展示会コンセプトシート|迷路にハマる前に押さえたい5つのポイント

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展示会は、企業が見込み顧客を獲得して商談に進めるために必要な戦略の一つです。展示会を成功させれば、企業や商品(サービス)の知名度が上がり一気に業績向上につなげられるでしょう。

ただ、展示会を成功させるには事前準備が重要となります。事前準備のなかでとくに大切なのが今回紹介する「コンセプトシート」です。

コンセプトシートとは、展示会の目的をわかりやすくまとめた「企画書」を指します。展示会で顧客の心を確実につかむために重要な役割を果たし、コンセプトシートを作成しなければ迷路にハマってしまうでしょう。

そこで今回は、展示会を成功させるうえで必要なコンセプトシートの概要や作成方法について紹介します。また、コンセプトシートを作成過程や作成後に覚えておきたいポイントについても解説しますので、ぜひ最後までお読みください。

展示会コンセプトシートとは?

展示会を開催する場合は、コンセプトシートをしっかり作成する必要があります。まずは、展示会で重要な役割を担うコンセプトシートの「コンセプト」の意味について解説します。

「コンセプト」とは?

コンセプトとは、日本語では概念と訳されます。企業の目線でコンセプトとは、ある企画を貫く価値観や世界観を指します

コンセプトと似た言葉としてテーマがあります。テーマとはコンセプトの前提になるもので、映画のテーマといわれるように「主題」を指します。よってコンセプトは、テーマを”実現”するために必要な要素をまとめたものといえるでしょう。

登山にたとえると、山頂に目指すのが「テーマ」、山頂に到達するためのルートや準備物が「コンセプト」と考えられます。

展示会の規模や想定される顧客に応じて、テーマやコンセプトは微妙に変わるかもしれませんが、展示会の開催が決まったところで「コンセプト」は明確にしなければなりません。

コンセプトを設定する目的

コンセプトを設定するのは、展示会の開催時だけでなく事前準備や事後分析などでスタッフと共通理解を図りながら展示会の目的や結果を確認するためです。

事前準備における話し合いや会場設営の場面で判断に迷いが生じても、コンセプトが明確であれば常に立ち返られるため迷路にハマる可能性はありません。

逆にコンセプトが明確でなければ、話し合いや会場設営でスタッフとの意思の疎通ができず迷走してしまうでしょう。

展示会を開催する場合は、出展の際に「誰に何をどう伝えるのか」を明確にしたシートを用意した方が、展示会開催で迷路にハマらず、展示会を成功させやすくなるのです。

コンセプトシートの内容

コンセプトシートの内容は、展示会の企画者や企業、段階によって変わります。一概に「これがコンセプトシートです!」と示せないのですが、必要事項として下記の要素は盛り込みましょう

  • コンセプト(なぜ展示会を開催するのか、その目的)
  • ターゲット(来場者としてどのような顧客を見込んでいるのか)
  • 顧客ニーズ・訴求内容(顧客のニーズは?どのような悩みを解決できるのか)
  • 予算(どのくらいの予算が必要か)
  • スケジュール(展示会の準備から事後処理までの流れ)

これらを展示会に関わるスタッフに分かりやすく提示するのが理想です(なかには社内用と社外用として用意する企業もあるでしょう)。

スタッフ全員が、見通しをもって仕事をした方が効率的に準備&開催することができます。

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コンセプトやコンセプトシートの概要を把握すると、シートを作成するメリットも見えてきますね。コンセプトシートの作成ポイントの話に入る前に、次章でコンセプトシートのメリットを確認してみましょう。

展示会コンセプトシートを作るメリット

展示会のコンセプトシートを作成するのは、展示会の開催目的を明らかにし関係者と共通理解を図るためにあります。ここでは、具体的なメリットとして2点紹介します。

展示会を開催する目的を明確にできる

展示会のコンセプトシートを作成した場合、展示会を開催する目的や意図を明確にできます。その理由は、展示会に関する頭のなかのイメージを文章や図に可視化させられるためです。可視化によって、新たな気づきや足りない点が見えてきます。

展示会の責任者や企画担当者が自分のアイデアをアウトプットしなければ、気づきや改善点は見つかりません。具体的な形つまり文章や図などに起こして初めて、アイデアの良さや修正すべき点がわかるのです。

コンセプトシートを作らずに展示会の準備を漠然と進めてしまうと、途中で方向性がブレて目的を達成できない可能性があります。

関係者と情報を共有できる

コンセプトシートは、展示会に関わるスタッフと情報を共有する際に便利です。展示会のスタッフとは、たとえば会場設営の業者、プロモーション動画をつくる制作会社などを指します。

展示会で自社商品(サービス)の強みを紹介する際も、スタッフ全員が共通の認識に立って説明できれば来場者により印象づけられるでしょう。

逆にコンセプトシートで商品やサービスの「何をどのくらいどうやって伝えるのか」など、細かな点まで可視化していない場合、スタッフによって顧客に伝える内容が変わってしまいます。担当責任者とスタッフの認識にズレが生じやすく、会場設営から問題が起きるかもしれません。

これを回避するためには、だれが見てもわかりやすいコンセプトシートを作成する必要があります。共通の土台となるコンセプトシートがあることで、新たなアイデアをスタッフから得られる場面も考えられます。

展示会コンセプトシートの作成ポイント5つ

コンセプトシートの概要とメリットをしっかり確認できたところで、展示会コンセプトシートの作成ポイントを5つ紹介します。作成の際は、展示会の「コンセプト」を常に意識するようにしましょう。

展示会のコンセプトを明確にする

すでにお伝えしましたが、明確なコンセプトは展示会を成功させるための必須事項です。展示会の日程が決まって準備期間が限られている場合は、コンセプト作成に早速取りかかりましょう。

しかし、コンセプトを明確にしなければ、準備段階でスタッフとの意思疎通がしづらくなったり担当責任者が意図しない方向に流れてしまったりします。

コンセプトを決める場合は、展示会のテーマや目的を明確にし「誰に何をどのくらいどうやって伝えるのか」具体的に洗い出しましょう。そのうえで、いわばキャッチフレーズともいえるコンセプトを決めると広報活動にも役立ちます。

多くの人に支持されているダイソン(掃除機)は「吸引力の落ちないただ一つの掃除機」をコンセプトにしています。”掃除する時間のない人や面倒くさいと思っている”を対象に”簡単で手間をかけずに掃除できる”ことを前面に出してヒットしました。

たとえば展示会を開催するにあたって「誰に何をどのくらいどうやって伝えるのか」を念頭にすれば、次のように洗い出せます。

  • 誰に:掃除する時間のない人や面倒くさいと思っている人
  • 何を:ダイソン掃除機(機種まで細かく)
  • どのくらい&どうやって:実際に変化のわかる実演で示す

上記のように洗い出して概要が明確に見えてくれば、準備するものや流れなども具体的にわかります。

ターゲットとニーズを可視化する

コンセプトを明確にする過程で、ターゲットやニーズが明らかになってくるでしょう。とくに企業独自でおこなう展覧会では一押しの商品やサービスを中心に紹介するため、ある意味ターゲットやニーズを絞りやすいといえます。

ただ、展示会開催で積極的に見込み顧客を呼び込む場合は、ターゲットやニーズをより一層絞り込む必要があります。展示会の来場者で特にアプローチしたい人を選ぶのです。

たとえば日産の軽自動車ROOXのコンセプトは「先進技術で、家族をもっと楽しめる。」となっており、ターゲットが明確な事例の一つでしょう。また、企業コーポレートサイトでは、ニーズを意識して下記のように案内されています。

  • 安心のプロパイロット
  • 広く高く居心地のいい室内空間
  • 家族の距離を近づけてくれる機能性

車の展示会を開催するとして来場者に家族を想定するとすれば「30代4人家族…子どもは幼稚園から小学校低学年」といったところでしょう。このようにコンセプトやターゲット、ニーズを明確にしておけば、いつでもどこでもパパッとイメ―ジできます。

展示会を開催する場合も、自社が”これを売りたい”から開くといった視点はよくありません。まずは、顧客がどのような悩みを解決したがっているかを重視し、そのうえでニーズを満たす商品(サービス)を選んでいきましょう。

顧客ニーズを満たす商品・サービスを選ぶ

ターゲットとニーズを丁寧に洗い出し、明確にさせると展示会の来場者の詳細がわかります。来場者の「誰」が「何」を求めているかを基準に、展示会の商品(サービス)を選びます。

ターゲットが企業の経営者でニーズが「予算を抑えつつも会社の売上目標を達成したい」といったものであれば、価格と品質のバランスのよい商品(サービス)を選びます。

ターゲットが部門長でニーズが「生産性の向上」であれば、誰もが扱いやすく成果を期待しやすい商品(サービス)を提案します。

個人顧客であれば、年代や性別、家族構成などによって選ぶ商品(サービス)は変わってくるでしょう。この場合は、さらにターゲットやニーズを絞り込んだうえで商品(サービス)を選ぶ必要があります。

いずれにしても、企業目線でなく展示会に訪れる顧客の訴求内容を常に意識する姿勢が大切です。この姿勢があれば、「なぜこの商品(サービス)が案内されているのか」が一目でわかるコンセプトシートが作成できます。

裏付け情報やアピールポイントを整理する

出展する商品(サービス)が決まったところで、来場者の心を捉えるアピールポイントを考えます。

見込み顧客である来場者が、その商品(サービス)を購入することで「どのようなメリットがどのくらいあるのか」「類似する商品を比べて何に一番優れているのか」をまとめましょう。

来場者に「これであなたの悩みは解決しますよ」と伝えて「本当?」と返されたとき、即座にその質問に答えられなければなりません。悩みに対して具体的な数字で効果をしめせるかどうかもカギとなります。

展示会来場者に、商品(サービス)の強みを確実に伝えられる情報やアピールポイントを決めておけば、突然の質問にも的確に答えられます。

顧客が知りたい情報をわかりやすくまとめる

ターゲットが知りたい情報を、一目で伝えられるようにします。専門的な言葉だけで情報を伝えるより、一目で商品(サービス)の良さや価値がわかるように「見やすさや読みやすさ」を重視します。

前述でも一部紹介しましたが、次の点を意識してコンセプトシートにまとめましょう。

  • この商品を使うとどんなメリットがあるのか
  • 一番のおすすめポイントは何か
  • 他社の類似商品と何が違って何が優れているのか

この際「一押しポイント」や「他社との違い」について伝える場合、「すごい!」「ラクです!」「確実に伸ばせます!」などの決まり文句で提示しても顧客の心に刺さりにくいでしょう。

ターゲットに商品購入によるメリットを強く感じてもらうためには、数値や第三者の意見、口コミ情報などを入れる必要があります。

また、コンセプトや各メリットなどをキャッチコピー的に短く箇条書きにすると、コンセプトシートを見る人の心に印象づけられます。

展示会コンセプトシートを作成したら…

コンセプトシートを作成したのちに、2点確認しておきたい内容があります。

コンセプトシート作成後に再確認する

自分たちの考えている内容や予測が、意外に来場者の認識とはズレている可能性があります。ズレを発見して軌道修正できるよう、下記の3点を念頭におきましょう。

  • 本当にそのターゲットでよいのか?
  • 本当にそのメッセージでいいのか?
  • 本当にそのコミュニケーションでよいのか?

何度もやっていては進捗に遅れが生じますが、少しでも違和感を感じる場合は早めに立ち止まって確認しましょう。

つまり、顧客目線でコンセプトシートを徹底的に検討する姿勢が大切なのです。何度も自問しながら、ときに角度の違うところから見たり検証したりしてみると良いでしょう。

ブース展示や広告・接客方法に反映させる

本記事の最初にコンセプトシートの内容を紹介しました。ここで、再度確認しましょう。

  • コンセプト(なぜ展示会を開催するのか、その目的)
  • ターゲット(来場者としてどのような顧客を見込んでいるのか)
  • 顧客ニーズ・訴求内容(顧客のニーズは?どのような悩みを解決できるのか)
  • 予算(どのくらいの予算が必要か)
  • スケジュール(展示会の準備から事後処理までの流れ)

このほか、ブースの展示方法やチラシの作成、接客の仕方までを企画書に載せると、スタッフが全体を見通したり自分のやるべきことを確認したりするのに便利です。

出展に関わるスタッフの認識を統一させることで、展示会の準備段階から終了後まで適宜、確認・修正・改善ができます。

また、質の高いコンセプトシートであればシートを介してスタッフとの信頼関係を構築できます。

まとめ

展示会は多くのスタッフがかかわります。すべての人が同じ認識で目的を把握していることが展示会を成功させるカギとなります。

このためには事前準備としてコンセプトシートを丁寧に作成する必要があります。スタッフ全員が、展示会のコンセプトやターゲット、ニーズをしっかり把握して仕事をすれば、展示会の内容がよりよくなり実質的な成功へと導けます。

迷路にハマりそうになってもコンセプトシートがあれば羅針盤となります。違和感があれば即修正して立て直しを図れるため、やはりコンセプトシートづくりは大切です。

今回の記事を参考にして、誰もが一目でわかるコンセプトシートを作成し展示会を成功させましょう。


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