クロージングをかける前に知っておきたい心理学|顧客の心を掴むコツ

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クロージングとは、商談最終で顧客と契約をかわすこと、あるいは成約にいたるまでの過程を指します。

たとえ商談がスムーズに進んでいても、クロージングで顧客から断られるケースもあります。最終段階で成約へたどり着くには、営業マンの力量が大切なポイントです。

しかしクロージングは、ほかのプロセスと比較して重要性が高い分、理想とする形にもっていくのは難しいのが現実です。成約へつなげるには、顧客のニーズを満たしつつ成約を決断しうる心理的戦略が必要となります。

そこで今回は、クロージングの概要をしっかり把握し、商談の最終段階でどのような心理的アプローチをしていったらよいか解説します。実際の営業活動に活かせる視点がわかりますので、ぜひ最後までお読みください。

そもそもクロージングをかけるとは?

冒頭で挙げたようにクロージングは、営業活動の最終段階を意味します。営業プロセスのなかでは「成約のための商談」「実質的な契約成立」を指すといえるでしょう。

いざ契約書にサインしてもらう際、顧客のなかには「やっぱりもう少し考えます」「今回はやめておきます」といった反応を示す人もいます。ここで「そうですか…」と簡単に引き下がってしまっては、一向に業績を上げられません。

顧客に無理強いすることなく、顧客の購買意欲を”引き上げる”必要があります。ニーズを確認したり不安材料を取り上げて一緒に解決策を探したりするなど、事後にも満足感が続くようなサポートをおこなうのです。このサポートは、顧客の心理を分析したうえでおこなうのが効果的です。

次章では、クロージングで成約につなげるために必要な知識、とくに顧客心理に関する情報を紹介します。

顧客の心を掴むための知識

ここでは、営業プロセスの最終段階であるクロージングを成功させるために知っておきたい情報を3つにしぼって紹介します。顧客の購買意欲を引き上げるために必要な心理的知識として、下記の3点を挙げます。

  • 認知バイアス
  • 損失回避の法則
  • 社会的証明の原理

これらの特徴について次から順に解説します。

意思決定に影響「認知バイアス」

顧客が「この商品やサービスにしよう!」と決定する際は、ある見方が影響しています。見方とは「認知バイアス」と呼ばれるものです。

認知バイアスとは、認知心理学や社会心理学で使われる言葉で「物事を判断するときに、客観性や記憶に誤りが生じて非合理な行動をとってしまうこと」を指します。

認知バイアスは下記の内容が要因として挙げられます。

  • 個々の生活習慣
  • 人生経験
  • 固定観念
  • 思い込み
  • 心配や不安

これらは生活場面で働いている場合が多く、もちろん商談における意思決定の際も影響を与えます。営業プロセスで顧客に質問したり顧客の反応を分析したりすると、その人がどのような認知バイアスをもっているか確認できます。

たとえば、顧客が「本当にお得なの?」と質問したとすれば、背景に「損はしたくない」といった認知バイアスが働いているかもしれません。

顧客によって認知バイアスの内容や程度に違いはあっても、何かしらもっている可能性があると考え、顧客の内面を丁寧に探る必要があります。

顧客はリスクを回避したい

人は「得になること」よりも実は「損をしないこと」を優先する傾向にあります。これを損失回避の法則といいます。損をしない安堵感は、得になって感じる喜びの2倍以上ともいわれます。

前述の認知バイアスの箇所で紹介したように、顧客は「絶対損はしたくない」と思っており、損をしそうだと感じる場合は商談をうまく進められません。

また、たとえ顧客にとって得になりそうな話であっても「絶対お得?根拠は?怪しくない?」など疑問を抱いたり慎重になったりします。

損失回避の法則を理解する営業マンであれば、むやみやたらに「この商品(サービス)は一押しです!お客様にとって絶対お得ですよ!」とゴリ押ししません。たとえば、下記のように顧客に提案するでしょう。

  • 実は1点だけデメリットがあります。
  • 〇〇のリスクを回避するには▢▢の方法があります。
  • Aプランから始めて様子を見てからBプランに変更可能です。

このようにあえてデメリットやリスクを提示し、解決方法を提示することで顧客は安心感をもちます。また料金提示の際も複数のプランを提案することで、損失回避の法則から脱却できます。

顧客は社会的証明を求める

顧客が影響を受けやすい「社会的証明の原理」は、人がその他大勢の人の評価を信じやすいことを指します(ちなみに社会証明の原理がもたらす作用によって、さらに多勢が多勢を呼ぶ現象を「バンドワゴン効果」といいます)。

社会的証明の原理は、意外に多くの場面で見られます。たとえば「行列のできるラーメン店は絶対美味しいはず」「この電子レンジはレビュー評価が高いし多くの人が購入しているからきっと良品だ」のようなケースです。

社会的評価の原理にもとづく人は、自分で判断するよりも他人の評価で判断しやすい傾向にあります。

商談を進める際に「このお客様は商品の特徴を説明するよりも、商品販売数や口コミ情報などを伝えた方がいい」と判断した場合は、訴求に使う資料やトークに工夫を加えましょう。

クロージングをかける前に準備すべき心理戦略

前章のように顧客が抱きやすい心理を理解し、クロージングの前に「何をどのタイミングで提示するのがよいか」考えて商談を進める必要があります。

ここでは、クロージングの前に構築したい関係性や営業プロセスにおいて常に意識しておきたい心理戦略について解説します。

顧客ニーズを掘り起こす「聞き取り力」

顧客のニーズを明確に把握するには「聞き取り力」が重要なポイントになります。「聞き取り力」とは下記の内容を指します。

  • 必要な質問を積極的におこなう
  • 顧客の態度や表情を観察する
  • 顧客の言葉に反応する
  • 顧客の願いを理解して提案する

上記の4点を念頭に、クロージングの前に、顧客ニーズを徹底的に把握しておきましょう。商談のスタート時はざっくりとしたニーズ把握であっても、クロージング前は明確に理解しておく必要があります。

顧客ニーズをしっかり理解しておかねば、いざクロージングになったところで顧客との認識の差を知ることになり、場合によっては破談になりかねません。もちろん前章で紹介した、認知バイアスやリスク回避の心理などを分析しておくのも重要です。

顧客に安心感を与える「信頼構築」

顧客との商談を円滑に進めてクロージングまでつなげる過程では、やはり信頼関係が基本となります。まずは身だしなみや姿勢、所作、言葉遣いなどを丁寧かつ清潔感あふれる形に整えましょう

また信頼関係の構築方法としては、次の5点が挙げられます。

  • 信頼性の高い情報提供をする
  • 顧客の興味や願いを共有する
  • 良好なコミュニケーションを築く
  • 実績や事例などを提示する
  • 正直で透明性のある提案をする

情報提供については「情報そのものに信頼性があるか」「数値が提示されているか」「実績や満足度を具体的に伝えているか」などを考慮します。

また、通り一遍の説明や提案の仕方ではなく、営業マンの人となりが伝わる話し方をするのも重要です。自分の経験を話して顧客に親近感をもってもらう姿勢は信頼構築には欠かせません。

5つめの「正直で透明性のある提案」のなかには、保証や返品などに関わる情報やアフターフォローの点について明示することが含まれます。

顧客が商品やサービスを実際に購入したのちも、安心して利用できるようにバックアップする姿勢は忘れずにおきましょう。

顧客への「エンゲージメントテクニック」

「エンゲージメントテクニック」とは、顧客が自社商品やサービスに愛情や思い入れをもってもらうためのテクニックを指します。

接客する際は、下記の4点を念頭におきましょう。

  • 顧客の言葉に注意深く耳を傾ける
  • オープンエンド質問で顧客のニーズを掴む
  • 顧客の話に肯定的なフィードバックをおこなう
  • 顧客と自分の経験や知識を共有する

顧客と話をする際は、相手の言葉にしっかり注意を向ける必要があります。単にあいづちを打つのではなく、実になる質問をして顧客のニーズを明確にしましょう。また、自分の経験や知識を話して顧客の共感を得るのも重要なテクニックです。

こうしたテクニックを率先して活用して、顧客から親しみや信頼感を持ってもらえるように努めます。顧客との信頼関係がしっかり築ければクロージングの成功率を高められます。

クロージングをかける際の心理的アプローチ

前章では、クロージングに至るまえの戦略について解説しました。ここでは、クロージング時に活用したい心理的アプローチを紹介します。

まずはテストクロージング

テストクロージングとは、商談のなかで得られた顧客ニーズや要望をもとに、契約の意思を確認したり探ったりする手法を指します。

たとえば次のように顧客に確認してみましょう。

  • ご興味をもっていただけましたか?
  • お見積書にご納得いただけたでしょうか?
  • 商品の購入について何かご不明な点はございますか?

このように伝えて顧客がどのように反応するかを見て、自社商品やサービスに対する関心度を計ります。リアクション次第ではそのままクロージングに進められますが、顧客が悩んでいるようであれば、残る課題を解決しなければなりません。

いずれにしても、突然契約の話を持ち出す前に、テストクロージングは必ずおこなうようにしましょう。

はっきりと問いかける

契約する意欲を確認できた場合、本番のクロージングへ進みます。クロージングでは、契約の意思を明確に問いかけましょう。

あいまいな問いかけになった場合、顧客の意思確認がうやむやになり、場合によってはトラブルになる可能性があります。たとえば次のように問いかけてみましょう。

  • ご契約に関して、現時点ではどのようにお考えでしょうか?
  • 契約していただけるとしたら、いつごろになりそうでしょうか?

上記のように「現時点で」「いつ」といった言葉を使うと、はっきりとした問いかけになります。ただ、「何月何日まで」のように条件を狭めてしまうと、顧客は圧迫感を感じたり答えづらくなったりするでしょう。

条件提示については、ある程度の余白を残すようにするのがポイントです。

選択肢を提示する

クロージングとは、いってみれば顧客に「決断を迫る」ことです。営業マンの伝え方次第では、顧客に「強引さや不快感」を与えかねません。

顧客に圧力を感じさせないように、あるいは安心感をもって選ばせるには、自社商品の型や色、サービスプランなどに選択肢を提示すると効果的です。

つまり、商品を選ぶ主導権を最後の最後まで顧客に握ってもらうのです。顧客が迷っている場合は選択肢を提示して「AとBでは、どちらがお客様のご要望に近いでしょうか」と伝えてみましょう。

長期的な関係構築を視野に入れる

クロージングは営業プロセスの最終段階をお伝えしましたが、購入した後まで視野に入れてお客様と接する必要があります。

おそらく顧客のニーズを明確にして課題解決をしていく過程で、信頼関係は築かれています。ただ、契約後にパッタリ連絡がない、フォローがないといったことを顧客は恐れている場合があります。

顧客の不安を取り除き長期的に購入してもらうためには、最後の最後まで「顧客のニーズは本当に〇〇でいいのか?」といった自問をくり返しましょう。

たとえば、次のように顧客が思っている可能性があると考えてみるのです。

  • もっと安いものがないだろうか
  • もっと良質のものはないだろうか
  • この営業マンを本当に信じて大丈夫だろうか

この3点はクロージングに至るまでの過程でも重視したい姿勢ですが、クロージング時もかならず念頭においてください。

最後の最後まで顧客に寄り添う姿勢が、結局はその後も双方にメリットを生み出すのです

まとめ

今回は営業プロセスの最終段階であるクロージングの際に活用できる心理的なアプローチについてお伝えしました。

営業の場面で顧客との信頼関係を築き、商品やサービスの購入(利用)を確約してもらうには、顧客の心理に関する情報を理解しておく必要があります。

やみくもに、あるいは自分や会社目線で営業をおこなっても顧客の心を掴めません。また、売って終わりではなく長期的な目線に立ってアプローチする姿勢を保ちます。

今回紹介した「安心感を与える信頼関係」「ニーズを把握するための聞き取り力」など、場面における心理的アプローチを駆使して顧客の心理を掴み、成約率や業績の向上につなげていきましょう

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