お客様のニーズを引き出すトーク術&ニーズを顕在化させるポイント

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営業は対面・非対面関わらず、お客様に自社商品・サービスを紹介できたとしても、購入につなげるのは簡単ではありません。

購入につなげるには、お客様のニーズを的確に引き出すためのテクニックが必要です。お客様自身が気づいていないニーズを顕在化させれば、商品・サービスの購入に一歩近づけます。

ところで「ニーズ」とは何でしょうか。今回はまずニーズついて確かめましょう。続いてお客様からニーズを引き出すトーク術やポイントについて解説します。

そもそもニーズとは?潜在ニーズと顕在ニーズ

お客様がもつニーズには2種類あります。目に見えない潜在ニーズと自覚がある顕在ニーズです。それぞれ次のように整理できます。

・潜在ニーズ…本人が問題に気づいていない。自覚していない。だから解決しようとしない。
・顕在ニーズ…問題に気づいている。自覚している。なんとか解決しようとしている。

顕在ニーズはお客様が自覚しているため、進んで商品・サービスを探したり比較したりします。つまり実際の行動につながるニーズです。

しかし潜在ニーズはお客様自身が気づいていないため、購買活動に至りません。一番求めているかもしれない商品やサービスを手元に届けられない状況が生まれます。

つまり「本当は○○したい」という本音、潜在ニーズを掘り起こせば、新規の顧客を獲得できるだけでなく、新しい商品やサービスの開発につなげられるのです。次の章でもう少し詳しく解説します。

潜在ニーズを引き出す理由と効果

潜在ニーズを引き出す理由には「お客様によりよい生活を提供できる」「新規商品・サービスの開発のヒントが得られる」の2点があります。

例えば訪問営業で宅配弁当サービスの案内に回ったとします。毎日家族のために手料理をふるまう主婦層に「こちらの宅配は安くて評判です。自宅で温めるだけの簡単料理。いかがでしょうか」と勧めても「いらない」と断られます。

そのお客様の欲はどちらかといえば「自分で作りたい」というもの。ただ、本来のニーズはといえば?もしかしたら「たまにはラクをしたい」かもしれません。

この場合は「自分で作りたい」という欲を守りつつ「たまにはラクをしたい」ニーズを引き出せるかがポイントになります。つまりお客様自身が見えていない思いに気づき、そのニーズを満たすために商品・サービスが有効だと分かってもらうのです。

ですから「いらない」と言われたあとのアプローチの仕方が重要となります。トークで潜在ニーズを引き出せたのなら「たまにラクをしたいなら週1日だけでも弊社のサービスをご利用いただければ…」と話をつなげられます。

つまり潜在ニーズを引き出す理由は、お客様自身の心が満たされ豊かな生活を実現できるようサポートするためにあるのです。

もちろん自社にとっても新たなお客様の獲得ができ業績アップにつながります。またお客様の潜在ニーズを引き出すことで、新たな商品・サービスを思いつくかもしれません。お客様とのやりとりで自社にとって発展的な要素が見つかれば、営業の質としては上々といえるのではないでしょうか。

お客様の潜在ニーズを引き出すトーク術

ここでは実際に使われているトーク術をご紹介します。SPIN営業法と呼ばれるものです。

SPIN営業法は、 1988年ニール・ラッカム氏が提唱した営業法です。12年の調査と35,000件もの営業訪問に基づいて生まれたもので、今でも主にBtoB営業における顧客獲得のために使われています。

SPIN営業法とは「Situation(状況質問)」「Problem(問題質問)」「Implication(示唆質問)」「Need payoff(解決質問)」の頭文字をとった言葉で、営業でお客様の思いを深掘りする際の質問事項です。

つまり自社商品・サービスを直接的に勧める方法とは異なり、お客様への質問を中心に進める営業法といえます。BtoB営業において使われる手法ですが、もちろん個人宅訪問でも応用できます。

今回は先ほどの宅配弁当サービスを例にとって、SPIN営業法を使った質問の仕方を解説します。

Situation Questions(状況質問)   

状況質問とは、お客様の現状を確認するためのものです。これは営業者が把握するためでもあり、お客様自身の自覚を促す意味も含まれます。

例えば「自分で食事を作るから弁当はいらない」とお客様が答えたとします。その際「朝・昼・晩と3食とも作られていますか」「夕飯の準備にはどれくらいかかりますか」「お買い物はどうされていますか」などと質問します。

すべて現状に関する質問です。ここで注意点があります。これらの質問は自社商材に関する内容にしましょう。まったく異なる分野の質問をしても潜在ニーズを把握できないばかりか、お客様の貴重な時間を無駄にしてしまいます。

Problem Questions(問題質問)

問題質問とは、お客様の問題を確認ためのものです。お客様が抱いている課題は何か気づいてもらうためでもあります。

前述の状況質問に対するお客様の回答をもとに「もしかしたら○○に課題があるかもしれない」と仮説を立て質問事項を考えましょう。例えば「お客様が夕飯づくりに1時間かかる」「買い物は3日に1回車で20分のスーパーに買いに行く」とお客様が答えたとしましょう。

「毎日ご家族のために作られているんですね。食べたあとの片付けも大変ですよね。少し手抜きしてゆっくりしたいなと思うときはございますよね」と投げかけてみます。

この時点でお客様は、はっとさせられるかもしれません。お客様が「実は…」とつなげれば、あなたの問題質問は成功です。

Implication Questions(示唆質問)

示唆質問は、お客様自身に問題を認識してもらうのが目的です。「もし○○しなかったら」と仮定して「未改善のままだとよりよくならない」という視点も加えます。

前述の例ですと、既にお客様の気づきが生まれています。お客様が「実は、たまにはラクをしたいなあと思うこともあるのよね」と話したとします。そこで、次のように返してみましょう。

「そうですよね、充分ご家族のために尽くされていると思いますよ。ただ、毎日だとやはり疲れますよね。ラクしたいな…という思いを封印すると、何かの拍子にプツンと切れてしまうかもしれないですし…」

この場合は質問スタイルではありませんが、投げかけるという点でお客様に効果があります。お客様自身が気持ちに向き合うタイミングです。

SPIN営業を提唱したニール・ラッカム氏は「トップセールスは、普通の4倍ほど示唆質問を投げかける」としています。示唆質問で、お客様自身が問題解決の必要性を認識できるようにサポートしましょう。

Need-payoff Questions(解決質問)

解決質問とは「自社の商品・サービスがお役に立てますよ」と提案する意味も込められています。つまり”抱えている課題を解決できる糸口がある”とお客様に知ってもらうのです。

宅配弁当サービスに関して言えば次のようになります。

「もしも弊社のサービスをご利用いただけると”毎日作る”というルーティンから解放されます。1週間のうち1日だけでもラクができるっていいですよね」

このような感じです。お客様の顕在ニーズは「自分で作りたい」、そして潜在ニーズは「たまにはラクをしたい」でした。その両者を達成できる自社商品・サービスの存在にお客様は気づけたのです。

・・・・・

お客様の潜在的なニーズを引き出すにはSPIN営業法の視点は重要ですし役立ちます。ぜひ現場で活用してみましょう。

お客様の潜在ニーズを引き出す際の注意点

お客様の潜在ニーズを引き出すのに有効なSPIN営業法ですが、注意すべき点はあります。ここでは2点解説します。

事前調べを念入りに

SPIN営業法の「状況質問」をするためには、その場の雰囲気で適当に言葉を選ぶのはおすすめできません。お客様の情報・データを事前に調査・分析しておきましょう。

個人宅に関しては個人情報のすべてを入手するのは困難かもしれません。その場合、年代・家族構成・職業などの一般的な傾向をつかんでおきます。

行動や心理特性など若干専門的な情報についても加味し、例えば「30代パート勤めの女性」「子どもは小学生と保育園児」「Instagram愛用者」などとターゲットを絞り、考えられる状況や傾向を整理しておきましょう。

例えば「毎日保育園児の送り迎えと子どもづれの買い物は大変→スマホで簡単調理の検索も毎日は疲れる→子どもにも人気のお弁当宅配があれば週に1度は手抜きができるし自分の時間を持てる」などと自分なりに分析しておきます。予め質問事項をリストアップしておけば万全です。

事前調査をしておけば、いざというときの効率的な質問、スムーズな対応につながります。

自社製品の説明は最後であると心得る

自社商品・サービスの説明は最後に、と思っておきましょう。SPIN営業が滞りなく進めば、お客様の方から「あなたの会社でおすすめの商品やサービスはありますか」「ちょっと説明してもらっていいですか」と返されます。

逆にSPIN営業が思ったほどうまくいかない場合、途中で焦ってしまい唐突に「実は自社の商品・サービスがお客様のお悩みを解決できます」と紹介し始めてしまうかも…。

しかし、これはあまりお勧めできません。潜在ニーズを引き出しにくくなり、お客様に「やっぱり営業よね」と思われる可能性があります。

なんとか自社商品・サービスをおすすめし購入につなげたいところですが、この場面では営業よりもお客様の課題解決に集中しましょう。その方が結果に結びつく確率が高まります。

潜在ニーズを顕在化させるには共感と深堀り

潜在ニーズを前章のトーク術で顕在化させるには、話法だけ身につければいいという話ではありません。お気づきのように、質問内容やその方法は重要ですが、実はもっと大切な視点があります。

それは、お客様のすべてを受容し、その発言に共感をもって対応する姿勢です。営業では個人宅であれ法人であれ信頼関係づくりが第一となります。それを念頭におかない営業はお客様から避けられたり否定されたりするでしょう。ましてや営業トークを適当にあしらわれます。

ただ、受容と共感だけでも足りません。深掘りが必要です。「はい」と「そうですね」を繰り返してばかりでは時間だけ浪費し、何も得るものはないでしょう。うんうんと聞いているだけではお客様のニーズを探れません。

潜在ニーズはお客様さえ気づかない内面ですから、表面的な言葉だけを受容してもまったく意味がないのです。お伝えした例でいえば「自分で料理を作りたい」というプラス的な言葉さえ、その本音を探るくらいの姿勢で質問しましょう。

深掘りについてはSPIN営業法のほかに、WHYで質問する方法もあります。「美味しいコーヒーが飲みたい」といわれたら「そうですか、いいですね」で終わらず「なぜ」「どうして」とWHYを繰り返して質問するのです。

「なぜコーヒーなのですか」「今は巷でコーヒーチェーン店やカフェも数多くあるのにどうして…」といった具合につなげてみましょう。その回答に、お客様自身が気づかなかった欲や不満が見えてくるかもしれません。

実は美味しい”ノンカフェイン”を求めていたり、実はコーヒーでなくシュガーに不満があったり…。人の欲求やニーズは見えているほど単純なものでないことに気づくでしょう。市場が成熟化した今だからこそ、見えているものだけでなく掘り起こしが必要です。

共感と深掘りでお客様の新たなニーズを発見して、まるでお客様と同志のように自社の商品・サービス開発の基礎を築けたらうれしいですね。

出来過ぎた話かもしれませんが、たった一度の縁が幾重にも正のスパイラルを引き起こす…そういったイメージをもって営業を仕掛けていきましょう。

潜在ニーズの顕在化は未来につながる

お客様に自社商品・サービスを直接勧めるのではなく、お客様自身の気づきを導く営業トーク術を知っておくのは重要です。受容と共感をベースにしたお客様との信頼関係を基盤に、SPIN営業法や注意事項を念頭におきながらお客様のニーズを掘り起こしましょう。

それがお客様のためにもなりますし、自社の更なる発展につながります。互いの幸せや可能性につながるというのは気持ちが明るくなりますね。お客様とストーリーをつくるイメージで営業の質を上げていきましょう。

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