するとともに、顧客のニーズに応えるために何をどうすればよいのか、分かりやすく解説します。

顧客ニーズのニーズとは?ウォンツとの違い

顧客ニーズのニーズとはNeeds、つまり顧客が「~したい」という思いを指します。似た言葉でウォンツ(Wants)があり、ウォンツの方が「~したい」の意に沿う感じがしますね。ただ、ビジネスでは両者を正しく使い分ける必要があります。

ニーズとウォンツの違いは、次のように説明できます。

  • ニーズ→例)スポーツを臨場感あふれる大画面で観たい
  • ウォンツ→例)最新の4K対応テレビを買いたい

ここから分かるのは、ニーズが本来の「目的」ということ。目的を達成するためにウォンツという「手段」が必要になるのです。

たとえば、家電店を訪れたお客様に「どちらの商品をお探しでしょうか」とたずねたとしましょう。お客様が「4Kテレビを買いたい」とウォンツで答えました。この場合、ウォンツからさらに踏み込んでお客様のニーズをとらえる必要があります。

ニーズの内容は「大画面のテレビを買いたい」「高画質で動画配信サービスで映画を観たい」「Blu-rayを使いたい」「好きなゲームを楽しみたい」などお客様によって異なるでしょう。店員が丁寧にニーズをとらえなければ、最適な商品を顧客に提案できません。

ニーズを掘り下げることで、”顧客自身が気づかない”潜在的なニーズを可視化できます。顕在的なニーズがお客様の自覚的欲求とすれば、潜在ニーズは他者の働きかけで導かれるお客様の本音といえます。

ニーズを表面的に捉えるのではなく、顧客の思いを徹底して深掘りする姿勢がビジネスを成功へ導けるのです。

「ニーズに応える」の本意

「ニーズに応える」とは、顧客さえ気づかない欲求(潜在ニーズ)を見えるようにすること、そして欲求を満たすために何をどうすればよいのか分かり、実際の行動に移せるようにする行動を指します。

つまり次のように、3つの段階を踏む必要があります。

  • ニーズを可視化する
  • ニーズを共有する
  • ニーズに合う提案をする

「ニーズを可視化する」とは、心の奥にあるものを引き出し見える形にすることで、「ニーズを共有する」とは、見えないものが顧客にとって納得のいくのものか確認することを表します。

3つめの「ニーズに合う提案をする」の段階で、ニーズに”応える”部分が入ります。顧客が本当に求めているものを探り、目的を達成するまでの手段を一緒に考える段階です。

つまり、ニーズを見えるようにしたり共有したりして顧客の欲求を明確にしたのち、実際の購入や利用につなげるまでのサポートまでが「ニーズに応える」行動といえます。

次章では、ニーズの可視化と共有までの道のりを解説します。

顧客ニーズを深掘りする方法5選

ここでは、顧客ニーズを深掘りする方法を5つ解説します。顧客とのやり取りの前にすべき内容も含みます。これらは、実際の営業活動に活かせる要素ですので、ぜひ確認してください。

Web情報を収集し分析する

Web情報やソーシャルネットワークが普及している現代では、ソーシャルリスニングと呼ばれる分析方法が注目されています。ソーシャルリスニングとは、Webメディア上のコメントを収集・分析し消費者の生の声やニーズなどを把握するマーケティング手法を指します。

ソーシャルメディアに投稿されるコメントのなかには、景品目的のものもあるかもしれません。ただ、内容を精査すれば自主的な投稿を拾い上げ、消費者の動向を探るのに適しています。

Web情報の収集や分析のデメリットは、投稿者の属性(年齢・性別・職業、居住地域など)を把握するのが難しい点です。ほかの情報収集ツールと合わせて、ハイブリッド式に分析するのをおすすめします。

顧客アンケートをおこなう

顧客のニーズを直接把握するには、アンケートも重要な方法となります。顧客の属性も把握しやすく、定期的なアンケートを実施すれば、より具体的なニーズや顧客動向などを測定できます

また、アンケートに協力してくれる顧客のなかには、もともと自社商品やサービスに関心をもち、さらに「よりよくしよう」と思って提言する顧客もいるでしょう。

しかし、アンケートを提示したり集計したりするのに時間がかかり、ほかにもプレゼント目的で答える顧客がいるため、真意が分かりにくい点がデメリットといえます。

インタビューをおこなう

個別あるいは複数名の顧客を集めて座談会的におこなうインタビューは、顧客の感想や希望を具体的に把握するのに適しています。その場で相手とコミュニケーションが取れるため、信ぴょう性の高いデータがとれます。

また顧客の言葉や反応から一歩掘り下げて質問できるため、顧客の記憶をより鮮明にできるでしょう。複数で行う座談会形式では、個人の本音を他者のフォローによって具体的にできるケースがあるため、顧客一人ひとりのニーズを把握できます。

ただ、潜在的なニーズを引き出すためのトーク力がなければ、インタビューをおこなっても成果を得られません。インタビュアーのトークや質問力が問われる方法といえます。

ほかに、自社商品やサービスが法人対象のものであれば、会社訪問で社員の行動を観察・質問するのも参考になります。社内の環境や働き方などから自社商品やサービスの貢献度を伺い知れるでしょう。

メリットは、顧客の言動から現商品の改善点や新商品の可能性を探れる点です。この場合、徹底した顧客目線で対象者の言動のどこをどう見るのか、高度な観察眼が必要となります。

顧客管理システムを活用する

膨大な顧客データを管理・分析するには、手間と時間がかかります。しかもデータは随時更新されていくため、従来のExcelだけを使った管理方法は変化に対応しきれないでしょう。

顧客情報の管理・分析に役立つツールとして導入が進んでいるのがCRM。CRMとはCustomer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)の略語で、顧客関係管理と訳せます。

顧客の購買活動や購入頻度、一人あたりの単価などを具体的に可視化したもので、顧客の志向や欲求などの把握だけでなく、営業における視点や課題を具体的に示唆してくれます。

ただ、導入には社内の理解と操作スキル、活用力などが併行して求められます。若い社員の多い職場では取り入れやすいシステムですが、高齢化が進む職場では「今更、面倒な操作を覚えるなんて…」と躊躇する社員もいるでしょう。

社内や部署内の研修や日常的なサポート体制を敷くなど、協働的に仕事がはかどるよう工夫する必要があります。

市場全体を細分化する(マーケットセグメンテーション)

セグメンテーションとは、自社がどの商品(サービス)でどの市場をねらっていくのか戦略を立てる際に、市場全体を細かく分類することを指します。具体的には、次の4つの尺度で、顧客の属性や志向などを分類します。

  • 人口統計的属性:年齢・性別・年収・家族・学歴・職業など
  • 地理的属性:国・地域・人口密度・地域産業・気候など
  • 心理的属性:性格・ライフスタイル・趣味など
  • 行動的属性:購買履歴・購買行動・購買頻度など

たとえば人口統計属性では、生活に密着した製品との連動、地理的属性は飲食・小売業・不動産などの業界で重要な尺度となります。

昨今は、IT化にともなう情報の増加やスピード化などに伴い、顧客の求めるものも日々変化しています。そのため、心理的属性や行動的属性が、以前にも増して重視される傾向にあります。

セグメンテーション分析により、顧客の細かな情報を把握して分割すれば、今まで見えなかったターゲット層や新たなニーズを見つけられるでしょう。

既存顧客に偏り過ぎることなく客観的な視点で分析できるため、新規顧客の開拓もめざせます。

顧客のニーズに応えるために必要な考え方

前章では、顧客のニーズに応えるために必要な方法について解説しました。本章では、紹介した方法を用いながら分析の精度を上げるための視点を紹介します。

まずお伝えしたいのは、自分で完璧だと思える情報把握や分析であっても「これがベスト!」というのは、ある意味ありえないことです。厳しい見方かもしれませんが、次の点を念頭に置いてニーズ把握に努めることで、顧客のニーズをググっと掘り下げられます。

・ニーズは常に変わり把握しきれない
・現在は、顧客ニーズの多様化が著しい
・ニーズを把握しても対応できないときもある

昨今のIT化によって、生活や顧客の志向が日々変わるようになりました。こうした社会においては、今のニーズが意味をなさない可能性もあります。

また、個別化や多様性が進む現代において、すべての人にヒットするような商品や永続的に使われるサービスを生み出すにも一苦労です。対応しきれない場合はあると認識しておいた方がいいでしょう。

では、顧客情報を多角的に収集・分析するのは意味がないのでしょうか。実はそうでもないことを次の章で解説します。

ニーズをとらえて顧客の満足度を上げるには

ニーズをとらえて顧客の満足度を上げるには、どうしたらいいのか…。なかなかつかみきれない顧客ニーズであり、たとえつかんだとしても実現させるのは簡単ではありません。この状況を打破し、顧客満足度を上げるためには、次の力が必要になります。

  • 顧客の見ている地点・見ているもの・範囲・深さなどを「観る力」
  • 顧客の潜在ニーズをさまざまな方向から「掘り下げる力」
  • なぜ・どうして?と「問う力」
  • 課題を解決するのに必要な「論理的思考力」
  • 顧客のニーズを探る「コミュニケーション力」
  • 顧客の言葉から本意に気づく「直観力」

このほかにも、たくさんの要素が絡んできます。まずは、これらの要素のうち、自分が何に強くて何に弱いのか把握しましょう。改善に向けて研修会に参加したり書籍を読んだりします。

また、どの要素にも共通する視点が「粘り強さ」です。顧客目線でとことん追求していく姿勢は、実は顧客頼りではなく、しっかり自分軸を確立している姿です。主体的に物事を捉えて解決の糸口を探る取り組みは、どのビジネスシーンでも必要でしょう。

「ニーズに応える」ためには、上記の要素が必要であるのと同時に、人間に対する興味や探求心、そして好奇心が大きな支えとなります。人間のもつ感覚、好奇心などを育てるには、ときに仕事から離れて家族や友人とリフレッシュしたり、個人的にもリラックスしたりする時間も大切です。

広く浅く、あるいは狭く深く…。自身の仕事や生活を自在にデザインしながら進むイメージです。経験が豊富であればあるほど、直観力が磨かれ自分なりのスタイルを構築できます。顧客ニーズをググっと引き出せるのも、やはり経験と努力は必要なのです。

まとめ

今回は、顧客のニーズに焦点をしぼって解説しました。ニーズはウォンツとは異なることを認識しつつ、潜在ニーズを引き出したり顧客と共有したりして「ニーズに応える」までの過程を大切にしましょう。

”すべてのニーズに応える”となれば、企業規模によっては、多様性や即時性において課題があるかもしれません。ただ、論理的思考力や洞察力を駆使して粘り強く分析するなかで「これだ!」と思うモノを見つけられます。事態を打開しようとする姿勢が大切なのです。

結局は、何かをしなければ生まれないのであり、直観力や論理的思考力なども、鍛えて磨かれるもの。顧客のニーズにググっと迫れるように、今回の記事を参考に情報・分析等の流れを実践していきましょう。

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