ニーズ喚起できてますか?悩みを引き出すコミュニケーション能力

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お客様のニーズを引き出すのは、営業で重要なポイントになります。自社商品やサービスがお客様の悩み解決につながるのであれば、商品やサービスを購入してもらえるためです。

しかし、簡単にいかないのが現状でしょう。会社内外の研修プログラムに参加し、営業スキルを磨く努力をしても、結果を出せなくて悩んでいる方はいます。

そこで今回は、お客様のニーズ喚起に必要なコミュニケーション能力を解説します。ここでいうコミュニケーションとは、お客様が潜在的な悩みに気づき、解決のためにどうしたらよいか考えるためのやり取りです。

コミュニケーション能力を磨くための5つのコツのほかに留意点についても説明します。ぜひ通してお読みください。

ニーズ喚起とは?

ここでは、ニーズの概略とともに、ニーズを喚起するとはどういう意味なのか解説します。

そもそもニーズとは?

ニーズを考える際、よく使われる理論に「ドリルの穴理論」があります。ドリルの穴理論とは、ドリルを購入する場合、本当に求めているのは「ドリル」本体ではなく、ドリルを使ってあける「穴」の方だ、という考え方です。

本当のニーズは「穴をあけること」といえます。そのために「ドリルがほしい(ウォンツ)」→「ドリルを買う」という行動をとるのです。

理想と現実のギャップを探る

先ほどのドリルの穴理論では「穴をあけること」がニーズであるとしました。言い換えれば理想の姿といえます。しかし現実は「簡単に穴をあけられない」状態です。

ニーズを達成するには、理想と現実のギャップを埋める必要があります。「ギャップを埋め、理想に近づくためには何が必要か」を考えれば「ドリルなら簡単に開けられる」→「ドリルがほしい」となります。

つまり、ギャップの様相を明らかにすれば、ギャップを解決するための手立ても明確になるのです。

ニーズを喚起する

ギャップの様相を明確にすることこそニーズ喚起につながります。たとえば、穴を開ける対象が紙や木あるいは金属なのか、穴の大きさはどのくらいなのかによって、理想と現実のギャップの程度が異なってきます。

ギャップが大きければ、解決に時間や労力がかかるでしょう。ただ、ニーズがより具体的になるともいえます。単に「穴をあけること」ではなく「金属に直径5ミリほどの穴をまっすぐきれいにあけたい」というニーズに変化するからです。

つまり、ニーズを喚起するとは、潜在ニーズから顕在ニーズにすることをさします。”顕在化”しているように見えるニーズを掘り下げ、より具体的にすることで、自覚していない本当の欲求が見えてくるのです。

ニーズ喚起の前に確認すべきこと

ニーズ喚起の前に確認すべきことがあります。ここでは「営業の目的を確認する」「理想と現実のギャップをうめるイメージをもつ」の2点について解説します。

1つめの「営業の目的を確認する」とは、営業の本質を見極めることです。営業は「自社商品やサービスの購入につなげる」「お客様の悩みを解決する」のが目的です。つまり自社とお客様の双方にメリットがなければいけません。

2つ目の「理想と現実をうめるイメージをもつ」とは、視覚的なイメージを持つという意味です。A41枚の上部に理想、下部に現実の姿をおきます。その間がギャップです。「理想と現実の距離はどのくらいか」「距離を縮めるために何が必要か」などをイメージします。

お客様とのコミュニケーションでも、理想と現実のイメージ図を念頭におきます。イメージを描けない営業パーソンの言葉は、お客様自身もイメージを描きづらくなります。せっかくの営業トークもお客様の心には届かないでしょう。

お客様とコミュニケーションをとる場合は、営業の目的を認識して、お客様の内面にある「理想と現実のギャップのイメージ図」を鮮明に描くようにしましょう。

悩みを引き出すコミュニケーション能力5選

ここまでの内容を大切に、営業におけるお客様とのコミュニケーションのポイントを5点解説します。今回は悩みを引き出すために必要なコミュニケーション能力です。

共感とアイスブレイク

まず、相手の現状を受容しほめることを重視します。お客様のすべてを肯定する姿勢は、共感モードを創り出すためです。

個人のお客様に健康食品の営業をする場面を想定してください。いきなり本題に入れば、お客様は拒否反応を示します。しかし、自社の健康食品を紹介する前に「お若いですね」と挨拶したとしたら、嫌な気持ちはしないはずです。

法人のお客様であれば「ほのぼのと明るい会社ですね」と伝えてみます。素直なひと言は、営業担当者の心をつかみ会話を和やかなものにするでしょう。

個人・法人問わず、もしも「いえいえ、そんなことはないですよ、疲れもいろいろ溜まっています…」と返されたら、その言葉から潜在ニーズが隠されていると認識できます。

また、雑談タイム(アイスブレイク)は、次に説明する信頼関係づくりに役立ちます。

信頼関係づくり 

挨拶、雑談、アイスブレイクは、本題とは異なる内容であっても、信頼関係づくりに欠かせません。お客様のニーズを見えるようにするには、お客様の心を開く必要があります。

心を開くには、お客様に安心感や共感を抱いてもらうのが鉄則です。お客様の発する言葉は、すべて肯定的に受け止めて「あ、なるほど」「そうですね」と返すようにします。いつでも傾聴・肯定姿勢で接してもらえると人は相手に好感をもちます。

それが重要です。信頼関係と好感は切り離せません。さらに「この人との会話は気持ちが明るくなる」と思ってもらえるようにします。それには、どのようなお客様であれ、相手に興味をもち好きになる必要があります。

言葉だけでなく、表情やしぐさ(笑顔を意識、目も優しく)にも気を配りましょう。

スムーズに本題へ

この時点で、だいぶお客様との関係性がよくなります。ただし、和やかで楽しい時間を過ごしているからといって「営業の目的」を忘れないようにしましょう。

信頼関係の構築、好感をもってもらえたら、スムーズに本題へと導きます。滑らかに無理なく進めるようにします。本題へ入っても傾聴姿勢は重要です。本題でいきなり弾丸トーク…では、一気にお客様の心が離れます。

健康食品の購入が目的でも、お客様のニーズと合わなければ購入につながりません。マッチさせるには、お客様の話に耳を傾け、理想と現実のギャップがどのような様相か把握します。

雑談や何気ない会話のなかでお客様が「でもね…」とつなげた言葉の意味を大切にします。その反応に潜在ニーズが隠されているからです。

「疲れがたまりやすい」「自分に何が合っているのか分からない」「サプリメントの添加物が心配」など、質問の仕方によっては、お客様はたくさんのヒントを与えてくれます。

傾聴とは、お客様の本当の声に耳を傾けることです。お客様自身が悩みの本質に気づき、解決すべき課題を自覚してもらえるような聞き方が営業トークの真髄といえます。

SPIN営業法で仮説を検証

お客様の話を丁寧に聴くと同時に、理想と現実のギャップの様相をイメージし直しましょう。イメージ図が、ある程度できたところで仮説を説明し、お客様と共に検証します。今回はSPIN営業を活用しながら解説します。

SPIN営業法とは、ニーズを喚起するために使われる質問法です。Situation(状況質問)ーProblem(問題質問)ー Implication(示唆質問)ーNeed pay-off(解決質問)の段階を踏みます。

Situation(状況質問)で、お客様と現状について確認します。たとえば「健康でいたいけれど、時間やモチベーションがなく継続できない」状況を共有します。すでに雑談やトークで得られた情報かもしれませんが再確認しましょう。

Problem(問題質問)で、ニーズを具体に描き出します。「健康食品で健康になりたい」というざっくりとしたニーズだったものが、あなたの質問次第で明確になります。

ここでは「疲れやすいというのはどういうときですか」「運動は好きでしょうか」「健康を考えてサプリを利用するにも成分が気になるのですね」「定期的に摂取できる方がいいですか」など質問を加えます。理想と現実のギャップを埋めるための質問です。

「運動の加減が分からず、それを考えるだけで疲れてしまう。だから成分が明確なビタミン剤を決まった時間にとり疲れにくい体にしたい」というニーズを顕在化させます。

Implication(示唆質問)では、問題質問で得られた顕在ニーズの解決に必要なこと(もの)につなげる質問です。とくに、実際の購入に立ちはだかる壁としては「価格」が挙げられます。価格が気になるなら、どこまでなら妥協できるか…その点に関する質問も有効です。

Need Pay-off(解決質問)では、理想の姿をイメージすることが重要になります。「価格を解決できるのか、近づけるとしたらどう解決するのか」、お客様とイメージするのです。できないことより解決できる素材を見つける段階と捉えます。

このようにSPIN営業を用いて、具体的なニーズ喚起と解決の糸口を描いていきます。想定した理想と現実のイメージ図をもとに、お客様と確認していくのです。

課題が解決できるかヒアリング

自社商品やサービスとお客様のニーズが本当に合っているか、課題は解決できるのかお客様と確認します。それがヒアリングです。

ここで重要なのは「絶対いいですよ!購入するしかないです!」と気負わないことです。お客様の心にある「ちょっとした不安」を打ち消すことになるからです。

共感や信頼関係が構築されていればいるほど、お客様は「ここで断るのは悪いなあ」と思ってしまうかもしれません。不安が置き去りであれば、お客様が本当に満足した買い物ができなくなります。

お客様の不安は「ちょっと…」「でも…」という言葉から読み取れます。そこでヒアリングが必要になるのです。ヒアリングは「必然性」「効用」「実現可能性」「緊急性」の4つの視点を重視します。

ここでは「効用」について解説します。営業の目的は、会社側と顧客側の双方にメリットをもたらすことです。商品やサービスの購買が双方に充足感を与えてこそ成功といえます。幸福感や満足感が100%に近ければ近いほど営業の目的の達成度も上がります。

コミュニケーションは、いかに双方の効用を重視しているかで変わってくるのです。最後の最後まで、お客様の心を読み解く、傾聴する姿勢を大切にしましょう。

ニーズ喚起の際に注意すべき点

前章で、ニーズ喚起に必要なコミュニケーションのポイントを解説しました。本章では改めて確認すべき点を3つ挙げます。

徹底した傾聴姿勢で行う

やはり「傾聴姿勢」は重要です。いつでもどこでも心がけましょう

自分目線に陥っている場合は、すぐさま相手目線に戻さねばなりません。「お客様の立場だったら自分はどうだろうか」「お客様が本当に購入後も喜んでもらえるだろうか」という姿勢が大切です。

場合によっては「やっぱり買わない」となる可能性もあります。しかし、そうであっても、お客様の本音を引き出すのです。

「ほしい」「買いたい」思いだけがニーズではありません。「いらない」というのもまた、ニーズなのです。そこから今後の営業や商品開発に活かせる視点が見える場合もあります。

いつでもどこでも最後まで、お客様の声に耳を傾けましょう。

予算に関する情報は後に伝える

挨拶や雑談のあとに「予算はどのくらいですか?」と初めに利く営業法もあります。営業パーソンの立場からすれば「せっかく説明したのに、最終段階で”予算がない”と言われた」となればがっかりするからです。

しかし、いきなり予算から始めてはお客様のニーズを引き出せません。予算を聞かれて「予算がない」となれが営業終了です。本来お客様が抱いているであろう潜在的な悩みや欲も聞き取れないまま終わってしまいます。

予算や決算者の話を初めに設定せず、ニーズを喚起したうえで伺うようにしましょう。

焦らない

ニーズ喚起までは、お客様の話を丁寧に聴きましょう。決して焦ってはなりません。ニーズというのは簡単に聴き出せるものではないためです。

「きれいになる」「体重が減る」あるいは「業務が改善される」「売り上げが向上する」などは、直接もたらされるメリットです。外的報酬ともいいます。

外的報酬を得た先のものが内的報酬です。内的報酬とは「達成感」「幸福感」「充足感」「喜び」など感情面でのプラス評価です。内的報酬が大きければ大きいほど、将来にわたってお客様との付き合いは続きます。

コミュニケーションのコツを使っても「結果を出せない」と焦る必要はありません。自分がイメージした仮説が間違っていてお客様との取引がやり直しになったとしても、です。

焦るよりも、新たなニーズの掘り起こしに成功したと考え、次につなげる方が生産的です。地道に取り組むことで内的報酬を得られるお客様を一人でも増やしましょう。それが、相乗効果となり自分と会社の成長につながっていくのです。

まとめ

お客様自身がニーズに気づき、自ら「どうにかしたい、してみよう」と思ってもらえるようなコミュニケーション能力について解説しました。潜在的なニーズを顕在化させるには、戦略的なコミュニケーションが必要です。

しかし、焦りは禁物です。本来の目的から離れ、お客様の本音とはまったく異なる方向に話が進むリスクがあります。「営業の本質はお客様の本音を引き出すことにある」とする姿勢が重要です。

商品やサービスがお客様の悩みをどのように解決できるのか、そのイメージをお客様自身がもてるようなコミュニケーションを目指しましょう。

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